代休や振替休日とは違って、代替休暇という制度があるのはご存知でしょうか。

混同されがちですが、代替休暇は、代休とはまったく異なる制度です。

代替休暇の略称を代休と呼ぶ訳でもありません。

この記事では、代替休暇とはどのような制度なのか、代替休暇の導入の流れなどを分かりやすく解説します。

代替休暇とは

1ヶ月あたりの残業時間が一定を超えると、発生する割増賃金。代替休暇とは、その割増賃金を給料で支払う代わりに、有給休暇で与えることができる制度です。

代替休暇を理解するには、まずは法定時間外労働を理解しなければなりません。

通常の定時制の勤務であれば、「1日8時間以上・週40時間以上」(法定時間)を超える勤務をすると、法定時間外労働となり残業手当が支払われます。

さらに、法定時間外労働が月に60時間超えると、残業手当が1時間あたりの基礎賃金の1.25倍から1.5倍となり、さらに増額します。

この時に1.25倍から1.5倍まで残業手当が増額した分を、支払わない代わりに休暇を与える制度が代替休暇です。

代替休暇の定義と読み方

代替休暇は「だいたいきゅうか」と読みます。

代替休暇は、月に60時間以上の残業した人に対して、50%以上の割増賃金の支払いの代わりに与えられる有給休暇です。そのため長時間残業することがない人にとっては、あまり馴染みがない制度かもしれません。

しかし一部の業種や、人手不足で業務が回らない企業では社員に対して長時間の残業をしてもらわなければならない場合もあるでしょう。

割増賃金の代わりに有給休暇を与えることで、労働者の健康維持につながり、会社にとっては残業代を抑制することにつながります。

代替休暇が与えられる日数(時間)は、単純に残業時間60時間を超えた分の時間が休暇になるわけではなく、少し複雑な計算をして、その結果算出された時間だけ代替休暇として与えられます。

時間外労働のルールをおさらい

代替休暇は法定時間外労働を月に60時間以上して、残業手当が1.25倍から1.5倍になるところ、1.5倍にせず1.25倍のままの残業手当を受け取る代わりに、有給の休暇が取得できる制度です。

したがって代替休暇を理解するには、まずは時間外労働のルールを理解しておかなくてはなりません。

36協定の締結

社員が法定時間外労働をするためには、労働基準法の36協定を結んでおかなくてはなりません。

36協定を締結すると時間外労働や、法定休日の出勤をできるようになります。

使用者は、労働者に「週40時間・1日8時間」(法定労働時間)を超えて、労働させることは、原則としてできません。しかし、36協定を締結していれば、時間外労働が認められます。

25%以上の割増賃金の支払いが必要

「週40時間・1日8時間」(法定労働時間)以上の労働時間となった場合、超えた時間分の給料は通常の25%の割増賃金を払わなくてはなりません。

さらに週に1度ある法定休日の日に出勤した場合も、25%の割増賃金を支払う必要があります。

ただし、変形労働制やフレックスタイム制など、労働時間が定まっていない働き方の場合などは週に40時間以上の労働時間になったとしても、ただちに法定時間外労働になるとは限りません。

月60時間を超えたら割増率50%

1週間に40時間以上の労働時間となれば、法定時間外労働となった時間帯は通常の賃金より25%の割増賃金を支払います。法定時間外労働が月に60時間を超えたら割増率は50%となります。

50%の割増率に加え、深夜労働や休日出勤なども重なると、それぞれ25%ずつ加算されていき、全て揃うとその時間帯の給料は普段の2倍となります。

2023年4月に中小企業にも適用

通常の時間外労働は割増率25%ですが、1ヶ月に60時間を超えると超過分は50%以上の割増賃金の支払いが必要になります。このルールは、2021年6月時点では大企業のみに適用。

中小企業は50%の割増率は免除されていましたが、2023年4月から適用され、大企業と同様に50%の支払いが必要になります。

※参考:厚生労働省|割増賃金の基礎となる賃金

給与明細

代替休暇と代休の違い

代替休暇と代休は、全く異なる制度による休暇の日です。代替休暇の略称が代休ではありません。言葉は似ていますが、制度内容は混合しないように、その違いはしっかりと理解しておきましょう。

代休とは

代休とは休日出勤をした日に代わって、違う日を休みにする制度です。

つまり代休を取得した時点で、社員は休日出勤の手当てが支払われることになります。

代休は有給休暇ではないので、代休を取得しなかったとしても取得したとしても、給料の総額は変わりません。

一方で、事前に調整して、もともと法定休日だった日を出勤にして、別の日を休みにする制度で振替休日という制度があります。

振替休日に休日手当は発生しませんが、事前に決めておかなければならず、休日出勤した後にその日を振替休日として扱うことはできません。

休日出勤した翌日が代休による休みなのか振替休日による休みなのかは、給料明細に休日手当が入っているかどうかで確認できます。

しかし、社員の実感としては給料が振り込まれるまで違いがよく分からないので、社員は休日出勤した日がある月は特に念入りに給料明細を確認しましょう。

代替休暇の計算方法

代替休暇は無給ではなく有給の休暇です。無給の休暇であれば、社員にとっては素直に1.5倍の賃金を受け取った方が良いわけですから有給なのは当然だと言えるでしょう。

しかし、単純に残業した時間をそのまま有給休暇として休めるわけではなく、公式に基づいて計算をする必要があります。

代替休暇が取得出来る時間を計算する公式は以下のとおりです。

  • (1ヵ月の時間外労働時間数-60時間)×換算率

(1ヵ月の時間外労働時間数-60時間)とは、1ヶ月のうち60時間を超えた分の残業時間のことです。

それでは1.5倍の残業代を払う場合と代替休暇を取得する場合では、どのくらい賃金に違いがあるのでしょうか。具体例もあげて紹介します。

換算率とは

換算率とは、正確にいうと代替休暇を取得しなかった場合、支払うこととされている割増賃金率から、代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率を引いたものです。

具体的には以下のような数式になります。

  • 代替休暇を取得しなかった場合の割増賃金率(50%以上)-代替休暇を取得した場合の割増賃金率(25%以上)

法律上の最低限度でやっていると、換算率は0.25になるので、ほとんどの場合、換算率は0.25となるしょう。

具体例

時給1000円と仮定して計算すると、代替休暇を取得する場合と、1.5倍の給料を受け取る場合の違いがわかりやすいです。

通常の残業手当は1.25倍ですので、時給1000円の人が1ヶ月の中で時間外労働を10時間すると、通常の月給に2500円追加されることになります。

時給1000円の人が60時間の時間外労働をすると、15,000円になり、70時間の時間外労働をすると17,500円になりますが、70時間のうち10時間分は1.5倍にしなければなりません。

したがってさらに2500円が加わり、20,000円になり、会社にとっては2500円が60時間の残業時間を超えたことによって、新たに支払わなくてはならない金額になります。

このケースの場合で、上記の公式に当てはめると10×0.25で取得できる代替休暇は2.5時間です。

しかし、代替休暇が取得出来る単位が半日か1日なので、1日分の代替休暇を取得するにはおよそ30時間分、60時間の時間外労働時間を超えなければなりません。

時給1000円の例でいうと、30時間分の代替休暇だと、会社にとっては7500円の残業手当を免除出来ることになりますが、7.5時間分の有給休暇を与えなければなりません。

その結果、会社にとっては代替休暇を与えても、1.5倍の残業代を支払っても人件費に変化は無いことが分かります。

このように半日か1日分の代替休暇を取得するには、かなり長時間の残業をする必要があり、現実的ではありません。

そのため、通常の有給と組み合わせたり、休日の一部の時間だけを有給にしたりして代替休暇を取得するのが現実的です。

チェック

代替休暇制度を導入するには

代替休暇制度を導入するには、具体的に何を準備すれば良いのでしょうか。

また、どのようなことを事前に決めておいて就業規則へ記載しなければならないのでしょうか。

労使協定の締結

代替休暇制度を導入するには、まず労使協定を締結しなければなりません。

そもそも法定時間外労働する際に36協定の締結をしなければならないので、36協定の締結とは別にまた労使協定を締結する必要があります。

ただし代替休暇制度を導入するにあたって、締結した労使協定は労働基準監督所に届出をする義務はありません。

決めておくべき内容

代替休暇制度を導入するにあたり、労使協定で決めなければならない内容は、主に3つです。

代替休暇の単位、代替休暇を与えることのできる時間、代替休暇として与えることができる時間の算出方法です。

「代替休暇の単位」は1日か半日でなければなりません。

ただし、計算方法により代替休暇として与えられる時間数が半日にも満たない場合、通常の年次有給休暇と併用して代替休暇を与えることができます。

「代替休暇を与えることができる時間」は、法定労働時間が1ヶ月あたり60時間を超えた月の末日の翌日から1ヶ月以内にすることは、労働基準法で定められています。

そのため1ヶ月を超えた先に誰か休暇を与えることができず、労使協定で決める際は1ヶ月以内としなければなりません。

「代替休暇として与えることのできる時間の算定方法」は、(1ヵ月の時間外労働時間数-60時間)×換算率であり、この換算率だけ企業独自に決める必要がありますが、最低でも0.25です。

就業規則への記載

代替休暇制度に関するルールを決めたら、就業規則へ記載しなければなりません。

労働基準法により休暇に関しての内容は、必ず就業規則に記載しなければならないので、代替休暇制度も例外ではありません。

大企業の導入状況

代替休暇割合

厚生労働省による平成25年就労条件総合調査によると、代替休暇の制度を導入している企業は全体のおよそ4分の1にあたる27.4%です。

従業員の人数が1000人以上の大企業だと14.1%です。従業員の数が多くなるに従い、導入している企業は少なくなります。

導入率が低調にとどまっているのは、運用や管理の難しさなどがあるからかもしれません。

※参考:厚生労働省『平成25年就労条件総合調査』

まとめ

この記事では、代替休暇制度について紹介しました。

具体例の項目でも述べたように、代替休暇を与えることと、1.5倍の割増賃金を支払うことを比較すると、企業の金銭的負担に変わりはありません。

ただし、従業員にとっては休む時間が増えるので、健康管理の面ではありがたく思う人も多いことでしょう。

代替休暇度を導入しなければならないくらい社員に残業をさせないのが1番良いのですが、どうしても人手不足で一人ひとりの社員の負担が多い企業は、代替休暇制度の導入も検討してみてはいかがでしょうか。