会社に遅刻するということは厳密に言うと、雇用契約の際に交わした所定労働時間に違反するという事になります。

しかし、会社としてはなるべく注意して嫌な感情をもたれる事なく、改善してもらえれば一番良いのですが、そのような方法はあるのでしょうか。

この記事では会社の遅刻について詳しく解説し、どのような対処方法があるのかを徹底解説します。

会社の遅刻とは

会社の遅刻とは雇用契約の際に指定された所定労働時間の時間に遅れて出勤するということになります。労働基準法ではノーワーク・ノーペイの原則があり、会社側は遅れた分の賃金を支払う必要がありません。

また、あまりにも本人の不注意による遅刻の数がひどいと就業規則に基いて、懲戒処分をすることが出来ます。

しかしこの懲戒処分は法律の範囲内でのみ認められており、減給は出来るものの罰金は出来ません。

労働基準法の第91条では、減給については

「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」

とされています。

比較的多い遅刻の理由

遅刻をするには様々な理由が想定されます。そこで人事が対処する社員のん遅刻理由について

ご紹介致します。

寝坊や体調不良(腹痛など)の場合

寝坊や体調不良の遅刻は本人の責任があるかどうかは微妙なところです。

一昔前までは、風邪を引いていて熱があるのに無理して仕事をするのが社会人として当然だという雰囲気がありましたが、今はこのような会社は時代遅れな会社です。

インフルエンザやコロナだと、本人は薬と精神力でなんとか働けていても、周りにうつしてしまうことになります。

コロナウイルスの流行で、世の中は特に周りの人のちょっとした体調不良に敏感になってしまいました。

そのため、現在ではほとんどの会社がちょっとでも体調が悪ければ出勤するとむしろ迷惑だという雰囲気に変わっています。

会社としては体調不良だと言われると、休ませるしかありませんし、無理して出勤させると会社中にウイルスが感染してしまいさらなる大きな問題に発展しかねません。

寝坊に関してはほとんどの場合は本人の責任ですが、寝坊してしまうような無理な労働をさせていた場合は会社にも問題があるでしょう。

また、睡眠時無呼吸症候群や鬱と言った病気の可能性もあり、中には親の介護や子育てが大変だという場合もあります。

介護や小さい子供の子育てであれば、介護休暇や育児休暇を取る事も出来るので、休暇をおすすめしても良いかもしれません。

介護休暇や育児休暇は雇用保険から手当が出るので、有給休暇と違って会社の金銭的負担はありません。

あまりにも遅刻が続くようでしたら、病気や家庭の事情の可能性も含めて面談をしてみましょう。

電車・バスなどの公的交通機関が遅延した場合

電車・バスなどの公的交通機関の遅延は、どうしようもない遅刻でしょう。

海外では日本ほど分単位で正確に電車が来ることは無いため、時間に対して日本ほどきっちりはしておらず、公共交通機関の時間の正確さが、日本社会の基礎と言っても過言ではありません。

普段から遅れる事を想定して、早めに出勤する事を命ずる事も出来ませんし、普段正確に来るはずの電車が来なかったということは、社員には非が無い遅刻でしょう。

大都市の場合、大雪の日などに早めに出勤しても間に合わないという事もあります。

遅延証明書をもらう事も出来ますが、大きな遅延の場合はネットニュースで流れてきたり、Twitterのトレンドに上がったりするので会社も把握出来ます。

逆に遅れていないのに電車・バスなどの公的交通機関の遅れを理由にした場合は調べたら分かってしま

うので、遅刻の理由は正直に申告しましょう。

マイカー通勤などの交通渋滞で遅刻した場合

マイカー通勤者の交通渋滞での遅刻に、本人の責任があるのかどうかは微妙なところです。

事故などで交通渋滞になる場合もありますが、電車の遅延と違って、交通事故は死亡事故であってもあまり報道されないことが多いです。

出来たら現場の写真を撮っておいたり、Twitterで事故が発生した事を伝えるツイートなどをスクリーンショットで保存しておいて証拠として見せられるようにしておきましょう。

事故以外の交通渋滞の遅刻はなかなかしょうがないことだと思われるような理由はなく、正直にありのままを話すしかありません。

毎朝通勤ラッシュは必ず発生するので、大都市に住んでいればマイカー通勤は避けて公共の交通機関を利用する方が無難です。

社会人として遅刻した時の会社への連絡はどうする?

遅刻するのが確定した時、なるべく早い段階で連絡するのが無難です。

例えば通勤時間が1時間で出社時間の40分前に目が覚めてしまった時は、もうその時点で遅刻は確定なので直ちに連絡しましょう。

通勤時間1時間で出社時間の1時間前に目が覚めてしまった時は、急げば間に合うかもしれません。

しかし、その場合も電話しておくことが重要です。

身なりを整えずに慌てて出勤して、間に合えば良いのですが、間に合わなかったら遅刻したうえに準備不足にもなり最悪の状況となってしまいます。

遅刻する時はせめて身なりを整えて、仕事の準備をしっかりした後に出勤しておいた方が印象は良いです。

遅刻することが分かった時点で会社へ連絡

出社時間を過ぎたあとに連絡するのではなく、出来るだけ出社時間の前に連絡しておくことが重要です。

上司としては一人社員が減ることによる対応が出来ます。

時間通りに来る前提だったのに来ないという時と比べると、迷惑のかかり方が全然違います。

会社としてはその日のその時間にいる人数でする業務を予定しているわけで、その予定が崩れてしまいます。

急げばギリギリ間に合いそうな時間だと、連絡をする時間も惜しいと思いますが、一応遅刻する事を伝えておきましょう。

自分が行けると思っているよりやや遅めの時間を言う

遅刻をするという連絡をすると大体の場合、どれくらいで来れそうかと聞かれます。

その場合、遅刻して焦っていて申し訳ないという気持ちもあるので、出来るだけ早い時間を言ってしまいがちです。

しかし、そこはあえて少し遅い時間を言うようにしましょう。

例えば30分遅刻しますと言った人が15分で到着するのと45分で到着するのとだとどちらが印象が良いでしょうか。

30分で来れると言いつつ15分で到着すると「意外と早く来たな」と遅刻したのに印象が良くなります。

しかし5分遅刻すると言いつつ15分で到着すると「5分で来れると言っていたのに遅すぎる」と言う風に、同じ時間だけ遅刻したのに印象がだいぶ変わってしまうのです。

このことは会社の遅刻だけではなく、プライベートの遅刻でも有効な方法です。

給与や賞与へはどれくらい影響する?

遅刻を繰り返すことで給与や賞与にはどのくらい影響するのでしょうか。

基本的にはまずは就業規則に何回以上遅刻したら懲罰を与える、というような事を書く必要があります。

戒告、譴責、減給、出勤停止が遅刻の懲罰としては一般的で、遅刻だけが原因で懲戒解雇までもしている企業はあまりありませんん。

簡単にこれらの言葉の意味を説明すると、戒告は口頭による注意のことで、厳重注意という言い方をする事もあります。

譴責は始末書や反省文などを提出させるもので、反省の意思を何らかの形で示すというものです。

出勤停止はいわゆる自宅謹慎というもので、この間給料は支払われません。

この中で給与や賞与に影響があるのは、減給という処分で、懲罰を与える事も出来れば、査定により給料を下げるという事も可能です。

給与への影響

労働基準法ではノーワーク・ノーペイの原則があり、会社側は遅れた分の賃金を支払う必要がありませ

ん。

したがって1ヶ月の中でトータルで1時間遅刻してしまえば1時間分の給与は差し引くことが出来ますが、これは懲戒処分ではなく、普通にノーワーク・ノーペイの原則によるものです。

懲罰による減給は就業規則に記載していればすることは出来ますが、限度が労働基準法により定められています。

労働基準法の第91条では、減給については「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とされており、これ以上の減給は出来ません。

賞与への影響

賞与についてですが、まず賞与を支払うことは会社の義務ではありません。

実際業績が悪化した会社や、基本給が高い外資系企業などには賞与はありません。

したがって結論を言えば、会社としては懲戒処分として賞与をカットする事も大幅減額させる事も可能ではあります。

しかし、労働基準法においては給与も賞与も同等に扱わなければならず、91条における上限は賞与にも適用されます。

つまり懲戒処分という事を理由に賞与を丸々カットという事は出来ません。

適用されるという一方で、賞与の額は会社の裁量によって自由に決めることが出来て、予定されていた額を支給する給与とは異なるという行政通達もあります。

したがって、会社としては懲戒処分ではなく、遅刻が多い事を査定に反映して賞与をカットする事が可能というわけです。

しかしあまりにも厳しくすると、社員の会社に対しての不信感にも繋がり、人材が離れてしまうというリスクもあります。

したがってよっぽど何度も遅刻を繰り返す社員に対してのみ、賞与のカットや減額をした方が良いでしょう。

フレックスタイム制や裁量労働制の遅刻の扱い

フレックスタイム制と裁量労働制はどちらも、勤務時間が一定ではないという働き方です。

フレックスタイム制ではそもそも勤務時間が自由な働き方なので、遅刻という概念はありませんが、必ず出勤しなければならないコアタイムという時間帯があります。

コアタイムに遅れてくるようだと、フレックスタイム制でも遅刻となります。

一方で裁量労働制という制度は、簡潔にいうと決められた仕事を終わらせたらその日は終わりという働き方です。

そのため始業時間は自由という会社もありますが、始業時間が決まっている会社もあります。

なぜ裁量労働制なのに始業時間が決まっているかというと、裁量労働制であっても22時以降に働くと残業手当は出ないものの、深夜手当が出るからです。

そのため完全に働く時間を自由にして、22時から働き始めると、常に深夜手当がついてしまうという状況になってしまいます。

始業時間が決まっている場合は裁量労働制でも遅刻となりますが、通常の働き方と比べると、その日にやるべき事はやるので会社にかかる迷惑は少ないと言えます。

裁量労働制ではノーワーク・ノーペイの原則は適用されず、1時間遅刻したからと言ってもやるべき事をしっかりやっていれば減額は出来ません。

しかし、査定に響かせるということは出来るので、査定により昇給無しということになったり、減給ということになるというのが事実上の罰則となります。

遅刻が多いバイトや社員に対する上司や人事はどう対応すべき?

ハラスメントなどが社会問題になっている中、遅刻が多いバイトや社員に対してはどう対応するべきなのでしょうか。

遅刻が多いとは言え、人材は会社の財産なので大事にしておきたいところです。

まずは誰かが対応する前の段階で、ある程度この場合はこうするというようなガイドラインを作っておく必要があります。

例えば低血圧が原因である場合はこう対応するとか、無呼吸症候群などで睡眠不足であればこうするとか、あらかじめ会社としてどうするかを決めておくと話がスムーズです。

上司による対応

遅刻が一定数以上の社員に対してはまず、直属の上司がなぜ遅刻が多いのか事情を聞きましょう。

この時対応するのは直属の上司です。

持病が原因と言われたらこうするという、あらかじめ決めておいたガイドラインに沿って、対応しましょう。

例えば、持病ではなく一過性による睡眠不足であれば有給休暇を取得してしばらく休んでもらう、ということが考えられます。

あるいは家族の誰かが足腰を痛めるなどして介護が必要になっている場合は、介護休暇の取得をおすすめするなど遅刻が多い社員にとっても決して悪くない対処で解決出来れば、一番良いでしょう。

介護休暇は何も年老いた家族のみに適用されるものではなく、大怪我をした高校生の息子のためにも介護休暇は取得できます。

有給休暇の給料は会社が負担しますが、育児休暇や介護休暇は雇用保険から支払われるので、会社に負担はありません。

他にも持病でどうしても朝が起きれないという場合は、フレックスタイム制や裁量労働制での働き方を提案するなどしてみても良いかもしれません。

裁量労働制は職種が限られているのですが、フレックスタイム制は企業側が決断さえすれば、幅広く色々な業務で使えます。

とにかく、一方的に叱責するのではなく、こちらも真摯に問題に向き合って解決方法を提案する姿勢を出すことが大事です。

人手不足でどこの企業でも求人を積極的に行っている情勢ではあまり厳しいムチをちらつかせるとかえって逆効果で、アメを見せておく方が重要です。

人事部による対応

上司が注意しても改善が見られない場合は、普段あまり会うことがない人事部の人が面談すると場合によっては効果的です。

というのは直属の上司だと、普段から会っているので、緊張感がなくなってしまいがちです。

人事部の人が対応するのは、直属の上司が面談しても改善されなかったという時のみにしておきましょう。

いきなり最初の警告の段階で人事部の人が出てしまうと、2回目の警告の時に注意出来る人は取締役しかいなくなってしまいます。

これは人間の心理を利用したテクニックで、普段からクレームの多い接客業の店などは徐々に上の立場の人を出していくという事をします。

最初は店長、そこでダメならマネージャー、それでもダメなら本社の部長というように徐々に立場を上げることでクレームを出している人の気持ちを抑えるのです。

同じ事を社員の指導でも応用が出来ます。

徐々に注意してくる人を上の立場の人間に置き換えることで、危機感を演出して、反省を促すんおです。

そもそも普段会わない人事部の人が出てくると、それだけで危機感を演出出来ます。

この時の緊張感を出すために、人事部はあえて他の社員と仕事場を離しておくという事もやっていても良いかもしれません。

遅刻が多い人への対策として、休暇の提案や働き方を変えることも出来ない場合は懲罰で給与に影響が出るという警告をするしかありません。

直属の上司があまり厳しい事を言うと、普段の業務に支障が出る場合があるので、厳しい警告などは人事部の人がやった方が良いでしょう。

まとめ

会社の遅刻について対策の仕方を紹介しました。

遅刻が多い人はなかなか直らない事が多いので、面談をした上で原因を探って、どうすれば遅刻しないかを一緒に考える姿勢を見せる事が重要です。

フレックスタイム制や裁量労働制と言った勤務時間にとらわれない働き方もあるので、可能であればそのような働き方を提案してみても良いかもしれません。

せっかく育てた社員を遅刻だけを理由に解雇してしまうのはもったいないので、共に遅刻を直す方法を考えて良いチームを作るようにしましょう、