2021年6月の改正育児介護休業法成立を受け、2022年4月1日から段階的に新しい育休制度が適用されており、2023年4月からは育休の取得状況の公表が義務化されました。

改正ポイントの1つに「育休制度についての労働者への説明・周知義務」があるように、事業主や人事労務管理者は改正内容をしっかり把握しておく必要があります。

この記事では、事業主や管理者の方向けに、就業規則への記載や運用上の注意点など、改正ポイントをわかりやすく解説します。

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育児介護休業法の改正ポイントは5つ

令和元年から2年にかけて男性の育休取得率は12.65%と初の1割超えを記録し、政府が進める対策は一定の成果が見られました。ただし、目標としていた13%には届かず、また世界的に見ると依然として低水準に留まっています。

こうした流れを受け、今回の改正は「より男性が育休を取得しやすい仕組みづくり」を主な目的としています。ポイントとなるのは、以下の5つです。

  1. 雇用環境整備と意向確認・制度周知の義務化
  2. 有期雇用労働者の育児介護休業取得要件緩和
  3. 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
  4. 育児休業の分割取得が可能
  5. 育児休業取得状況の公表の義務化

ポイント1:雇用環境整備、意向確認・制度周知の義務化|2022年4月1日~

「育休を取得しやすい職場環境の整備」及び「妊娠・出産を申し出た従業員への個別意向確認・制度周知」が、義務化されました。

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備

男女ともに育休を取得しやすい職場を実現するため、以下のいずれかの措置を取ることが義務付けられます。なお、一つの措置だけではなく、複数の措置を講じることが望ましいとされています。

  • 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
  • 育児休業・産後パパ育休に関する相談窓口の設置
    • すでに相談対応者を配置するなど相談体制が確立されている場合は、新たに設ける必要なし
  • 自社の従業員の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
  • 育児休業・産後パパ育休制度と取得促進に関する方針の周知

なお、育児休業の対象となる「子」は養子も含まれるため、現時点で結婚や出産を予定している社員がおらず、かつ採用予定がない場合でも上記措置は必要となります。

妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認

本人または配偶者の妊娠・出産を申し出た従業員に対しては、個別に育休制度等に関する以下の事項の周知と休業の取得意向の確認が必要です。

  1. 育児休業・産後パパ育休に関する制度
  2. 育児休業・産後パパ育休の申し出先
  3. 育児休業給付金の概要や用意する書類
  4. 育児休業・産後パパ育休期間取得時の社会保険料の取り扱い

個別周知及び意向確認の方法については、以下のいずれかによるものとされています。

  1. 面談
    • オンライン面談でも良いが、その場合はビデオ通話によるものとし、音声通話のみの場合は面談とは認められない
  2. 書面交付
  3. FAX
  4. 電子メール

原則は1.面談か2.書面交付によるものとし、3.FAX及び4.電子メールについては、本人が希望した場合のみ可能となります。

「申し出た場合の不利益をほのめかす」「取得の前例がないことを強調する」など、取得を控えさせるような言動があった場合は、周知や意向確認義務を果たしたとは認められません。

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ポイント2:有期雇用労働者の育児介護休業取得要件緩和|2022年4月1日~

旧制度では、有期契約労働者が育児休業を取得するためには、以下の要件をいずれも満たす必要がありました。

  1. 引き続き雇用された期間が1年以上であること
  2. 1歳6ヶ月までの間に契約が満了することが明らかでないこと

このうち、1.の要件が撤廃となり、2.の要件のみで取得可否を判断することになりました。ただし、労使協定を締結することにより、「引き続き雇用された期間が1年未満」の有期契約労働者を対象外とすることは可能です。

なお、2022年3月の時点で上記の労使協定が締結されていた場合でも、改正法施行後に「引き続き雇用された期間が1年未満」の有期契約労働者を対象外とする場合は、改めて労使協定の締結が必要となります。

ポイント3:産後パパ育休(出生時育児休業)の創設|2022年10月1日~

既存のパパ休暇に代わり、2022年10月から産後パパ育休(出生時育児休業)が新たに創設されました。これは、子どもの出生後8週間以内に、合計4週間(28日)まで取得可能となる休業制度です。

産後パパ育休の対象者

原則的には、日雇い以外すべての従業員が対象になります。また、主に男性従業員を対象とした制度であるものの、養子縁組の子を養育する場合は女性従業員も対象となります。

ただし、「出生の日から起算して8週間経過後6ヵ月以内に契約期間が満了することが明らかである」場合は対象外となります。つまり、産後パパ育休の対象期間終了後6ヶ月以内に、契約満了が予定されている場合は利用不可ということになります。

また、労使協定により以下の要件に該当する従業員を取得対象から除外する事が可能です。

  • 雇用期間が1年未満の労働者
  • 申出の日から8週間以内に雇用関係が終了する労働者
  • 週の所定労働日数が2日以下の労働者

産後パパ育休の取得可能日数と回数

産後パパ育休は、休業開始予定日の2週間前までに申し出ることにより、子の出生後8週間の期間内に4週間(28日)まで取得可能です。通常の育休制度の申出期限が開始予定日の1ヶ月前であることを考えると、より柔軟に利用できる制度となっています。

また、取得日数が4週間に達するまでは2回まで分割して取得可能であるため、たとえば出生後1週間の休暇を取得し、その後一旦職場に復帰して、再度3週間の休暇を取得するという利用も可能です。分割取得する場合は、初回申し出時にその旨を伝えるのが原則となっています。

なお、産後パパ育休は通常の育児休業とは別の制度であるため、産後パパ育休を取得しても別途育休は取得可能です。

産後パパ育休取得中は就業が可能

原則休業中の就業が認められない育児休業と異なり、産後パパ育休は休業中の就業が認められるのが大きな特徴と言えます。ただし、事業主が一方的に就業を命じることはできず、労使協定を締結している場合に限り、従業員が合意した範囲内でのみ就業が可能となります。

また、休業期間中の就業日数・終業時間については、以下の上限が設定されています。

  • 休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
    • 1日の所定労働時間8時間・週の所定労働日数5日の従業員が、産後パパ育休を2週間取得した場合、期間中の就業日数は5日、労働時間は40時間が上限
  • 休業開始・終了予定日を就業日とする場合は、当該日の所定労働時間数未満
    • 期間の初日もしくは最終日に就業する場合は、所定労働時間未満の短時間勤務とし、当然残業も不可となります

産後パパ育休の就業規則規定例

以下に、就業規則に規定する場合の記載例を掲載します。

(出生時育児休業の対象者)
第◯条 1 育児のために休業することを希望する従業員(日雇従業員を除く)であって、産後休業をしておらず、子の出生日又は出産予定日のいずれか遅い方から8週間以内の子と同居し、養育する者は、この規則に定めるところにより出生時育児休業をすることができる。ただし、有期契約従業員にあっては、申出時点において、子の出生日又は出産予定日のいずれか遅い方から8週間を経過する日の翌日から6ヶ月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない者に限り、出生時育児休業をすることができる。
2 前項にかかわらず、労使協定により除外された次の従業員からの休業の申出は拒むことができる。
一 入社1年未満の従業員
二 申出の日から8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員
三 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員

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ポイント4:育児休業の分割取得が可能に|2022年10月1日~

旧制度では認められなかった、育児休業の分割取得が可能となりました。分割は2回まで可能で、産後パパ育休とは異なり、初回取得時に分割取得の申し出をしなくても、取得の際にそれぞれ申出すれば構わないとされています。

分割取得に関する就業規則の規定例は、以下のようになります。

(育児休業の分割取得)
第◯条 育児休業の申出は、配偶者の死亡等特別の事情がある場合を除き、一子につき2回までとする。

なお、育休利用を申請後に撤回した場合は、一度育休を使ったと見なされるため、この点についても周知しておくことが必要です。

育休を延長した場合の開始も柔軟化

分割取得に合わせて、育休延長時の開始日も柔軟になりました。旧制度では、育休を1歳以降に延長した場合の開始日が、1歳または1歳6ヶ月時点に限定されていたため、夫婦で延長後の育休を途中交代することができないという問題がありました。

新制度では、延長時の育休の開始日を柔軟に選べるようになったため、たとえば1歳以降の延長育休を母親が取得し、3ヶ月後に父親に交代するという取得方法が可能です。

ポイント5:育児休業取得状況の公表の義務化|2023年4月1日~

従業員数1,000人超の企業限定ではあるものの、育児休業等の取得の状況を年1回公表することが義務付けられました

2023年3月までは、育休取得率の公表が義務付けられるのは、プラチナくるみんの対象企業のみでしたが、改正により対象企業が拡大されることになりました。なお、「プラチナくるみん」とは、高度な水準の子育てサポートを行っている企業として厚生労働大臣の認定を受けた証です。

公表内容は、以下のいずれかとされています。

  • 配偶者が出産した男性従業員についての「育児休業等の取得率」
  • 配偶者が出産した男性従業員についての「育児休業等と育児目的休暇の取得率」

公表方法については、自社サイトのほか、厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」への登録など、インターネット等で一般の方が閲覧できる方法により行うことになっています。

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育児介護休業法に違反したら?

以下のような行為は、育児・介護休業法違反とされ、厚生労働大臣からの是正勧告対象となります。

  • 従業員からの育休の申請を拒否する
  • 育休を取得したことを理由に、降格・減給・配置転換などの不利益な取り扱いを行う
  • 「産後パパ育休期間中の就業を強制する」または「期間中の就業を拒否したことを理由に不利益な取り扱いを行う」
  • 「妊娠・出産・育児に対するマタニティハラスメントの相談を受けた」または「ハラスメントの実態を把握していた」にもかかわらず、有効な対応措置を講じなかった

是正勧告に従わない場合は、企業名と違反内容が一般に公表され、厚生労働大臣及び都道府県労働局長から求められた報告を怠った場合は、20万円以下の過料に処せられます。こうした措置は、企業のイメージダウンに直結し、取引先企業の撤退や大規模離職を招きかねません。

育児介護休業法の改正には、勤怠管理システムで対応

今回の法改正に伴い、就業規則の改定や運用の見直しが必要となってきます。取得状況公表の義務化などは、今後は中小企業にも適用されていく可能性があり、相応の対応が求められることになります。

しかし、こうした動きは、SDGsによる社会的イメージアップやESG投資などにつながるチャンスと捉えることもできます。

改正に合わせて勤怠管理システムを導入することで、勤怠管理を効率化でき、育休を取得しやすい職場づくりが可能となります。また、今後の法改正にも慌てることなく柔軟に対応できます。

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