定時で働く通常の勤務以外に、みなし労働時間で働く制度があるのはご存知でしょうか。「聞いたことはあるけど詳しくはわからない」「導入を検討していて調べている」という方も多いと思います。

この記事では、みなし労働時間制について徹底解説します。メリットやデメリット、導入効果についてわかりやすく説明しているので、ぜひ参考にしてください。

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みなし労働時間制とは

みなし労働時間制とは、その日の実際の労働時間に関わらず、あらかじめ定めた時間働いたとみなす制度です。

みなし労働時間制には、裁量労働制と事業場外みなし労働制があり、それぞれ対象業務が限られています。

決められた時間分、働いたとみなす

みなし労働時間制では、会社が指定したある一定の仕事をこなすと、決められた時間分働いたとみなされます。

会社が決めるといっても、会社の都合のいいように無茶な仕事を短時間でさせることはできません。

みなし労働時間制を導入する企業は、実際の労働時間と所定労働時間の差がどれぐらいあるのかを労働監督署に届け出をしなければならず、実態の労働時間とみなし労働時間の差がないように調整しなければなりません。

実際の労働時間と所定労働時間が、あまりにもかけ離れていると、所定労働時間を伸ばすか、仕事内容を少なくするなどの対応をする必要があります。

みなし労働時間制と裁量労働制は違う

みなし労働と混同されがちな裁量労働ですが、この2つは同義ではなく異なります。

みなし労働とは、通常通りの勤務をしていると「この仕事に大体このぐらいの時間がかかる」と労働時間を予想して決めておくことです。

みなし労働の場合は、多少のイレギュラーがあって作業時間が1〜2時間早まったり遅くなったりすることもありますが、大きく変わることはありません。

一方で裁量労働とは、主に何かのアドバイスやアイデアを出すような仕事で適用できる働き方です。

裁量労働では、例えばアイデアを出すような仕事であれば、アイデアがすぐ出れば早く仕事が終わりますが、なかなかアイデアが出なければなかなか退勤できない状況も考えられます。

みなし労働時間制の種類を解説する章で、くわしく解説しますが、裁量労働制はみなし労働制の中の1種類です。

みなし残業はまったく異なるので注意

もう1つ似ている言葉で誤解が生じやすいのがみなし残業。みなし残業は、みなし労働時間制とは全く別物です。

みなし残業は、固定残業とも呼ばれ、日常的に残業が発生する仕事で使われる制度です。

例えば、通常の週40時間の勤務に加えて、月20時間をみなし残業として定めるとします。すると、企業は従業員に対して、毎月20時間分の残業手当を支払うことになります。

このように、みなし残業時間を定めておくことで、勤務時間や残業代の計算をしなくて済むメリットが企業側にはあります。

しかしながら、もし従業員がみなし残業時間分の20時間以上働いた場合、経営者は社員に対して残業代を追加で支払わなければなりません。

一方で、残業時間が20時間に満たなかった場合は、経営者はみなし残業の20時間分の残業代を支払うことになります。

整理すると、みなし労働は、労働時間を決めておく制度。みなし残業は、残業時間を決めておく制度です。

みなし労働時間制とみなし残業

みなし残業(固定残業)については、以下の記事でくわしく解説しています。

>>みなし残業(固定残業)とは?手当の計算や上限時間の考え方を解説

>>みなし残業は違法ではない|おかしいと言われないための対処法

みなし労働時間制の種類

みなし労働時間制には2種類あります。1つが裁量労働制で、もう1つが事業外みなし労働時間制です。

さらに裁量労働制の中に2種類あり、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制に分かれます。

みなし労働時間制の種類

事業場外みなし労働時間制 

事業場外みなし労働制は、対象となる労働者の働く場所が、管理者や他の社員が勤務している事業所の外である場合に使われる制度です。

主に営業職で外回りをしていたり、単独で出張していたりする場合に採用される制度で、労働時間の正確な把握が難しい仕事で使われます。

ただし外回りや出張先であっても、細かい指示の下で働いていて、時間配分が厳密に決められている場合は労働時間の算定が可能であるため、事業場外みなし労働時間制は適用できません。

>>事業場外みなし労働時間とは?

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、ある特定の業種に限って適用される働き方です。

特定の業種以外の仕事では適用はできず、営業職や単純労働のような働き方だと裁量労働制は適用できません。専門業務型裁量労働制を適用できる業種は下記の19の業種です。

【専門業務型裁量労働制の対象】

  1. 新商品・新技術の研究開発、人文科学、自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システムの分析、設計の業務
  3. 新聞、出版事業において記事の取材、編集の業務
  4. デザイナー業務
  5. 放送番組、映画等の制作プロデューサーまたはディレクター業務
  6. コピーライター業務
  7. システムコンサルタントの業務
  8. インテリアコーディネーターの業務
  9. ゲーム用ソフトウェア創作の業務
  10. 証券アナリストの業務
  11. 金融工学ほか統計学、数学、経済学等の知識を用いて行う金融商品の開発を行う業務
  12. 公認会計士の業務
  13. 弁護士の業務
  14. 建築士の業務(一級、二級建築士)
  15. 不動産鑑定士の業務
  16. 弁理士の業務
  17. 税理士の業務
  18. 中小企業診断士の業務
  19. 大学における教授研究の業務

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、一部の企画に関する業務を担う労働者に適用される制度です。

厚生労働省によると、企画業務型裁量労働制が適用できる条件は以下の通りです。

  1. 企業の事業運営に関する企画、立案、調査及び分析の業務
  2. 業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務
  3. 業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務

裁量労働制については、以下の記事でくわしく解説しています。

>>4ステップでスッキリ分かる裁量労働制|ほかの制度とどう違う?

みなし労働の導入実態

みなし労働時間制の導入実態は厚生労働省が発表しています。

厚生労働省の令和2年の調査では、みなし労働時間制を採用している企業は全体の13%でした。

そのうち事業場外みなし労働時間制を採用している企業は11.4%、専門業務型裁量労働制を導入している企業は全体の1.8%、企画業務型裁量労働制を導入している企業は全体の0.8%という結果に。

さらに1000人以上の大きな企業に限ると、みなし労働時間制を採用している企業は26.1%。300人〜999人の従業員規模の場合は16.9%、99人以下の小さな企業だと10.8%でした。

この調査結果から、大きな企業ほど様々な働き方を導入していることが分かります。

みなし労働時間制の割合

※参考サイト/厚生労働省『令和2年就労条件総合調査の概況』

みなし労働時間制の残業代はどうなる?

みなし労働時間制の残業代は、基本的には支払われません。

ただし、会社の指定する仕事内容を所定労働時間に終わらせることが困難な場合、会社は所定労働時間を増やさなければなりません。

所定労働時間が8時間を超えると、みなし労働時間制でも残業代は発生します。

みなし労働時間制に残業は原則ない

みなし労働時間制では残業は原則として発生しません。

所定労働時間が8時間の場合、7時間働いても9時間働いても、8時間分の給料が支払われます。

みなし労働時間制を採用している企業は、実際の労働時間と所定労働時間の差を労働監督署に報告しなければなりません。

所定労働時間と実際の労働時間にあまりにも開きがあり、実態に即したみなし労働時間になっていない場合は所定労働時間を長くするか、仕事内容を調整する必要があります。

残業となる場合

みなし労働時間制であっても残業となるケースはあります。

会社から与えられた仕事が8時間で終わる業務ではなかった場合、所定労働時間が8時間を超える場合があります。 所定労働時間が8時間を超えた場合は、みなし労働時間制でも残業代が発生します。

所定労働時間を長くして、1日8時間もしくは週40時間を超えると残業代が発生します。

休日・深夜労働の扱い

みなし労働時間制でも、休日出勤や深夜労働に関しては、通常の定時制と同じく割増賃金を支払わなければなりません。

休日出勤については、法定休日に仕事をする場合、割増賃金が発生します。

深夜労働については、22時以降に働く場合に発生します。所定労働時間が8時間以内であれば、残業代は発生しませんが、「残業した結果、22時を超えてしまった」というケースでは、深夜労働となります。22時以降は、深夜勤務の手当がみなし労働時間制であっても発生します。

普段、深夜労働や休日出勤が発生しないと見逃しがちですが、忙しくて従業員が休日出勤や深夜労働となった場合は、みなし労働時間制であっても休日手当、深夜勤務手当は発生するので注意が必要です。

就業規則にて「みなし労働時間制の労働者は22時以降の勤務をしてはならない」と規定することも可能です。

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みなし労働時間制のメリット

みなし労働時間制のメリットは、給料の計算がしやすいことです。

社員が何らかのイレギュラーで労働時間が長くなってしまう場合も、仕事が片付いて早めに退勤することになった場合でも、給料の額は同じです。

そのため、通常の定時制であれば、所定労働時間より伸びた場合の追加で支払う賃金、通常の退勤時間より早めに退勤した場合の減額する賃金の計算が必要です。

しかし、みなし労働時間制では個別に対応する必要がなく、給与の計算が基本的に発生しません。

また、裁量労働制の場合、仕事内容によって給料が決まっているので、会社の業務内容に対しての人件費の見通しが立てやすいです。

通常の定時制だと、会社が想定していた労働時間で終わらなかった場合、追加で賃金を支払わなければなりませんが、裁量労働制では人件費を固定費として計画しやすくなります。

従業員の目線でのメリットは、与えられた業務を遂行すれば早く退勤することができます。予定に合わせて「今日頑張って終わらせて、明日は早く帰ろう」と、ワークライフバランスを自分の裁量でコントロールできるメリットが期待できるでしょう。

みなし労働時間制のデメリット

社員から見たみなし労働時間制のデメリットとしては、何か不足の事態が起きて長く働いた場合でも給料が変わらない点です。

また、勤務時間が9時〜17時などと固定されていないので、仕事の状況によって予定より早く帰れることもあれば予定より遅くなってしまうこともあります。

ある程度は自分でコントロールはできるものの、定時制のように毎日退勤時間が決まっているわけではありません。

みなし労働時間制と36協定・就業規則

36協定は社員が1日8時間、週40時間を超える勤務をする場合に結ばなければならない協定です。所定労働が1日8時間に収まる場合は、基本的には締結する必要はありません。

ただし、状況によってはみなし労働時間制で働く場合であっても、36協定を結ばないといけない場合があります。

36協定により法定労働時間を超える場合は届け出が必要

36協定は、1日8時間・週40時間以上の勤務をする場合に、結ばなければならない労使協定です。

みなし労働時間制の場合は、所定労働時間が1日8時間・週40時間の範囲内であり、イレギュラーとして実際の労働時間が1日8時間・週40時間を超えてしまうケースでは、36協定を結ぶ必要はありません。

しかし、日常的に1日8時間・週40時間で仕事が終わらない場合は、所定労働時間を8時間以上に見直して36協定を締結することになります。

みなし労働時間制を採用する場合、全社員が同じ働き方をする必要はありません。例えば、取材や営業で外回りに行く従業員に限って、みなし労働時間制を採用することも可能です。

対象業務が限定される場合は、就業規則にみなし労働時間制が適用される対象業務を明確に決めておく必要があります。

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まとめ

みなし労働時間制について紹介しました。みなし労働時間制は導入すると、社員の働き方の意識を変えることができます。

通常の定時制による勤務では、効率よく仕事ができる従業員は仕事量が多いにも関わらず、仕事が遅い社員と同じ給料になっていました。

しかし、みなし労働時間制を導入すると、同じ仕事量でも効率的に仕事をする人が恩恵を受けれらて不公平感が軽減されます。

また、会社にとっても、業務内容で人件費を固定算出できるので、想定以上に人件費がかさむことを避けることができます。

すべての業種で導入できるわけではありませんが、みなし労働時間制を採用できる業種の会社は導入を検討してみてはいかがでしょうか。