労働基準法では様々な割増賃金があります。

具体的にどのような場合に割増賃金が発生するのでしょうか。

割増賃金が発生すると、人件費高騰につながってしまうので出来たら避けた方が良いでしょう。

また、割増賃金が発生しているはずなのに支払っていないとトラブルの原因にもなり、裁判沙汰になると会社のイメージも悪くなります。

この記事では割増賃金について徹底解説します。

割増賃金とは

割増賃金とは通常の給料のほかに、払わなければならないと法律で定められている賃金です。

ボーナスや退職金や、外資系企業によく見られる成果によって給与を加算させるインセンシティブ等は法的に定められている会社の義務ではないため割増賃金とは呼ばれません。

法定労働時間外に労働した場合

割増賃金が発生する条件として一番よくある事は、法定労働時間以上の時間働いた場合に発生する残業手当です。

法定労働時間とは、通常の勤務形態であれば1日8時間または1週間で40時間です。

この時間をどちらかでも超えていると割増賃金が発生します。

つまり1日7時間働いても週6日勤務していれば1週間で42時間働いているので、法定労働時間以上働いたと言うことになり、2時間分は割増賃金が発生します。

ただし、裁量労働性やフレックスタイム制による働き方だとこの限りではありません。

法定休日に出勤した場合 

もう一つ割増賃金が発生する条件として一般的な事は、法定休日の日に出勤した場合です。

よく間違えやすいのが、法定休日と公休は異なるものです。本来休みだった日に出勤すると必ずしも全てが法定休日の日に出勤されることになるとは限りません。

法定休日は週に1回あるもので、週休2日制の勤務だと2日の休みのうち1日だけが法定休日と言うことになります。

このような事は会社はしっかり理解していますが、社員の中には法定休日と公休を混合している場合があり社員の勘違いによるトラブルで、休日に出勤したのに休日出勤手当が出ていないとい言われる場合があります。

このような出勤を未然に防ぐためにも、シフト表などにこの日は出勤日、この日は公休、この日は法定休暇などと書いておくと良いでしょう。

割増賃金の種類と計算

割増賃金には具体的にどのような種類があるのでしょうか。

割増賃金は基本的には普段の給料の1.25倍が計算式となります。

1.25倍というのは最低水準で、企業の方針によって独自に引き上げる事は可能です。

これはその日の給料が1.25倍になると言うことではなく、割増賃金が発生する時間帯に働いた分が1.25倍となります。

割増賃金が複数重なると、その分加算されていき、2つ重なると1.5倍となり、3つ重なると1.75倍となっていきます。

残業割増(1日8時間・週40時間超え)

残業割増は法定労働時間を超えて働いた場合に発生する割増賃金です。

法定労働時間は1日8時間または週40時間です。

通常の定時制で働いている社員ならばこの時間を超えると1.25倍の残業割増が発生します。

月の残業時間が60時間を超えると1.5倍となります。

ただし、これは通常の定時制での働き方による場合で、変形労働制や裁量労働制などだと、この時間を超えて働いていても残業割増とならない場合もあります。

よく勘違いされるケースとして、法定労働時間は所定労働時間とは異なるものです。

例えば普段6時間働いている人が、7時間働いたとしても残業割増による残業手当は発生しません。

この場合。所定労働時間である6時間を1時間超えて働いてはいるものの、法定労働時間の8時間は超えていないので残業手当は発生しません。

逆に普段働いてる所定労働時間が10時間だった場合は、毎回2時間の残業手当がついているという事になります。

残業手当は単純に勤務時間を延長すれば、必ず付くものというわけではありません。

深夜割増

午後10時から午前5時までの間に働くと労働時間に関係なく深夜割増が発生します。

24時間営業や深夜営業も行っている店の従業員は、この時間に働くとどのような従業員であっても深夜割増の割増賃金が発生します。

店の営業時間が午後10時以降だったり、深夜も営業している事が店のサービスの一つとして売りにしているところは深夜割増の賃金の支払いはどうしても避ける事が出来ません。

人によっては深夜に働いた方が給料が良いからあえて深夜の仕事ばかりをしている人もいるでしょう。

深夜割増は、労働時間に関係ないため午後6時から働いている人でも、午後10時から働き始めた人でも深夜割増になることには変わりはありません。

ただし、法定時間を超えて残業した上で午後10時を超えてしまった場合は、残業代深夜手当の両方がつくことになります。

深夜残業割増

法定労働時間を超えて残業した上で、午後10時から午前5時の間に働いた場合は深夜残業割増となります。深夜残業割増は深夜手当と残業手当が同時に付くことです。

深夜残業割増に該当する時間の給料は、深夜割増と、残業割増が同時に付くので普段の給料の1.5倍になります。

注意しなければならないのが残業手当は法定労働時間を超えて働くと付くので、1日8時間だけではなく週40時間を超えても発生します。

そのため、その週にすでに40時間近く働いている場合は、夕方から働き始めたりして少ない労働時間でも、深夜残業割増の対象となる場合もあります。

残業割増(月60時間超え)

1ヶ月の残業時間が60時間を超えた場合は、通常1.25倍の残業手当であるところが1.5倍となります。

1.5倍の残業割増を1.25倍にする代わりに有給で代替休暇与えると言う制度もあります。

有給で代替休暇を与える場合でも、1.5倍の残業割増をつける場合でも、会社の人件費の負担の額に大きな違いはありません。

また、代替休暇による有給を取得させる時期も2ヶ月以内に限られ、代替休暇をとる事によるシフト調整などの手間を考えると、1.5倍の残業割増を支払った方が効率が良いでしょう。 いずれにせよ、会社にとっては通常の給料よりも多くの給料を支払うこととなります。

社員にとっても疲労感が溜まってしまうので、1ヶ月の残業時間は出来るだけ60時間以内に収めたほうが社員にとっても会社にとってもいいでしょう。

深夜残業割増(月60時間超え)

月の残業時間が60時間を超えた上で、越えた後の時間が午後10時以降の深夜割増対象の時間だった場合さらに割増となります。

60時間を超えた場合の残業割増は1.5倍で深夜割り増しは1.25倍です。

これら2つが同時に行われるとその時間帯の給料は1.75倍の深夜残業割増という事になります。

これに休日出勤も加わると2倍となってしまいます。

会社にとっては深夜残業割増は普段の2倍近く給与を支払わなければならなくなるので、他の社員が代わりに出来るような仕事であればなるべく他の社員に出勤してもらった方が良いでしょう。

どうしてもその社員に出勤してもらわなければならない時は深夜勤務にならないように調整をするようにしましょう。

休日出勤割増

法定休日の日に出勤すると休日出勤割増となります。

法定休日は週に1回定められた日で公休とは異なります。

週休2日制の人は2日のうち1日が法定休日で、週休3日制の人は3日のうち1日が法定休日で、それ以外の休みの日は公休という事になります。

法定休日の日は別の日に移動することもでき、その日のことを振替休日と呼びます。

また、法定休日の日に休日出勤をした上で違う日を休みにすることを代休といいます。

振替休日と代休は同じような仕組みですが、休日出勤手当が出ているかどうかの違いがあり、給料に影響が出てくるので社員も会社もしっかり理解しておかなければなりません。

休日出勤とはならない振替休日は事前に決めなければなりません。つまり、急遽法定休日の日に出勤することになった場合、違う日を振り替え休日とすることが出来ず、会社は休日手当を支払わなければなりません。

その時決められた他の日の休日は代休となり、振替休日ではありません。

社員は休日出勤をした際は代休を振替休日にされて休日出勤手当が支払われているかどうかしっかり確認しましょう。

休日出勤深夜割増

休日出勤をした上で午後10時から午前5時の間の時間帯に働いた場合はさらに深夜割増も加算されます。

その場合、2つの時間帯は2つ合わせて1.5倍の割り増しとなります。

これに加えて、1日8時間または週40時間を超えてしまうとさらに残業手当も加算され、それに該当する時間帯は1.75倍の割増となります

休日出勤をされた社員には特に10時以降働かせることがないように気をつけなければなりませんし、そもそも休日出勤で最初の1時間から割増賃金が発生します。

このような細かい積み重ねが人件費高騰の原因になってしまうので、休日出勤をした社員はなるべく早めに退勤させた方が良いでしょう。

割増賃金の1時間当たりの基礎賃金の計算方法

時間外労働や深夜労働、休日労働の割増賃金を計算するにあたり、1時間当たりの基礎賃金額は労働基準法により以下の計算方法で定められています(労働基準法37条1項)。

給料制計算方法
時間制その金額
日給制その金額を一日の所定労働時間数で割った金額。但し、日によって所定労働時間数が異なる場合には、1週間における1日の平均所定労働時間数で割る。
週給制その金額を週の所定労働時間数で割った金額。但し、週によって所定労働時間数が異なる場合には、4週間における1週の平均所定労働時間数で割る。
月給制その金額を月の所定労働時間数で割った金額。但し、月によって所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1月の平均所定労働時間数で割る。
週、月以外の期間によって定められた賃金その金額をその期間の所定労働時間数で割った金額
出来高払制等賃金締切期間の賃金総額をその期間の総労働時間数で割った金額

頻繁に人事が直面する深夜割増と残業割増賃金

頻繁に人事が直面する深夜割増と残業割増はどのような問題があるのでしょうか。

深夜割増は、24時間営業をしている店や、深夜営業もしている店だと避けようがない事ですが、通常の会社であればなるべく深夜勤務をさせないようにした方が良いでしょう。

残業割増もどうしても人手不足のなのであれば仕方がないことなのかもしれませんが、出来るだけ社員を均等に配置してなるべく割増賃金が発生しないように気をつけましょう。

割増賃金を払ってまで働いてもらう内容か

残業や休日出勤をさせる場合には、本当に割増賃金を払ってまで働いてもらわなければならないのかよく考える必要があります。

例えば、何か締め切り等があってその前日などに絶対に仕上げなければならないものがあった場合などは、割増賃金を払っても出勤させた方が良いでしょう。

しかし、別の日に回せるような仕事であればわざわざ割増賃金を払ってまで出勤させる必要はあるでしょうか。

このような判断は、会社の経営にとっても重要なことなので従業員を管理している上司やマネージャー等はよく考えた上で決断しなければなりません。

ここで間違った判断をしてしまうと、会社の人件費の高騰に繋がってしまい。会社の経営が悪化する原因となってしまいます。

シフト管理ソフトで調整

シフトの管理をパソコンのソフトなどでやると非常に便利です。

無料で導入できるようなものがありませんが、この従業員は今月何時間残業しただとか、休日出勤をしているかとかそのようなことが一目でわかるようになります。

このような確認を人の手でやろうと思えば非常に大変でこの計算のためだけに多くの人と時間を要することでしょう。

小規模の事業所であっても社員の給料の計算などは大変で、シフト制作や給与の計算に多くの時間を使っているマネージャーも多い事でしょう。

ここで色々と計算したり考えている時間を他の事に使った方が会社としては有意義なものとなるでしょう。

社員の数が多い会社だと人事部で社員の給料の計算やシフト管理だけを行っている部署もある事でしょう。社員の数が多いと、給料の計算や休日出勤や残業などの管理も非常に大変になり、そのための人員も多く必要となってきます。

このような給与計算などをする時間と人員を節約できるためであればたとえ少々高額なシフト管理のソフトであったとしても、導入することでむしろ経費の削減となります。

割増賃金のトラブルと対処法

割増賃金のトラブルにはどのようなものがあるのでしょうか。

また、割増賃金のトラブルの対処はどのようにすれば良いのでしょうか。

割増賃金のトラブルは社員の給料とも直結する問題ですので会社も社員もよく注意しなければなりません。会社と社員によるトラブルの多くは割増賃金に関する事がほとんどなので、特に割増賃金については慎重に扱うようにしましょう。

不必要な残業

不必要な残業する場合があります。

これは、従業員が独断でやってしまう場合と、上司の間違った判断により行われてしまう場合の両方あります。

例えばですが従業員の立場からすれば、忙しくて周囲がバタバタしている時に自分が帰る時間になってもなかなか帰りづらいものです。

その場合、その場を管理している上司はその社員に対して、忙しくても気にしなくて帰っても良いと優しく伝えるようにしましょう。

また、忙しくてドタバタしているときは仕事を最後まで終わらせて帰らなければならないと言う雰囲気をなるべく出さないようにしましょう。

従業員の勤務時間を管理しているマネージャー等は、たとえ忙しくても終業時間が近づいてくると残業させるべきか、退勤させるべきかを考えておかなければなりません。

サービス残業はもちろん違法ですし、残業代を必要ではないときに支払ってしまうと人件費高騰の原因となります。

代休が振替休日に

休日出勤をして代休で休んだはずの日が振り替え休日になっていたというトラブルはよくあります。

このトラブルは、休んだ日が代休なのか振り替え休日なのかは給与明細を見てみないとよくわからないというのが問題です。

最近はどの会社も給与明細を上で渡すのではなく、会社の独自のウェブサイトの個人ページ等で確認してもらうと言う形をとっているところが多いです。

また、紙で渡されているとしても、あまり細かく見ていない社員も多いことでしょう。

会社としても、後に残る出勤退勤が記載されたタイムカードを見ただけでは、この日は振替休日なのか代休なのかがよくわかりません。

休日出勤をした場合は必ず休日出勤だとわかるようにしておくことが重要です。

従業員にとっては、休日出勤をした日がある月の給与明細は、しっかり休日手当がついているかどうか確認することが重要です。

このことは従業員による勘違いという事もあり、休日出勤の手当が発生する法定休日の日に出勤したのか、公休に出勤したのかよく分からないという場合もあります。

このようなトラブルを未然に防ぐためにも、シフト表などに公休なのか法定休日なのかをしっかり書いておくなどの事も必要です。

同じことは代休と振替休日にも言えることで、シフト表にこの日は代休だとか、この日は振替休日だとか書いておくことで勘違いによるトラブルを未然に防ぐことが可能です。

まとめ

今回は割増賃金について紹介しました。

割増賃金が不必要に発生していると人件費高騰の原因となり、会社の財務状況の悪化にもつながります。

割増賃金は基本的に社員が通常より多くの負担をかけることによって発生するものなので、割増賃金が発生しないようにするという事は社員の健康の維持にもつながります。

このようなことにお金をかけるよりも成果に応じて報酬を与えるインセンティブ等を充実させたほうが会社の利益にもつながりますし、社員のやる気向上にもつながることでしょう。

社員の労働時間を管理するにはシフト管理ソフトの利用が便利です。

社員の数が増えて管理が大変な会社はシフト管理ソフトの導入を検討してみることをおすすめします。