労働時間を労働者に委ねるフレックスタイム制において、使用者の意思を反映できるのがコアタイムの設定です。
適切なコアタイムの設定は、フレックスタイム制のスムーズな運用につながります。

コアタイムを設けないスーパーフレックスを採用する企業も増えていますが、業態や取引先との関係によってはコアタイムを設ける必要が出てきます。

「コアタイムの平均的設定時間」などの統計情報を鵜吞みにして、採用率の高い時間帯をそのまま自社にも適用してしまうと、制度そのものが立ち行かなくなる可能性もあります。

コアタイムの本来の目的を見失わないためにも、自社にマッチしたコアタイムの設定を見極めることが大切です。

フレックスタイム制を構成するコアタイムとフレキシブルタイム

フレックスタイム制において、就業時間のうち、会社が必ず出勤しなければならない時間帯として指定した時間をコアタイムといいます。

一方、コアタイム以外の労働者が自由に出退勤を決められる時間帯をフレキシブルタイムといいます。

コアタイムやフレキシブルタイムを設定するかどうかは任意ですが、設定する場合は労使協定で定める必要があります。

フレックスタイム制全般についての解説は、こちらをご覧ください。
>>フレックスタイム制|メリットを活かしながらデメリットに対策を

フレックスタイム制における残業代計算の解説は、こちらをご覧ください。
>>労働者に誤解されないフレックスタイム制における残業代計算

コアタイムを設定しないことも可能であり、これを「フルフレックス」や「スーパーフレックス」といいます。

スーパーフレックスについての詳しい解説は、こちらをご覧ください。
>>スーパーフレックスで柔軟な働き方を実現|失敗しない3つのポイント

コアタイムは必要十分な範囲にとどめるのがベスト

コアタイムの設定次第によっては、法令違反を問われるケースや、フレックスタイム制そのものが否認される恐れがあります。

コアタイムが認められないケース

フレキシブルタイムに対するコアタイムの割合が、フレックスタイム制の意義を失わせるほど大きい場合、フレックスタイム制とは認められません。

例えば、コアタイム(9:30~17:00)、フレキシブルタイム(9:00~9:30、17:00~17:30)のように大半がコアタイムで、フレキシブルタイムが極端に短いような設定はできません。

コアタイムの開始から終了までの時間と、標準となる1日の労働時間がほぼ一致しているような場合も、フレックスタイム制とは認められません。

公的に具体的な基準は示されていませんが、労働時間の4分の3がコアタイムのようなケースは認められない可能性が高いです。

また、フレキシブルタイムの時間帯が30分単位となっており、その中から始業時刻もしくは終業時刻を選択するような制度は、労働者が自主的に労働時間を設定しているとはいえず、フレックスタイム制の趣旨に反しますので認められません。

フレックスタイム制は、始業時刻と終業時刻の両方を、労働者が設定できる制度でなければなりません。

業務に支障が出ないコアタイムの設定

コアタイムは、担当者が一堂に会する会議や取引先との対応など、会社の業務にとってどうしても不在では困るという時間帯に限定することをおすすめします。

フレックスタイム制を導入する際、典型的なデメリットとして挙げられるのが、取引先などの社外対応です。

フレックスタイム制を導入後、コアタイムと社外対応が多い時間帯が異なっていると、トラブル増加や社外からの信頼を落としかねません。

導入する場合には、事前に対応部署に対して、対外的な依頼が多い時間帯などをリサーチしておくことが重要です。

フレキシブルタイムは会社の負担になり過ぎないように

労働者におけるフレックスタイム制の自由度を尊重しつつ、セキュリティやコスト面で負担とならないよう、現実的な範囲でフレキシブルタイムを設定するのが理想的です。

フレキシブルタイムは幅が広ければ広いほど自由度が高まるため、労働者にとってのメリットは大きくなります。

しかし、フレキシブルタイムがあまりにも長い時間帯で設定すると、会社側にとってはセキュリティ上の問題や光熱費コストの大幅増につながるというデメリットが出ます。

また終業時間の範囲を遅い時間まで取ってしまうと、深夜労働の割増賃金が発生してしまうので注意が必要です。

ケースで考えるコアタイムの設定方法

コアタイムで設定されやすい時間帯としては、中間的な時間の10:00~15:00が一般的といわれています。

しかし、業務が忙しい時間帯は会社の業態や取引先との関係などによって、会社ごとにバラバラです。
それぞれの会社にとって、最も適切で有効なコアタイムは変わってきます。

コアタイムの具体的な設定例を、以下に3つご紹介します。

  1. ゆっくり出勤してもらい、午後に業務を集中させる
  2. 深夜労働にならない程度にフレキシブルタイムを幅広く取る
  3. 曜日によってコアタイムの設定を変える

ゆっくり出勤してもらい、午後に業務を集中させる

新型コロナウィルス感染症などの予防対策もあり、昨今、始業時間を10時以降に設定する会社が増えています。

それに伴って、顧客や取引先とコンタクトを取る時間帯が後ろ倒しになり、午後に集中するような業種も増えています。

このような状況から、思い切ってコアタイムを後ろにずらすことで、フレックスタイム制の導入効果をさらに上げることが期待できます。
コアタイムを正午以降に設定し、マンパワーを午後に集中させるのも一つの方法です。

労働者にとっては、朝の通勤ラッシュが回避でき、午前中はゆっくり出勤できるようになるため、労働者の心身のバランスは良くなり、仕事のモチベーションアップにもつながるでしょう。

午後に専念できる環境が整備されれば、労働者の仕事に対する集中力もアップしますので、会社全体の生産性向上につながるようになればベストです。

【設定例】
フレキシブルタイム:9~12時、16~20時/コアタイム:12~16時

深夜労働にならない程度にフレキシブルタイムを幅広く取る

得意先などの外部対応があるため、コアタイムを設定せざるを得ない会社は多いです。
ただし、なるべく労働者の要望に合ったフレックスタイム制を運用したい場合には、フレキシブルタイムを幅広く設定するのも一つの方法です。

幅広いフレキシブルタイムになると、前述のとおり、社内セキュリティ上の問題や光熱費のコスト負担増、早朝や深夜残業の増加、自己管理能力が低い労働者の場合は、無駄な残業時間が増加するなどのリスクは確かに伴うのは事実です。

しかし、これらのデメリットはそれぞれの対策を講じることで対応可能です。
フレックスタイム制のデメリットとその対策については、こちらをご覧ください。
>>フレックスタイム制|メリットを活かしながらデメリットに対策を

また、自由度が高いフレックスタイム制によって、労働者はいきいきと働くことが可能になり、仕事に対するモチベーションアップが期待できます。

【設定例】
フレキシブルタイム:6~11時、15~21時/コアタイム:11~15時

曜日によってコアタイムの設定を変える

コアタイムは曜日ごとに変えることも可能です。
週一回は社内会議を設定したい、取引時からの要請や依頼が毎週決まった曜日に集中するといった曜日ごとに傾向がある場合などには効果を発揮します。

また、コアタイムを設定する曜日と、設定しない曜日を設けるのも可能です。

【設定例】
<月曜日・金曜日>フレキシブルタイム:7~10時、12~19時/コアタイム:10~12時 <その他の曜日> フレキシブルタイム:7~19時/コアタイムなし

労務管理におけるコアタイムの疑問を解決

フレックスタイム制を導入している事業所において、コアタイムに関する実務上の取扱いで疑問となり得るケースとその対応について説明します。

  1. 労働者の遅刻と早退に対する対応
  2. 時間単位の年次有給休暇をフレックスタイムで取得する場合の対応

コアタイム中の遅刻・早退は就業規則に定めておく

コアタイム中の遅刻・早退については、就業規則の罰則規定に定めておくことをおすすめします。

フレックスタイム制に遅刻と早退の概念はない?

フレックスタイム制は、労働者が始業時刻と終業時刻を決めることができ、基本的には労働時間が労働者に委ねられた制度です。

会社は労使協定などで清算期間(対象期間)中の所定労働時間を定めますが、労働者としては、清算期間で定められた所定労働時間をクリアしていれば問題ないというのが原則的な考え方です。

よって、始業・終業が労働者に委ねられているフレキシブルタイムに関しては、遅刻や早退といった概念は生じません。

コアタイムの遅刻と早退への対応

一方でコアタイムは、会社が「必ず出勤しなければならない時間」として指定している時間帯であるため、会社はコアタイム中に発生する労働者の遅刻と早退に対しては、何らかの措置を講じることが可能です。

ただし、労働者がコアタイムの始業時刻に遅刻した、あるいはコアタイムの終了時刻を待たずに早退した場合でも、その時点で「ノーワーク・ノーペイ」に基づく賃金カットはできません。

確かに遅刻や早退により当日の労働時間は不足することになりますが、清算期間のトータルで見た場合、労働者が他の労働日でリカバリして、会社が定める所定労働時間をクリアする可能性が大いにあります。

清算期間終了時点で、所定労働時間に不足した場合のみ賃金控除ができるに過ぎません。
ただし、「労働時間の不足」を理由とする賃金カットではなく、懲罰的な意味合いでの減給は可能で、この場合は就業規則などに懲罰規定として盛り込む必要があります。

なお、減給額については「1回につき、1日分の平均賃金の半分以下」「総額が1支払期の賃金総額の10分の1以下」に収まるようにしなくてはなりません。

(制裁規定の制限)
第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

労働基準法|法令検索 e-Gov

また、ペナルティとしての減給処分ではなく、「コアタイムに遅刻・早退の無かった者については、精勤手当を支給する」など、労働者にインセンティブを与えてモチベーションアップを図る方法もあります。

フレックスタイム制における時間単位年休の考え方

コアタイムを定めていたとしても、その時間帯に時間単位年休を取得することを、拒否したり制限したりすることはできません。

時間単位休暇とは

時間単位の年次有給休暇とは、年間の有給休暇取得促進のため、1日単位ではなく時間単位で年間5日を限度に有給休暇を取得可能とする制度です。
時間単位の年次有給休暇を導入する場合は、労使協定の締結と就業規則への記載が必要です。

フレックスタイム制での時間単位休暇の運用

時間単位の年次有給休暇は、1日に取得する時間帯や時間数を制限することはできません。
よって、「コアタイム内の取得は認めない」という規定を就業規則に盛り込むことは認められません。

また、フレックスタイム制では1日の所定労働時間が決まっていないため、有給休暇1日が何時間分に相当するのかを、就業規則などで決めておく必要があります。

フレックスタイム制の運用には、勤怠管理システムが必須

業種や会社ごとに経営環境は異なるように、フレックスタイム制におけるコアタイムやフレキシブルタイムの適切な設定は会社ごとに異なります。

始業時刻や終了時刻など、働く時間帯を労働者に委ねるとしても、その管理は使用者側が行わなければなりません。

適切なコアタイムを検討するには、業務状況分析や実労働時間管理が重要であり、勤怠管理システムの導入は不可欠です。

フレックスタイム導入や改定の際、ぜひ勤怠管理システムの同時導入をおすすめします。
勤怠管理システムの選定・比較ナビでは、豊富に各社の勤怠管理システムを紹介していますので、ぜひご覧ください。

IT Forward | 勤怠管理システムの選定・比較ナビ