私傷病休暇とは、業務外の病気やケガによって就業できない状態となった労働者に対して、会社が一定期間の労働を免除する制度です。 労働基準法などの法律に規定されている制度ではないため、期間や休暇中の給与については、会社が独自に定めることができます。

ただし、手続きや休職が長期化した場合の退職の取り扱いなどは、就業規則等に明記した上で周知しておかないと、重大な労使トラブルに発展します。

この記事では、事業主の方向けに、私傷病休暇の規定や運用のポイントについて、わかりやすく解説します。

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私傷病休暇とは

業務外で怪我や病気を負った従業員に対し、業務ができる状態に心身が回復するまで休暇を与える制度です。なお、業務に起因する疾病や通勤途中の怪我などは労災に該当するため、私傷病休暇としては扱われません。

法的な規定は存在しないため、私傷病休暇の設定は企業の判断に委ねられています。また、休職中の給与に関しても企業によって判断は異なりますが、無休扱いとした場合でも、一定の条件を満たした従業員に対しては健康保険から傷病手当金が支給される可能性があります。

私傷病休暇の要件

旅行先でのケガや業務と因果関係のない病気によって、就業不能となったことが条件となります。なお、業務上または通勤による傷病の場合は、労働者災害補償保険(労災)により対応することになります。

症状から明らかに就業不能である場合は即日休職として扱いますが、それ以外の場合は業務外の傷病による欠勤が一定期間続いた場合に、会社が休職を命じるというのが一般的な運用です。

私傷病休暇の期間

どのくらいの期間までを私傷病休暇として認めるかは、会社によってさまざまですが、短くて3ヶ月程度、長い場合は1年を超える期間までというのが一般的です。勤続年数や実際の症状によって判断することも多いようです。

期間経過後は、就業可能であれば復職させ、復帰の見込みが無い場合は自然退職となるのが一般的です。当然、この期間経過後の取り扱いについても、就業規則等に明記しておく必要があります。

なお、労災による休業の場合は、療養のための休業期間及びその後30日は解雇不可であり、療養開始後3年を経過しても復帰できない場合に限り、平均賃金1200日分の打切補償を支払うことで解雇が可能となるというのが原則です。

私傷病休暇中の給与

有給・無給の扱いは会社によって判断が異なります。無給としても法的には問題ありませんが、就業規則等に「有給とする」旨の規定がある場合は、支払う必要があります。

なお、健康保険の被保険者であれば傷病手当金が支給される可能性があり、これについては後述します。

傷病手当金とは

健康保険の被保険者であれば、私傷病による就業不能が連続3日以上続いた場合、健康保険から傷病手当金が支給されます。この連続する3日を「待機期間」と呼び、休日や休暇を挟んでも「連続して」3日以上であれば、要件を満たします。

傷病手当金の額は以下のとおりです。

標準報酬日額 × 2/3 × 待機期間を除いた休業日数

なお、「標準報酬日額」とは「社会保険料決定の基礎になる標準報酬月額の直近12カ月の平均額を、30で割った額」のことです。健康保険への加入期間が12か月未満の場合は、以下のいずれかのパターンのうち支給金額が低い方が適用されます。

  1. 支給開始日前月までを含めた直近数か月の標準報酬月額の平均
  2. 標準報酬月額の平均値 30万円(※):支給開始日が2019年4月1日以降の方

また、会社から報酬等が支払われる場合は、受け取る報酬等との合計額が本来の傷病手当金の額を超えないように調整されます。

支給期間は令和4年1月1日より変更され、同一の傷病について「支給を開始した日から通算して1年6ヵ月」となりました。従来は「支給を開始した日から最長で1年6ヵ月間」であったため、途中に就業している期間があっても開始から1年6ヶ月経過した時点で支給終了という扱いでした。

改正により、期間が「通算化」されたことで、途中に就業して不支給となっている期間はカウントされず、再度同じ傷病で休業を開始した場合でも通算1年6ヶ月に達するまでは、傷病手当金が支給されることになりました。

傷病手当金の支給要件まとめ

  • 健康保険の被保険者であること
  • 業務外の病気やケガにより就業不能となったこと
  • 就業不能により連続3日以上休業し、さらに4日目以降も休業すること
  • 休業中は無給であること(報酬等の支払いがあった場合は、支給額を調整)

傷病手当金の申請について

傷病手当金の支給申請は本人が行うのが原則ですが、実務上は会社が本人から以下の書類を預かって、加入する健康保険組合もしくは協会けんぽに対して申請するのが一般的です。

  • 傷病手当金支給申請書
  • 医師の意見書
  • 年金証書のコピー(初回申請時および変更が生じた都度)
  • 年金額改定通知書のコピー(初回申請時および変更が生じた都度)
  • 休業補償給付支給決定通知書のコピー(初回申請時および変更が生じた都度)
  • 負傷原因届(怪我の場合)
  • 第三者の行為による傷病届(交通事故等第三者行為の場合)
  • 本人確認書類
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私傷病休暇の規定例

私傷病休暇の休職期間・取り扱い・復職に関してなど、就業規則への記載例(条文数は便宜上、第1条から記載しています)を紹介します。ただし、企業によって状況が異なるため、自社の実情に合わせて修正や追加をしてください。

休職の開始についての規定

(私傷病休暇)
第1条 1 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。
①業務外の傷病による欠勤が〇か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき
②業務外の傷病により通常の労務提供ができず、その回復に一定の期間を要することが明らかなとき
③前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき

2 前項の休職を命じるに当たり、会社は必要に応じて、労働者に対し以下の事項を求め、また書類の提出を命じることができる。
①医師の診断
②前号の結果に基づく診断書の提出、及び担当医師に対する医療情報の照会
③産業医または会社指定医師の面談・診断
④前号の結果に基づく診断書の提出、及び産業医または会社指定医師に対する医療情報の照会

ポイントは、休職への移行を判定するタイミングを明記すること、不正取得帽子のためにエビデンスの提出を命じることです。

なお、私傷病による休職に先立ち、従業員から有給取得の意向があった場合は応じるべきですが、一方で会社が勝手に私傷病休暇を有給休暇取得扱いとすることはできません。

休職期間についての規定

(私傷病休暇の期間)
第2条 第1条に基づく休職期間は、次の期間を限度として、療養に要する期間に応じて会社が決定する。
 勤続1年以上10年未満の者 6か月
 勤続年数10年以上の者 1年
なお、休職期間中に勤続年数が10年に達した場合は、必要に応じて期間を延長する。

休職期間については、一律最長期間を定めても良いし、規定例のように勤続年数に応じて比例付与しても良いでしょう。

休職期間中の取り扱いについての規定

(私傷病休暇中の取り扱い)
第3条 1 第1条に基づく休職期間中は、無給とする。
2 休職期間は、原則として勤続年数に算入しない。
3 従業員は、休職期間中療養に専念し、会社からの求めに応じて定期的に経過報告を行うものとする。
4 休職期間中の社会保険料については、傷病手当金の受給申請における入金先を会社とし、会社は従業員負担分の社会保険料を控除した額を、従業員の給与口座へ入金する。

第3項の経過報告については、うつ病などの場合で担当医師から「会社からの連絡及び定期的な報告を控えるよう」指導があった場合、それに従うようにしましょう。

なお、私傷病休暇はあくまでも会社が任意に定める休暇であるため、育休期間中と違って社会保険料は免除されません。よって、4項のように社会保険料の取り扱いの規定は必要で、規定例以外にも毎月の負担分を従業員に振り込んでもらう方法もあります。

復職についての規定

(私傷病休暇からの復職)
第4条 1 従業員は、休職期間満了日までに第1条各号に掲げる休職事由が消滅した場合は、治癒に関する医師の診断書を添付した上で既定の復職願により、復職を申し出るものとする。
2 会社は、前項の復職の判断等にあたり、担当医師に対して医療情報の照会を求め、産業医または会社指定医師の面談・診断を命じることができる。
3 会社は、復職の申し出により休職事由が消滅したと認めた場合、原則として原職に復帰させる。ただし、業務内容及び人事編成などに応じて原職と異なる職務に配置することがある。

上記規定例は、ダイレクトに復職させる内容となっていますが、本格的な復職の前に「試し勤務(リハビリ勤務)」を設けることも考えらます。

原則的には原職に復職させることになりますが、原職の業務では負担が大きかったり、組織改編により原職のポストに変更が生じた場合は、原職以外の業務・職務による復職となる点を、あらかじめ説明しておきましょう。

自然退職についての規定

(自然退職)
第5条 休職期間満了日を迎えてもなお状態が改善せず、復職に至らない場合は、自動退職とする。

自然退職ではなく「解雇する」場合は、単に規定しているだけでは足りず、あらためて解雇の意志表示が必要となります。

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私傷病休暇の実務のポイント

メンタルの不調は本人にしかわからないストレスや不安も多く、すぐに不調が改善するわけではありません。職場復帰を急ぐと再発につながるため、適度な距離感を保ちながらフォローしていく必要があります。

メンタル不調について

うつ病や双極性障害など、メンタルの不調は第三者からの判断が難しく、従業員本人が自覚していないケースもあるため、慎重な対応が必要です。休職中は不安軽減や体調確認のため、定期的な連絡が必要ですが、症状によっては医師から控えるよう指示されるケースがあります。

職場の人間と連絡を取る行為がストレスに感じる方もいるため、医師から連絡を控えるよう指示があった場合、なるべく会社からの連絡は控え、連絡する場合でも返信を促すような文面の記載は避けたほうが良いでしょう。

復職は慎重に

収入減やキャリアの停滞に関する不安から、症状が完全に治っていないにも関わらず、従業員が職場復帰を申請するケースがあります。企業としては医師の診断書や見解も含め時期尚早と判断した場合、復帰申請を却下することも必要です。

過去には、本人からの要望により復職させたものの、その後症状が悪化して自殺に至り、遺族からの訴訟により賠償を命じられた判例もある(市川エフエム事件 東京高等裁判所判決平成28年4月27日)。

私傷病休暇と同時に勤怠管理システムも導入

私傷病休暇は法の規定がない分、会社によってさまざまなパターンが考えられます。休職、復職、退職、それぞれのシーンについて規定が必要で、実務上も慎重な取り扱いが必要です。

勤怠管理システムを導入することで、休暇の制度設計に応じた柔軟な勤怠管理ができ、休職中の従業員も負担の少ないコミュニティツールとして活用できます。

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