傷病休暇とはどのような制度で、どのような人が対象となり、どのくらいの期間与えられるものなのでしょうか。また、労災とはどのように違うのか、気になる方もいると思います。

この記事では、傷病休暇の基礎知識について、わかりやすく解説します。労災との違いと会社側の義務はどの程度あるのかも整理しているので、ご参考にしてください。

傷病休暇とは

傷病休暇とは、病気や怪我などで長期間働けない時に使える休暇のことです。

法律で定められた法定休暇ではなく、法定外休暇(特別休暇)なので、傷病休暇があるかどうかは会社次第です。

長期間働けない時に利用

傷病休暇は長期間働けない時に利用する制度です。傷病休暇の制度がある会社でこの休暇を申請すると、欠席扱いにはならず、ボーナスの査定や皆勤手当などに影響はありません。

会社が認めた休暇であるものの、法定外休暇なので会社は休んだ分の給料を差し引くこともできます。

そのため、傷病休暇が無給扱いの会社では、休んでいる期間の間は給料出ません。しかし条件を満たせば、健康保険から傷病手当金が支給されます。

働けないケースの一例

働けないケースの一例としては、腕を骨折した時などです。

オフィスワークの場合、足の骨折は座っていれば仕事ができるかもしれませんが、手が骨折してしまっては仕事に大きな支障があります。

もちろん社員が希望すれば、足の骨折でも会社を休んで傷病休暇を取得させることは可能です。

しかし健康保険から傷病手当金が支給されるとはいえ、本来働いて手にすることができる給料よりは減ってしまいます。

家のローンや家族の生活費等のために、少しでも稼がないといけない社員にとっては、多少の怪我であれば働いた方が良い場合もあります。

傷病休暇

傷病休暇は特別休暇のひとつ

傷病休暇は、法律で定められた休暇ではなく、法定外休暇(特別休暇)の1種です。

特別休暇としてよく認められている休暇としては、年末年始休暇、夏季休暇、忌引き休暇などがあります。

法定休暇と法定外休暇の違い

休暇の中には法律で定められた法定休暇と、会社が独自に決めている法定外休暇(特別休暇)があります。

法定休暇は法律で義務付けられた休暇なので、条件を満たす従業員は取得する権利を持ち、会社は休暇を与えなければなりません。

一方で法定外休暇は、企業が独自に設定する福利厚生の一環です。

法律上の義務はないので、「法定休暇を福利厚生として取り入れるかどうか」「有給扱いにするか無給扱いにするか」「期間は何日にするか」「どのような条件で取得できるか」などを企業が自由に決めることができます。

法定休暇の中で代表的なものは年次有給休暇です。

年次有給休暇は半年以上勤務している従業員であれば、アルバイトでも正社員でも必ず取得できる権利です。

契約社員や派遣社員、パートタイム勤務でも、雇用形態によって付与条件が変わることはありませんが、1週間の所定労働日数によって有給休暇の日数は変わってきます。

例えば週休3日制の正社員と、所定労働日数が1週間のうち6日あるアルバイトだと、所定労働日数が1週間のうち6日あるアルバイトの方が年次有給休暇の日数は多いです。

週休2日制の正社員になれば、半年以上働くと10日の有給休暇が与えられ、その後毎年1日ずつ増えていき、最大で20日になります。そのうち5日間は、会社側は必ず取得させなければいけません。

そのほか法定休暇には介護休暇や看護休暇、生理休暇などがあります。これらの休暇は欠勤扱いにはならないものの有給扱いとする義務はありません。

法定外休暇は法律で定められていない会社が独自で決めている休暇のことで、特別休暇とも言われています。

法定外休暇には年末年始休暇や結婚休暇、忌引き休暇などがあります。

法定外休暇は法律で定められていない休暇なので、休暇制度を導入しなくても問題はなく、取得条件なども会社が自由に決めることができます。

ただし、年末年始休暇や忌引き休暇など多くの企業が導入している休暇は、他社との比較で導入していないと福利厚生が充実していないと捉えられ、社員満足度の低下や人材採用が難しくなるリスクがあります。

※法定休暇・特別休暇一覧

傷病休暇には大きく2種類

傷病休日には、公傷病休暇と私傷病休暇の2種類があります。

公傷病休暇は会社の業務中に起きた怪我のことで、私傷病休暇は会社の業務外で起きた怪我や病気のことです。

公傷病休暇

公傷病休暇は、会社の業務中に起きた怪我や病気で使用できる休暇のこと。その治療代を社員は負担する必要はありません。

会社は業務上災害として、従業員に対して労災保険から治療代を支払うことになります。

労災保険は怪我の治療にかかった全てのお金を保証するわけではなく、病院で処方されたもののみが対象となります。

つまりドラッグストアなどで風邪薬や包帯などを自費で購入すると、その料金を支給することはできません。

また、ある程度の期間休業するときは休業手当も労災保険から支払うことになります。

公傷病休暇にあたるケースとしては、会社の勤務中の事故はもちろんのこと、出勤中や帰宅途中に起きた事故でも適用されます。

ただし、帰宅途中に寄り道をして、会社に届け出をした帰宅ルートから外れてしまうと、公傷病休暇は認定されない場合があります。

私傷病休暇

私傷病休暇は、会社の業務以外のプライベートな時間で怪我や病気をした場合に適用される休暇です。

治療代や休業補償を払うかどうかは会社によって異なり、法律では特に会社には払う義務は課せられていません。

私傷病休暇では休業補償などはありません。そのため年次有給休暇が残っていれば、療養中に有休を消化した方が給与は下がりません。

有給休暇が残っていない場合でも、健康保険に加入していると条件を満たせば傷病手当金が支給されます。

傷病休暇と有給の違いは?

傷病休暇と有給休暇の違いは、休んでいる間の給料が出るか出ないかの違いが1番大きいでしょう。

傷病休暇だと給料が支給されないケースが多いので、会社の温情で上司と相談の上、年次有給休暇を使用するパターンもあります。

有給休暇とは

年次有給休暇とは法定休暇であり、半年以上勤務をしている社員であれば誰でも取得できる権利です。

年次有給休暇を取得する際は事前に申請しなければなりません。

したがって出勤中に事故にあい突然休むことになった場合、有給休暇としてその当日休むことは本来できません。

しかし会社が認めてくれて社員もそれを望むのであれば、特に問題はありません。

傷病休暇

傷病休暇のルール

傷病休暇は何か怪我や病気をして、会社に出勤するのが困難になったときに使える休暇です。

傷病休暇は法定外休暇なので、導入していなくても問題ありませんし、導入していてもルールは会社が独自に決めることができます。

傷病休暇に限らず法定外休暇を導入する際は、就業規則に取得条件などのルールを明記しておかなければなりません。

日数や条件は就業規則による

傷病休暇のルールは法律では決められておらず、会社が独自に定められます。

仕事に支障のあるの怪我のほかに、インフルエンザやコロナウイルスの感染など出勤すると他の社員にうつすリスクのある病気の場合でも適用は可能です。

しかしながら、傷病休暇は法定外休暇であり、法律による決まりはないので、どのような症状が対象になるのか、何日休めるのかは、会社の独自のルールによって決まります。

傷病休暇を導入する際には、日数や条件などルールを決め、就業規則に明記しておかなければなりません。

傷病休暇を申請できる人

傷病休暇を申請できる人も、会社によって条件が異なります。

例えば、外回りの営業が多い社員は足の怪我でも申請できるようにしたり、パートタイム従業員は除外したりすることも可能です。

ただし、業務上の事故でケガをしてしまった場合は、会社は補償しなければなりません。

傷病休暇の制度を導入していない企業であっても、業務上災害の場合は休業手当を支給し、治療費も支払わなければならないので要注意です。

業務上災害で補償されるお金は労災保険から支給されます。

傷病休暇の期間

傷病休暇の期間も会社が決めることができます。

しかしながら傷病休暇で休んでいる時は給料がもらえず、傷病手当金がもらえるとしても本来働いてもらえるはずだった給料よりは安いものとなります。

したがってどのくらいの期間休みが必要なのかは、社員と会社が話し合った上で決めることになるでしょう。

ただし例外として、インフルエンザやコロナウイルスなど他の社員にうつる恐れのあるものは、社員の希望があったとしても、2週間など期間を決めて会社に出勤させない方が無難です。

傷病手当金が支給される期間は、支給開始日から最長1年6ヶ月です。

これは、1年6ヶ月分支給されるわけではなく、1年6ヶ月の間に仕事復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合、復帰期間も1年6ヶ月に算入されます。

支給開始後1年6ヶ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。

傷病手当金とは

傷病手当金とは健康保険に加入している人がもらえる手当金で、一定の条件を満たせばもらえます。

しかし傷病手当金をもらっている間でも、健康保険の支払い義務が発生し、本来もらえるはずだった給料よりは安いものとなります。

したがって社員によっては多少のケガでも勤務を希望する人もいるので、必ずしも取得条件を満たした人すべてに傷病休暇を与えて休ませた方がいいわけではありません。

傷病手当金がもらえる条件

傷病手当金がもらえる条件は以下の通りとなります。

  1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
  2. 仕事に就くことができないこと
  3. 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  4. 休業した期間について給与の支払いがないこと

1の業務外の事由による病気やケガが対象で、業務内は対象となっていない理由は、業務内だと業務上災害として労災保険から休業手当が支払われるからです。

傷病手当金は労災保険の対象から外れてしまい、休業補償を受けることができない人のための制度です。

傷病休暇

傷病休暇を利用する際の注意点

傷病休暇を使用する際の注意点を紹介します。

傷病休暇を利用している時でも社会保険や税金は支払わなければなりませんし、傷病手当金が受け取れるとはいえ収入は普段よりは少なくなります。

休職中でも支払われる社会保険料

ケガや病気によって長期間働くことができなくなり、休職することもあるでしょう。

休職中でも社会保険料は支払わなければなりません。 支払う義務のある社会保険料は厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険です。

休職中のほか傷病休暇中の従業員にも、社会保険の支払い義務は発生します。ケガや病気のために休んでいる間も、社会保険料が減免されることはありません。

しかし会社を辞めて1年間収入がほとんどなく、翌年会社の社会保険に加入せずに国民健康保険になると健康保険の保険料は安くなります。

前年が無収入であっても年金や雇用保険の額は変化ありません。

労災認定休業とは

会社の勤務中に起きた事故等で労災認定されてしばらくの間休業する場合、休業補償が支払われます。

会社の勤務中とは出勤中や帰宅中も含まれます。さらに外回りの営業で、会社の車を自らの運転で移動している際の事故も対象となります。

ただし、会社に届け出をした通勤ルートから外れた道で事故を起こした場合、労災認定されない可能性が高まります。

さらに電車通勤だと届出をしていたにも関わらず、自転車やバイクで通勤して事故にあっても労災認定されない可能性が高いです。

また、業務中のけがのほか、過労により病気になった場合も労災と認定されることがあります。

例えば気管支喘息や胃潰瘍、うつ病などは、少なくとも発病する1ヶ月間の業務内容で、過度な労働負担があった場合には、業務上災害として認められる場合が多いです。

まとめ

今回は傷病休暇について紹介しました。

傷病休暇を取得する以前に、業務上災害として労災が認められると、治療費が全額支給される上に休業補償があります。

傷病休暇は、労災には当たらない程度のケガや病気などで、会社に出勤して業務ができない社員が対象となる制度です。

傷病休暇の制度がなければ、あまっている有給休暇の消化を検討しましょう。

ケガや病気で仕事ができなくなった場合は、「まずは労災になるかどうか」「次に傷病休暇の制度があるかどうか」「最後に有給休暇が使うかどうか」の順番で、確認することをおすすめします。