会社の早退は厳密にいうと、労務提供の義務違反になります。雇用契約の際に交わした所定労働時間を守る必要があるためです。

しかしながら、遅刻とは違い一旦は出社して労務を提供しており、また理由もやむを得ない事情によるケースが多いと言えます。よって会社としては、一律に処分対象とするのではなく、理由に応じた個別の対処が必要となる場面が出てきます。

この記事では、従業員が会社を早退した場合の対応や処分方法について、わかりやすく解説します。

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会社を早退するとは

会社を早退するということは、就業規則及び雇用契約書に記載された終業時間よりも早く退社するということになります。会社は、早退した時間に対しては「ノーワーク・ノーペイの原則」によって賃金を支払う必要はありません。

「ノーワーク・ノーペイの原則」とは、使用者は労働が無かった分の賃金について支払う必要がないという考え方で、法律で明文化されていないものの、一般的に認められています。

また、この早退や欠勤のように、本来労働義務のある日や時間に労務提供がなかった場合に、その分の賃金を控除することを「不就労控除」と呼びます。

さらに、理由のハッキリしない早退が常習化しており、注意しても改善が見られない場合は、就業規則等の規定に従って懲戒処分を下すことも可能です。

控除する場合は端数処理に注意

早退を理由に不就労控除を行う場合、早退した時間は1分単位で計算する必要があります。計算を簡易にする目的で、20分の早退を30分などに切り上げて計算をしてしまうことは、「賃金全額払の原則」に反して認められません。

つまり、実際に早退した時間よりも多く計上することで、労働時間を不当に切り捨てることになり、労働者に不利益な取り扱いになってしまいます。

同様の理由で、控除額を計算をした結果、その額に端数が生じた場合は控除額を切り捨てて計算する必要があります。控除額を切り上げて算出してしまうと、結果として差し引き後の支給額が、実際に勤務した日数・時間に応じた賃金額よりも少なくなってしまうためです。

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会社の早退のよくある理由と対処法

早退の理由には、遅刻ほどパターンは多くないもののいくつか考えられ、中でも典型的なものをいくつかピックアップし、それぞれの初動対応をご紹介します。

体調不良の場合

最もよくある理由は体調不良によるものです。風邪などは自己体調管理の範疇で、多少は本人にも責任があると言えなくもありませんが、持病の悪化や女性特有の生理痛などはどうしようもない部分があります。

早退による静養で回復すれば問題ありませんが、翌日の出勤も難しいようであれば、その場で欠勤を伝えてもらうか、早めに欠勤の連絡を入れてもらうようにしましょう。

また、感染症が疑われる場合は、社内感染のリスクが高いため、医師の診断を受けさせて、結果を報告してもらうようにしましょう。

なお、女性従業員の生理痛による体調不良の場合は、半日単位または時間単位での生理休暇が認められているため、あらかじめこうした規定については従業員に周知しておくことが必要です。

生理休暇取得による遅刻や早退に対しては、その時間を無給とする不就労控除は可能であるものの、それ以上の処分やマイナス査定などの不利益な取り扱いは禁じられています。

家庭の事情の場合

未就学の子どもを抱える従業員が、保育園から子どもの急な発熱やケガなどの連絡を受け、急遽お迎えが必要となる場合があります。また、要介護家族を抱える従業員は、介助やデイサービスへの対応などで途中で勤務を切り上げざるを得ない場合があります。

こうした事情を持つ従業員に対する休暇制度として、育児・介護休業法には「子の看護休暇」と「介護休暇」が定められています。そして、この2つの休暇制度は、1日単位だけでなく時間単位での取得も可能となっています。

家庭環境や突発的な事情によりやむを得ず早退する従業員には、こうした時間単位での休暇制度を利用してもらうのが有効です。

自然災害による場合

やや特殊なケースではありますが、台風接近や大雪の予報が出されており、公共交通機関の運休が予定されている場合や、地震により電車が運休となり臨時バスなどが出る場合があります。

この場合は、従業員が帰宅難民化することを避けるため、一斉に業務を切り上げて帰宅させることが考えられます。また、特に遠方から通勤している従業員が、時間運休で帰宅できなくなる恐れがあるため、早退を申し出るケースもあります。

理論上は不就労控除は可能と言えなくもありませんが、こうした自然災害は当然、従業員の責任によるものではないため、通常通りの賃金を支給するのが無難です。

労災による場合

勤務中に何か事故に巻き込まれたり、作業に起因する症状を発症して早退した場合は、労働者災害(労災)が適用される可能性があります。この場合は当然不就労控除は認められず、休業補償として少なくとも1日の賃金の60%を支払う必要があります。

なお、実際に労災に該当するかどうかは、現場の状況や本人の作業内容などを個別に判断する必要があります。

早退に対する懲戒処分

特別な理由もなく早退を繰り返したり、早退理由が虚偽であったりした場合は、社内規律や職場の雰囲気を守るためにも、何らかの処分が必要となってきます。ただし、具体的な処分を科すためには、就業規則等にその要件や内容を明記しておく必要があります。

戒告・譴責

戒告及び譴責は、いずれも本人に注意をした上で反省を促すことで、懲戒処分の中では最も軽いものとなります。

戒告は、口頭または書面による厳重注意のことで、次に述べる譴責とほぼ同じ内容ですが、必ずしも書面の提出を伴わないのが特徴です。

譴責は、厳重注意のあとに始末書や顛末書などの書面を提出させて、本人の反省促す処分で、戒告よりもやや重い処分という位置づけです。

減給処分

減給処分は、不就労控除とは別に、制裁として賃金から一定額を差し引く処分です。減給処分については、労働基準法に以下のような上限が定められています。

(制裁規定の制限)
第九十一条 就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

労働基準法第91条|法令検索 e-Gov

つまり、早退1回ごとの減給額は平均賃金1日分の半額を超えてはならず、また月(賃金支払期)の減給総額が賃金月額の10%を超えてはなりません。

出勤停止

出勤停止は、一定期間当該従業員の就業を禁じる処分です。出勤停止期間中は当然無給となり、年次有給休暇の付与要件となる出勤日数や継続勤務期間にもカウントされません。

なお、出勤停止の日数については、特に法律上の上限などはありませんが、数日から10日程度とするのが一般的です。

諭旨解雇・懲戒解雇

諭旨解雇は、次に述べる懲戒解雇に相当する事案ながらも、過去の実績や貢献度などを考慮して若干の軽減がなされ、本人に納得してもらう形での解雇を指します。実務上の最も大きな違いは、離職票の離職理由に「自己都合」と記載される点です。

懲戒解雇は、処分の中で最も重く、「犯罪を犯した」「会社に対する背任行為があった」など重大な処罰が相当とされる場合において、即日解雇を命じる処分です。離職票の離職理由にも「懲戒解雇」と記載され、以降の再就職に大きく影響が出ます。

いずれにしても、早退だけを理由に解雇までの処分に及ぶことはほぼ考えられず、また悪質な早退を繰り返して最終的に解雇に至る場合でも、先に挙げた戒告・譴責や減給などの処分を段階的に踏む必要があります。

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フレックスタイム制の早退の扱い

フレックスタイム制は、清算期間内における総労働時間枠を設定し日々の労働時間を労働者が自由に設定できる制度です。そのため、清算期間における総労働時間さえ満たしていれば基本的に不就労控除は発生しません。

ただし、フレックスタイム制には労働者が自由に設定できるフレキシブルタイムと、必ず出勤すべきコアタイムがあります。よって、コアタイムに対する早退に対しては、不就労控除や懲戒処分の対象とすることが可能です。

なお、実労働時間が清算期間内に定めた総労働時間に満たなかった場合には、不就労控除をすることは可能ですが、実際には不足分を翌月の総労働時間に繰り越して、上乗せする運用とするのが一般的です。

裁量労働制の早退の扱い

裁量労働制は、業務遂行の方法や時間配分を労働者に委ね、実労働時間に関わらず、みなし労働時間として定めた時間分労働したものとみなす制度です。よって、通常の労働時間制による時間管理はできず、基本的に遅刻や早退は生じません。

ただし、ある程度の勤怠状況の把握や情報共有の必要性から、始業・終業の範囲を提示し(強制はできません)、大幅な早退を予定している場合は出社時に伝えてもらう程度の運用は可能と言えます。

早退への適切な対応は、勤怠管理システムが有効

早退は、遅刻に比べて従業員に非のないケースが多く、不就労控除や処分は慎重に行う必要があります。法令の趣旨やその他の規定に反しないように注意して具体的な運用を定め、就業規則等で周知しておきましょう。

規定や実際の運用を誤ると、思わぬ労使トラブルに発展する可能性があります。控除額の計算や時間単位の各種休暇における運用など、手作業による管理では煩雑でミスも起きやすくなります。

勤怠管理システムを導入することで、月ごとに控除額を計算する場合でもシステム側で自動計算できるため、手間をかけずに適切に処理が可能で、トラブル防止にもつながります。

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