退職するわけではなく、休職するというのは一体どのような意味があるのでしょうか。

また、会社は手当を支払わなければならないのでしょうか。

この記事では休職することで社員と会社にどのような影響があるのか、どのようなメリットがあるのかを徹底解説します。

休職制度とは

休職制度とは、退職ではなく、会社に籍を残したまま労働する事を一時休む事です。

社員にとっては退職ではなく休職することで、休みが明けた後スムーズに仕事を再開出来るというメリットがあります。

会社にとっては、会社にとって必要な人材である社員が様々な事情で退職を希望してきた時に、休職を勧めることで人材流出を防ぐ事が出来ます。

似た言葉で休業制度というものがありますが、休職と休業は全く異なる意味があります。

退職の保留

休職というのは簡単に言えば退職を保留するということです。

例えば人によっては昔からの夢だったバックパッカーの旅に行ってみたり、結婚前にワーキングホリデーで海外で生活してみたいという人もいるでしょう。

そのような事をするには、会社を退職して旅立つというのが基本ではあります。

しかし、あえて退職では無く、休職をして長期の旅に出るという道に進む人もいます。

休職するという事は社員にとって、休みが終わったあとすぐ仕事が出来るというメリットがありますが、会社にとっても自己都合による休職であれば特に手当を出す事も無いので、負担などはありません。

何らかの事情があって仕事を長い期間休まないといけない必要があり、なおかつまた同じ会社で働きたいと思っている社員にとってはありがたい制度です。

よくあるのが、海外に1年以上語学留学に行く時など会社を休職して行く人が多いです。

また、他にもよく使われるケースが、何か長期の治療が必要な大病を患った時など会社を休職して治療に専念するということがあります。

休暇や休業とは別

休職と休業は同じようなものだと考えてしまいがちですが、全く異なります。

休業と名前が付くと、基本的には何か補償金のようなものが雇用保険からもらえます。

休暇と名前がつくと欠勤扱いにならずに休めるもの、有給休暇以外は特に手当などはありません。

よく聞かれる休業の名前としては産後休業や育児休業や介護休業などがあります。

休暇の名前としては介護休暇、看護休暇などがあります。

このうち産後休業は妊娠した女性の取得は義務なので、本人が休業に入る事が嫌だとしても必ず休業しなければなりません。

産後休業は雇用保険に入りながら働いていて、出産経験のある女性なら誰もが取得したことのある休業ということになります。

他の休業は取得が義務ではないものの、社員には申請すれば取得できる権利があり、企業は社員が取得を希望したら取得させなければなりません。

条件を満たして申請すれば取得出来るものとして、育児休業、介護休業、産前休業などがあります。

雇用保険に加入している人が、これらの休業を取得した場合は何らか手当が雇用保険の中からもらえます。

休職の場合は、特に何の手当ももらえませんが、怪我や病気で休職を余儀なくされた場合は傷病手当金が健康保険から支給されます。

他にも会社都合による休職の場合は休業手当がもらえます。

休職

休職の種類

休職をする際はどのような理由で休職をすることがあるうのでしょうか。

大きく分けて自己都合による休職と会社都合による休職があります。

病気などの自己都合

自己都合による休職でよくあるのが、大きな病気や働けないほどの大怪我や、鬱病などの精神的な病気などです。

休職により、会社から手当などは支給されませんが、怪我や病気で休職した場合は、健康保険から傷病手当金がもらえます。

また、がん保険など、民間で何か大きな病気をした時のための保険に加入していれば、民間の保険も支給されます。

他にもよくある休職の理由としては、海外語学留学などがあります。

会社にとっても英語力の向上した社員がいると、業務上役立つ事もあるので、会社によっては語学留学を支援しているところもあります。

しかし、基本的には休職中の海外留学の費用を会社が負担する事はなく、残っていた有給休暇を全部使ってその分の賃金を最後の給料に上乗せするという事が出来るのみです。

それ以外にもあるのが選挙に当選して政治家になったケースです。

国会議員になるような人はめったにいませんが、県会議員や市議会議員であれば、若い社員でも立候補して当選する人も出てきます。

しかし、このまま議員を続けるのではなく、最初の任期だけ議員をやってそのあとは会社に戻るという人もいます。

そのような時に、議員をやっている時は休職するという人もいます。

議員をやっていると人脈が広がるので、その人脈を会社のために生かしてくれる社員になる事が期待されます。議員になるような人はあまりいませんが、誰でもなり得るのが裁判員です。

裁判員では日当も支給されますし、生活するのに困る事はありませんが、会社の勤務を続ける事も出来ません。

そのためだけに辞めるわけにも行かないので休職するという事になります。

会社都合による休職

めったにありませんが、会社都合による休職という事もあります、

なぜめったに無いかというと、会社が給料の60%を休業手当として支給しなければならないからです。

会社都合による休職というのは、仕事が少ないので人手はそこまで必要ではないものの、優秀な人材は確保しておきたいという時などにすることがあります。

例えば優秀なデザイナーが社内にいるものの、現在はデザインの発注が無いという時にそのデザイナーである社員に休業を要請することがあります。

社員からすれば、働かなくても収入があるという事になりますし、会社からしても優秀な人材をキープしつつ、無駄に出社させるよりも人件費を節約出来るというメリットがあります。

このような人材のキープは特別な能力を持つ優秀な社員に対してのみする事であり、そうではない社員であれば、自主退社を要請するというケースが多いでしょう。

会社都合と自己都合の休職の違い

会社都合による休職と自己都合による休職ではどのようなところに違いがあるのでしょうか。

会社都合は休業補償あり

会社都合による休職は休業補償を給料の60%払わなければなりません。

一時的に仕事が少なくなったものの、すぐにまた仕事が増えることが見込まれている場合など会社都合による休職をされることがあります。

会社にとっては働いていない人にお金を払いたくないと思ってしまいがちですが、会社に出社してもらうよりは安く人件費を抑えることが出来ます。

例えば会社の仕事がヒマになり、ある程度の人数の社員に自主退社を要請して、忙しくなったらまた新たに社員を募集する事と比較するとどうでしょうか。

いわゆるリストラという形で人材削減して、忙しくなったらまた募集するというやり方です。

求人広告を出すという手間もかかりますし、面接したり書類選考するのにも時間が人手が必要となってきます。

さらに、良い人材が集まるとは限らず、仕事を教えるのもまた最初からやらなければなりません。

このような事になるので、繁忙期と閑散期がいつもはっきりしている時は、経営戦略として会社都合の休業という形で、給料の60%を支払いつつ休職させるというのもひとつのやり方です。

社員としては、明らかに会社都合による休職なのに、自己都合による休職にさせられてしまわないように気をつけましょう。

自己都合による休職だと休業手当は支給されません。

この事は新型コロナの影響でホテルや観光地などを一時的に一定期間休業するという場合でも有効です。

もちろん切ってしまった方が、人件費はかかりませんが、営業再開した時にまた人を募集して研修などをして教育もしなければなりません。

また、営業再開する前までに教育を終わらせなければならず、毎日状況が変わる感染状況を見ているだけではなかなかわかりません。

しかし休職させておくと、忙しくなったらすぐに呼び出す事も出来ますし、再び感染が増えてヒマになった場合はまた休職をさせる事が出来ます。

新人の教育をしたりする手間を考えると、会社都合による休職という形にして給料の60%を支払いつつ、人材の確保をしていた方が良い場合もあります。

自己都合でも補償がもらえる事も

自己都合による休職は休業手当はもらえませんが、怪我や病気だと傷病手当金がもらえます。

また、会社によっては人材育成の一環として、語学留学や資格取得のためにセミナーに通わせる事を推進している企業もあります。

通常、語学留学などを休職して行く場合は、会社からは休業補償はもらえませんし、留学にかかる費用も自己負担です。

他にも裁判員に選ばれた場合は、裁判員としての日当が支払われます。

また、自己都合による休職をする場合でも有給休暇を使うことが出来ます。

休職する時は、最初の何日かを残っている有給休暇全てを使うようにすると良いでしょう。

休職が長期になる場合は、せっかく持っている有給休暇取得の権利が失効してしまう可能性もあります。

休職中の給与や手当の有無

休職中にはどのような手当があるのでしょうか。

手当がある場合は、会社都合による休職と残りの有給休暇の消化以外は、公的な保険から支給されます。

傷病手当金

傷病手当金は健康保険から支払われる手当金で、病気やけがで3日以上休んだ場合に、申請すればもらえます。3日以上なのでインフルエンザやコロナに感染して2週間の隔離生活をする事になった場合などでもう受け取ることが出来ます。

休職した場合は健康保険から傷病手当金がもらえますが、退職した場合は雇用保険から傷病手当金がもらえます。

しかし、病気で休んでいるのであれば病院には必ず行く事になり、健康保険は必ず必要になります。

退職した場合は健康保険が無くなってしまう場合があるので、休職にしておいた方がいいでしょう。

傷病手当金は怪我や病気の症状が良くなるまで無制限にもらえるという事はなく、最大で1年半です。

期限は1年半なので、1年半たってもまだ仕事に復帰出来ないという状況だと他の保険でなんとかやっていかなければならないという事になってしまいます。

病気による休職が長引いて、1年半経過して傷病手当金も受け取れなくなった場合、次に頼りになるのが障害年金です。

障害年金は今までどのくらい年金を払ったかで額が変わってきます。

1年半後もまだ闘病生活等を続けるのであれば、障害年金がもらえることが出来ますが、金額は傷病手当金より安いことが多いです。

生命保険に加入していて、余命宣告されれば生命保険も支給されます。

それでもどうしようもなければ、生活保護という事になるでしょう。

会社都合や会社に責任がある休職

労働基準法の第26条に次のような記述があります。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

これはつまり、会社の都合や責任により休職する事になってしまった場合は休業手当を支払わなければならないという事になります。

この事は主に労災で入院する事になった場合に適用されます。

労災は飲食店で指を切ってしまった時の他、建築現場などの事故で怪我をした場合などで適用されます。

オフィスワークであってもストレスで胃腸炎になった場合などでも労災認定されたケースもあります。

また、出勤途中の事故などでも労災となり得ますのでオフィスワークで危険な仕事をしていないからといって労災と無縁というわけではありません。

労災の場合は入院や治療にかかる費用の会社負担はもちろんの事、休んでいる間の休業補償もしなければなりません。

休職

休職中のトラブルと対応

休職に関してどのようなトラブルが考えられるのでしょうか。

会社都合による休職を、自己都合による休職にしたというトラブルが起きることがあります。

ストライキ

実際に起きたケースで、ある航空会社でストライキが起きました。

ストライキの結果、路線のひとつが一時中止になりました。

路線が一時的に無くなったため、ストライキを起こした社員の仕事が無くなり、その社員に休業を命じたもののそれは自己都合になるのか会社都合になるのかという話です。

結論を言うとこのケースは会社都合による休職だと裁判で認められました。

というのは、ストライキを起こしたのは労働組合であり、その社員は労働組合の指示にしたがっただけで、路線が一時休止になった直接の原因を起こしたというわけではないからです。

つまり、ストライキをしたことで事業が縮小したとしても、参加した社員の解雇や自己都合による休職は不当だということです。

しかし、ストライキの期間中の休職は自己都合による休職という事になります。

派遣先で交代したまま解雇

派遣会社に所属している人が、派遣先企業であまり役に立たずに、派遣先企業が派遣会社に違う人の派遣をお願いして、元々いた人が解雇された場合はどうでしょうか。

つまり、解雇された人は元々予定していた分の期間の分の休業補償を受け取れるのかどうかという問題です。

このケースはややこしく、解雇される人が無断欠勤などの解雇の理由となり得るるような事をしてしまっていれば、休業補償は支払われません。

自己都合で辞めたいと申し出ていても休業補償はもらえません。

しかし、思ったような人材ではなかったということで、派遣先企業が派遣会社に違う人を派遣してくれと言っている話であれば、派遣会社が顧客の要望に答えられなかったという事になります。

つまり、派遣会社の人材の選定ミスという事になり、派遣会社の責任という事になります。

その結果、派遣会社は予定されていた期間の間の休業補償を最初に派遣した人に支払わなければならなくなりました。

まとめ

休職制度について紹介しました。

休職は、コロナやインフルエンザの流行が原因で一時的に業務を縮小する時などにも有効な手段です。

ウイルスの流行は一時的なものなので、優秀な社員を休職という事にさせ、休業補償も与えることで、流行が収まったあとはすぐに立て直す事が出来るでしょう。

また、社員としては退職すると退職金がもらえたり、失業手当が支給されたりするので、休職よりも退職してしまった方が得な場合もあります。

休職が良いのか、退職が良いのかは色々な面から検討して、自分にとってメリットのある方を選ぶようにしましょう。