月あたりの法定労働時間は、直接労働基準法に規定されているわけではないため、週の法定労働時間から計算する必要があります。よく聞かれる「177時間」という時間は、暦日数が31日の月の上限ですが、パターンは少ないため一覧表などで押さえたほうが早いでしょう。

一方で、残業代を計算する際に必要となる月の平均所定労働時間は、会社の年間カレンダーによって変動するため、毎年計算する必要があります。

この記事では、事業主や人事担当者の方向けに、月の法定労働時間の上限や平均所定労働時間の計算方法、労働時間のさまざまな例外規定について、わかりやすく解説します。

失敗しない勤怠管理システムの選び方とは?
・勤怠管理システム検討時に抑えるべき点を整理したい
・現状の勤怠業務で管理すべき点を網羅的に整理したい
・効率化(システム化)できる点を整理したい

勤怠管理システムの選定を効率化するなら IT Forward をご利用ください。

要件定義からできるSaaS選定比較サイト
勤怠管理システムを選定する
\無料でご利用できます/

月の法定労働時間

月の法定労働時間は、月の暦日数と週の法定労働時間から計算する必要があります。最も単純なのは暦日数が28日の2月(閏年以外)で、週の法定労働時間40時間が4週分であるため、「160時間」となります。

この月の法定労働時間が問題となるのは、主にフレックスタイム制であり、清算期間が1ヶ月以内のフレックスタイム制においては、総労働時間をこの枠内に収める必要があります。

法定労働時間とは

労働基準法においては1日の労働時間が8時間、週の労働時間が40時間までと定められており、これを「法定労働時間」と呼びます。この法定労働時間を超えて労働させるためには、「時間外労働に関する労使協定(36協定)」の締結・届出が必要となります。

また、36協定の締結の有無にかかわらず、法定労働時間を超える労働に対しては、割増率25%を加算した割増賃金を支払う必要があります。つまり、時間外労働をさせるためには36協定が必要であるが、36協定がないことを理由に割増賃金の支払を免れることはできません。

なお、詳しくはそれぞれ後述しますが、法定労働時間には特例対象事業場や変形労働時間制など、適用が緩和されるさまざまな例外規定があり、またそもそも法定労働時間が適用されない労働者も存在します。

月の法定労働時間早見表

月の法定労働時間は「週の法定労働時間 × 月の暦日数 ÷ 7」で算出できますが、パターンが限られるため以下の表で把握したほうが早いでしょう。

週の法定労働時間月の歴日数
28日29日30日31日
一般事業場(40時間)160.0165.7.171.4177.1
特例措置事業場(44時間)176.0182.2188.5194.8

月の残業時間の上限は45時間

月の残業時間には上限があり、たとえ36協定が締結されていても、月45時間までとされています。また、年間の残業時間についても360時間までという上限もあるため、毎月上限45時間まで残業可能というわけでもありません(毎月45時間だと年間540時間になる)。

この残業時間の上限には例外があり、業務の集中的増加により臨時的に上限を超えて労働させる必要がある場合は、特別条項を設けることで更なる時間外労働が可能となります。ただし、その場合でも以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 時間外労働の合計が年720時間以内(休日労働は含めず)
  • 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
  • 時間外労働と休⽇労働の合計が「2か⽉平均」「3か⽉平均」「4か⽉平均」「5か⽉平均」「6か⽉平均」のいずれも80時間以内
  • 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6ヶ月まで

特別条項を設けるための「臨時的に上限を超えて労働させる必要がある場合」は、かなり限定的に解釈されているため、単なる繁忙期や人手不足という理由のみでは認められる可能性は低いといえます。

36協定の上限や特別条項についての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。

>>【新制度対応】36協定で認められる残業時間は?|原則は月45時間

>>36協定で押さえておきたい違反にならない特別条項の定め方

要件定義からできるSaaS導入比較サイト
勤怠管理システムを調査する
\無料でご利用できます/

月の平均所定労働時間

残業代の計算には、まず基礎賃金となる1時間あたりの単価を算出する必要があります。基本的には当月の所定労働時間ではなく、年間の所定労働時間から算出する月の平均所定労働時間が用いられます。

この年間の所定労働時間は、年度ごとの会社の年間カレンダーによって変動するため、つどつど計算する必要があります。

所定労働時間とは

1日8時間・週40時間以内と決まっている法定労働時間の範囲内で、会社が独自に設定する労働時間を指します。例えば、所定労働時間を1日7時間・週35時間に設定している企業もあります。

所定労働時間を超えているものの、法定労働時間内に収まっている時間外労働を「所定外残業(法定内残業)」と呼びます。所定外残業に対しては、基本的に36協定の締結・届出も、割増賃金の支払も必要ありません。

ただし、所定労働時間を超えた時間に対しては、割増率を加算しない残業代の支払いは必要です。たとえば、所定労働時間7時間の事業場において2時間残業した場合は、法定内残業と法定外残業がそれぞれ1時間ずつ発生したことになり、以下のように計算します。

対象労働者の1時間あたりの基礎賃金は2,000円、割増率は25%とする。
法定内残業1時間分:1時間分の基礎賃金2,000円
法定外残業1時間分:1時間分の基礎賃金に割増率25%の時間外割増賃金を加算して2,500円

月の平均所定労働時間はなぜ必要?

かりに、残業が発生した月ごとの所定労働時間で残業代を計算してしまうと、暦日数によって時間単価が変動してしまいます。

具体的には、暦日数31日の月は28日の月より当然労働時間数が多くなるため、同じ基本給でも時間単価が低く計算されてしまうことになります。つまり、月によって時間あたりの労働の価値が変わらないよう、月の平均所定労働時間が用いられるのです。

月の平均所定労働時間の計算方法

計算式は以下になります。

月の平均所定労働時間 =(1年の暦日数 – 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12

通常年(うるう年以外)で、年間休日が120日、1日の所定労働時間8時間の場合で計算すると「163.3… = (365 – 120) × 8 ÷ 12」となり、月の平均所定労働時間は163.3時間となります。

1ヶ月単位の変形労働時間制の場合

「1ヶ月単位の変形労働時間制」の場合は、1ヶ月の労働時間の上限から年間総労働時間を算出して、月の平均所定労働時間を求める必要があります。

うるう年以外は28日の月が1回、30日の月が4回、31日の月が7回であるため、先に掲載した「月の法定労働時間早見表」より計算した年間の総労働時間は以下になります。

2,085.3 =(160.0 × 1)+(171.4 × 4)+(177.1 × 7)

この数値を12で割った「173.7」時間が、1ヶ月単位の変形労働時間制における月の平均所定労働時間ということになります。

>>要件定義からできるSaaS選定比較サイト:IT Forward

要件定義からできるSaaS選定比較サイト
勤怠管理システムを比較する
\無料ダウンロード/

法定労働時間に関するさまざまな例外規定

ここまでお伝えしてきた法定労働時間は、原則的な取り扱いであり、労働基準法には以下のように法定労働時間に関するさまざまな例外規定が存在します。

  • 特例措置対象事業場
  • 変形労働時間制
  • フレックスタイム制
  • 裁量労働制
  • 事業場外みなし労働時間制
  • 高度プロフェッショナル制度
  • 農業・水産業・畜産業・養蚕業の取扱い
  • 管理監督者
  • 機密事務取扱者
  • 監視又は断続的労働従事者

特例措置対象事業場|週の法定労働時間が44時間に緩和

常時10人未満の労働者を使用する以下の事業場では、週の法定労働時間が44時間に緩和されています。ただし、1日の法定労働時間は原則どおり8時間なので注意が必要です。

商業卸売業・小売業・理美容業・倉庫業・その他商業
映画・演劇映画の映写・演劇・その他興業事業
保健衛生業病院・診療所・社会福祉施設・浴場業・その他の保健衛生業
接客娯楽業旅館・飲食店・ゴルフ場・公園・遊園地・その他の接客娯楽業
特別処置対象事業場

変形労働時間制|一定期間内で労働時間をやりくり

一定の期間内で平均した労働時間が、法定労働時間に収まるように繁忙に合わせて労働時間を調整する制度です。

変形労働時間制には「1ヶ月単位」「1年単位」「1週間単位」「フレックスタイム制」の4種類がありますが、この内フレックスタイム制は異質であるため別で解説します。

「1ヶ月単位の変形労働時間制」は、1ヶ月以内の週の平均労働時間が40時間(あるいは44時間)以内に収まっていれば、特定の週に法定労働時間を超えても時間外労働と扱われない制度です。小売業など1か月間の中で繁忙期と閑散期の差が激しい業種や職種で用いられます。

「1年単位の変形労働時間制」は、1年以内の週の平均労働時間が40時間以内に収まっていれば、特定の日や週に法定労働時間を超えても時間外労働と扱われない制度です。年間のシーズン・オフシーズンがはっきりしている業態や会社で用いられます。

「1週間単位の非定型的変形労働時間制」は、1週間の労働時間40時間の範囲内で、各日の労働時間を10時間まで設定できる制度です。制度の対象になる事業場が非常に限定的であり、労使協定の締結・届出が必要であることから、現実にはほとんど採用されていません。

>>1ヶ月単位の変形労働時間制|気になる残業代と導入のポイント

>>1年単位の変形労働時間制|1ヶ月単位との違いと導入のポイント

>>1年単位の変形労働時間制における年間カレンダーの作り方

フレックスタイム制|労働者が労働時間を設定

「フレックスタイム制」は、変形労働時間制の一種に分類されますが、「労働時間の設定が労働者に委ねられる」という点において、他の3制度と明確に異なる制度です。

清算期間(フレックスタイム制の適用期間)内に設定された総労働時間の枠の中で、労働者自ら日々の始業時間・終業時間を決めます。日単位・週単位の法定労働時間は適用されず、清算期間ごとに総労働時間を超えた時間が時間外労働としてカウントされます。

フレックスタイム制において、必ず勤務すべき時間帯を「コアタイム」、労働者が自由に設定できる時間帯を「フレキシブルタイム」と呼びます。なお、コアタイムを設けないことも可能で、コアタイムなしのフレックスタイム制を「スーパーフレックス(フルフレックス)」と呼びます。

>>フレックスタイム制|メリットを活かしながらデメリットに対策を

>>フレックスタイム制│失敗しないコアタイムの決め方とは?

>>スーパーフレックスで柔軟な働き方を実現|失敗しない3つのポイント

裁量労働制|実労働時間と賃金を切り離す

裁量労働制は、実労働時間に関係なくあらかじめ労使協定で定めた「みなし労働時間」分だけ労働したものと扱う制度です。通常の労働時間で管理することが必ずしも適当でない専門的な業務や経営判断を伴う業務に従事する労働者に対して適用されます。

たとえばみなし労働時間を8時間と定めた場合は、実際の労働時間に関係なく、8時間労働したものとして取り扱われます。つまり、6時間で業務が終了しても賃金控除が行われず8時間分の給与が保障される反面、実労働時間が10時間に及んでも基本的に残業代は支払われないということになります。

裁量労働制には、対象業務、対象事業場、導入手順などの違いにより、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

専門業務型裁量労働制企画業務型裁量労働制
対象業務業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し具体的な指示をすることが困難な19の業務事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査、分析の業務であって、業務の性質上、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要があるため、業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し具体的な指示をしない業務
対象事業場対象業務のある事業場企業全体に影響を及ぼす事業運営上の重要な決定が行われる事業場
(本社や本店など事業運営上の重要事項を決定する事業場)
対象労働者対象業務に従事する労働者対象業務に従事する労働者であって、この制度によることに同意したもの
導入手順労使協定を締結し、所轄労働基準監督署に届け出る労使委員会の委員の5分の4以上の多数により議決された決議内容を所轄労働基準監督署長に届け出る
事後手続きなし決議が行われた日から起算して6か月以内ごとに1回、所轄労働基準監督署長へ定期報告を行う
専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の比較

>>4ステップでスッキリ分かる裁量労働制|ほかの制度とどう違う?

事業場外みなし労働時間制|労働時間を算定し難い事業場外労働に

裁量労働制と同じ「みなし労働時間制」の一種で、外回り営業職など事業場外の労働で労働時間の算定が難しい労働者に対して利用されます。

事業場外みなし労働時間制におけるみなし労働時間の設定は、大きく以下の2パターンがあります。

  • 「所定労働時間分」労働したものとみなす
  • 「通常その業務を遂行するのにかかる時間分」労働したものとみなす

いずれにしても、みなし労働時間が適用されるのはあくまでも事業場外の業務に対してのみであり、帰社後の内勤など労働時間の把握が可能な状態の労働時間は、実労働時間として別途管理する必要があります。

>>事業場外みなし労働時間制とは?要件や残業代について解説

高度プロフェッショナル制度|完全成果型の働き方

金融商品開発・薬品研究・企業コンサルティングなど、高度な専門知識及び職業能力を有する労働者について、労働時間という概念を取り払って、仕事の成果に対して賃金を支払うという完全成果報酬型制度です。

高度プロフェッショナル制度においては、時間外労働だけでなく、休日や深夜労働に関する規定が一切適用されないため、以下の業務に限って認められます。

  • 金融商品の開発業務
  • 金融商品のディーリング業務
  • 市場動向等のアナリスト業務
  • 事業コンサルティング業務
  • 研究開発業務

さらに、高度プロフェッショナル制度の対象者とするためには、上記対象業務に従事する労働者のうち、以下のいずれの要件も満たす必要があります。

  • 職務内容を職務記述書にて明らかにした上で、個別に合意していること
  • 年収が1,075万円以上であること

>>高度プロフェッショナル制度は裁量労働制とどう違う?

農業・水産業・畜産業・要産業|労働時間の適用外業種

農業・水産業・畜産業・養蚕業に従事する労働者は、天候などにより労働時間が変動し、画一的なコントロールができないため、労働時間・休憩・休日の規定が適用除外となります。

ただし、林業については、自然条件による不確定要素が比較的少ないため、適用除外とはなっていない点に注意が必要です。

管理監督者|経営者と一体的な立場にある労働者

人事権や労務管理などについて経営者と一体的な立場にある管理監督者は、労働時間・休憩・休日の規定が適用除外となります。

管理監督者に該当するかについては、「名ばかり管理職」とならないよう、職名や肩書きにとらわれず、職務内容・権限・待遇などの実態に即して判断しなければなりません。

なお、管理監督者であっても、深夜割増賃金や有給休暇、産前産後休暇などの規定は、一般の労働者と同じく適用されるため、注意が必要です。

>>管理監督者だから残業代なし」の危険性|名ばかり管理職かも?

機密事務取扱者|経営者・管理監督者と行動を共にする労働者

「機密事務取扱者」とは、単に「企業の秘密文書を扱う者」という意味ではありません。秘書など、その職務が経営者や管理監督者の活動と一体不可分であって、出退勤などについて厳格な制限を受けない者は、労働時間・休憩・休日の規定が適用除外となります。

監視又は断続的労働従事者|守衛や専属運転手など

監視業務従事者及び断続的労働従事者については、労働基準監督署長の許可を受けた場合に限り、労働時間・休憩・休日の規定が適用除外となります。

監視業務従事者とは、原則として一定部署における監視を本来の業務とし,常態として身体の疲労または精神的緊張の少ない労働者のことです。具体的には、守衛などが該当します。

交通関係の監視やプラント等の計器類の監視などは、身体への危険度及び精神的緊張が大きいため、監視業務従事者には該当しません。

また、断続的労働従事者とは、作業が長く継続することなく中断し、手待ち時間が実作業時間を上回るような労働者を指します。具体的には、専属の運転手やマンションの管理人などが該当します。

>>要件定義からできるSaaS選定比較サイト:IT Forward

要件定義からできるSaaS選定比較サイト
勤怠管理システムを比較する
\無料ダウンロード/

労働時間の管理は勤怠管理システムで

月の労働時間は、労働時間に関するさまざまな制度や勤務形態によって変動するため、アナログな管理方法ではヒューマンエラーや思わぬ違法状態を招く可能性が高くなります。

勤怠管理システムを導入することで、月の平均所定労働時間の計算やイレギュラーな労働時間の管理にも柔軟かつ簡単に対応可能となります。

「勤怠管理システムの選定・比較ナビ」をご利用いただくと、さまざまな労働時間制度に対応できる勤怠管理システムの中から、自社に最もマッチングするシステムを探し出せます。

失敗しない勤怠管理システムの選び方とは?
・勤怠管理システム検討時に抑えるべき点を整理したい
・現状の勤怠業務で管理すべき点を網羅的に整理したい
・効率化(システム化)できる点を整理したい

勤怠管理システムの選定を効率化するなら IT Forward をご利用ください。

要件定義からできるSaaS選定比較サイト
勤怠管理システムを選定する
\無料でご利用できます/