介護休暇と介護休業は、どちらも要介護状態にある家族の介護のために、従業員が休みを取得できる制度です。しかし、両者には取得要件や日数、手続きなどに違いがあります。事業主や人事担当者としては、介護休業給付金の支給要件と合わせて、制度の違いによる正しい運用を押さえておく必要があります。

この記事では、介護休暇と介護休業の違いやそれぞれの制度の実務上のポイントについて、わかりやすく解説します。

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介護休暇と介護休業の違い

まずは介護休暇と介護休業の違いを表にまとめましたので、ご覧ください。

  介護休暇 介護休業
対象労働者 労使協定で除外対象とした以外のすべての労働者(日雇い除く) 労使協定で除外対象とした以外のすべての労働者(日雇い除く)
ただし、有期契約労働者については、取得予定日から93日を経過後も6ヶ月以上雇用が継続する見込みがあること。
対象家族 父母、祖父母、兄弟姉妹、子(養子含む)、孫、配偶者(事実婚含む)、配偶者の父母
取得日数 1年度につき5日(対象家族が2人以上の場合は10日) 対象家族1人につき93日まで(3回まで分割取得可能)
取得単位 1日、時間単位 1日単位
賃金・給付金 有給・無給は会社の規定による 有給・無給は会社の規定による
要件を満たすことで、介護休業給付金の受給が可能
申請方法 当日の申請も可能で、口頭・書面は会社の規定による 原則、書面にて2周間前までに申請

対象家族以外は、さまざまな違いがありますが、両者ともに事業主の義務であり、原則的に労働者からの申し出を断ることはできません。

介護休暇とは

要介護状態になった家族を介護・世話をするために、労働者が事業主に申し出ることによって取得できる休暇です。

(介護休暇の申出)
第十六条の五 要介護状態にある対象家族の介護その他の厚生労働省令で定める世話を行う労働者は、その事業主に申し出ることにより、一の年度において五労働日(要介護状態にある対象家族が二人以上の場合にあっては、十労働日)を限度として、当該世話を行うための休暇(以下「介護休暇」という。)を取得することができる。
(第2項以下略)

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第16条の5|法令検索 e-Gov

「時間単位でも取得可能」「当日の申し出も認められる」などという特徴から、通院の付き添いや介護サービスの手続き・打ち合わせなどの短期利用での目的を想定しています。

介護休暇の取得要件

基本的に、要介護状態の家族を介護する労働者(日雇い労働者除く)であれば、パート・アルバイト、派遣社員など、雇用形態や勤務形態に関わらず取得可能です。

ただし、労使協定を締結することにより、以下の労働者を介護休暇の取得対象外とすることが可能です。

  1. 入社6か月未満の労働者
  2. 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

なお、育児・介護休業法で言う「要介護状態」とは、「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」とされています。そのため、必ずしも介護保険法の要介護認定を受けている必要はありません。

介護休暇の取得日数

取得可能日数は、1年度につき5日までであり、介護対象家族が2人以上の場合は1年度10日まで取得可能です。なお、年度については、会社が特別に事業年度を定めている場合はそれに従い、特に定めのない場合は4月1日から翌年3月31日までとなります。

また、2021年1月より、それまで1日単位もしくは半日単位のみ認められていた介護休暇が、時間単位で取得できるようになっています。

介護休暇の申請手続き

介護休暇は口頭でも申請可能となっています。そのため、様式が決まっているわけではなく、会社所定の書面がある場合はそれに従い、従業員に必要事項を記入の上提出してもらいます。

なお、対象家族の要介護状態を証明する書類として、医師の診断書の添付を義務づけることは望ましくないとされています。この点は、介護休業の場合も同様です。

また、基本的に当日の申請でも認められる点にも注意が必要です。

介護休暇中は有給?無給?

介護休暇を有給とするか無給とするかについては、法に規定がないため、会社が任意に決めることができます。一般的には、「ノーワーク・ノーペイの原則」に則って、無給とすることが多いようです。

ただし、既に就業規則等で「介護休暇は有給とする」定めがある場合は、当然支給が必要であり、法に規定がないことを理由に支払いを拒否することはできません。

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介護休業とは

要介護状態になった家族を介護・世話をする労働者が、事業主に申し出ることにより、要介護者の介護のために取得できる休業制度です。

「取得日数が比較的長い」「休業中は給付金の対象となる」などの特徴から、介護施設の受け入れ先や介護方針が決まるまでの長期休業を想定した制度です。長期休業を可能とすることで、介護離職の防止を目的としています。

介護休業の取得要件|2022年4月法改正あり

基本的に、要介護状態の家族を介護する労働者(日雇い労働者除く)であれば、パート・アルバイトや派遣社員など、雇用形態や勤務形態に関わらず取得可能です。

ただし、有期契約労働者については、取得予定日から93日を経過後も、6ヶ月以上雇用が継続する見込みがあることが必要です。なお、以前は「同一事業主に1年以上継続雇用されていること」という要件もありましたが、2022年4月1日より廃止されています。

また、労使協定を締結することにより、以下の労働者を介護休業の対象外とすることが可能です。

  • 入社1年未満の労働者
  • 申出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

対象家族の範囲や、「要介護状態」の定義は介護休暇と同じであるため、そちらを参照してください。

介護休業の取得日数

対象家族1人につき、通算93日まで、3回まで分割して取得可能です。日数及び回数は、対象家族が複数いる場合については、それぞれ別にカウントすることになっています。

また、「93労働日」ではなく、暦日で93日であることにも注意が必要です。

介護休業の申請手続き

休業が長期間に及ぶことが多いため、原則、書面にて2周間前までに申請が必要となります。FAXや電子メールによる申請も可能ですが、その場合でも紙に印刷できる状態であることが必要です。

取得予定日まで2週間を切ったタイミングでの申請については、会社は申し出日から2週間の範囲で開始日を指定できます。ただし、申請日の経過を理由に申請そのものを却下することは認められません。

介護休業中は有給?無給?

介護休業を有給とするか無給とするかについては、法に規定がないため、会社が任意に決めることができます。一般的には、介護休暇と同様に「ノーワーク・ノーペイの原則」に則って、無給とすることが多いようです。

ただし、介護休業の場合は休業が長期に及ぶことが多いため、収入保障のために一定要件のもと介護休業給付金が支給されます。

介護休業給付金とは

介護休業中の従業員が生活への不安から離職することを防止するため、雇用保険から支給される給付金です。支給要件は以下のとおりです。

要件補足解説
雇用保険の被保険者であること介護休業給付金は雇用保険から支給されます。
要介護の家族の介護のための休業であること対象家族の範囲は、介護休業の取得要件と同じです。
介護休業前の2年間に、11日以上就業した月が12ヶ月以上あること11日以上就業した月が12ヶ月ない場合でも、賃金支払基礎となった時間数が80時間以上の月があれば1ヶ月として算定します。
介護休業期間中の1ヶ月単位で、休業開始前の賃金の80%以上が支払われていないこと会社から、賃金月額(休業開始時賃金日額×支給日数)の8割以上の賃金の支払いがあれば、介護休業給付金は支給されません。
1支給単位(原則30日)あたりの就業日数が10日以下であること介護休業終了日の属する1ヶ月未満の支給単位期間については、これに加えて全日休業している日が1日以上であることも必要です。

支給額は以下のとおりです。

休業開始時賃金日額 × 支給日数(原則30日)× 67%

休業開始時賃金日額とは、介護休業開始前6か月間の総賃金額を180で割った金額です。会社から休業中の賃金が支払われる場合は、介護休業給付金と賃金の合計額が、休業開始時賃金日額の80%を超えないように減額調整されます。

なお、介護休業給付金は介護休業の終了日から2ヶ月後の末日までに申請を行うことになるため、実際の休業期間中に受給できるわけではありません。この点については、誤解が無いよう従業員に事前に説明しておきましょう。

介護休業給付金の申請に必要な書類は以下のとおりで、一般的には従業員から書類と合わせて会社が管轄ハローワークに対して申請することになります。

  • 介護休業給付金支給申請書(マイナンバーの記載が必要)
  • 介護休業申出書
  • 介護対象家族の氏名、性別、生年月日、被保険者との関係が証明できる公的な書類(住民票記載事項証明書や戸籍謄本)
  • 休業開始時賃金月額証明書
  • 休業開始時賃金月額証明書の内容が全て確認できる賃金台帳と出勤簿
  • 支給申請期間の賃金台帳と出勤簿

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勤怠管理システム導入で、介護離職を防止

介護休暇は突発的な申請になることも多く、時間単位の取得も可能となったことから、管理が煩雑化しています。また、分割取得可能な介護休業に合わせ、取得日数を正確に管理しなければなりません。

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