事業場外みなし労働時間制を聞いたことはあっても、どのような制度で、どんな職種が対象なのか、詳しくは知らない方も多いでしょう。

この記事では、事業場外みなし労働時間制について徹底解説。残業時間や残業代はどうなるのか、どのような職種が対象なのか、またどのような注意点があるのかを紹介します。

事業場外みなし労働時間制とは

事業場外みなし労働時間制とは、外回りの営業や地方への出張など、管理者が近くにおらず正確な勤務時間を把握することが難しい場合に使われる制度です。

管理者がいなくても綿密にスケジュールが決まっている場合や、イベントの参加などで勤務時間の算出が困難ではない場合などには適用できません。

それ以外にも携帯電話などで細かく指示を受けている場合でも適用はできません。

あらかじめ決めた時間分、働いたとみなす

事業場外みなし労働時間制とは、管理者のいる事業所の外で、あらかじめ決めた時間分働いたとみなす制度です。

外回りの営業や単独での出張など、正確な労働時間を把握することが困難なケース。そのような時に、あらかじめ決めておいた時間分、働いたとみなされる制度です。

会社の外で働く際に適用される

事業場外みなし労働時間制とは、会社の外など管理者のいないところで働く際に適用される制度です。

管理者も含む多くの社員が共に働くオフィス内での仕事では、適用できません。

オフィス内の仕事でみなし労働時間制を採用するには、事業場外みなし労働時間制ではなく、『裁量労働制』という働き方になります。

裁量労働制はすべての職種に適用されるわけではなく、ある特定の仕事に限って適用され、単純労働などでは適用することができません。

みなし労働時間制の種類

事業場外みなし労働時間制の条件

事業場外みなし労働時間制を採用するには、どのような条件があるのでしょうか。オフィス外で働いているすべての仕事に適用されるわけではありませんので、注意が必要です。

【条件1】会社の外で業務に従事していること

事業場外みなし労働時間制の適用条件は、会社の外で業務に従事していることです。

営業の外回りや出張などで会社の外で勤務している場合は、自己申告で勤務時間を申告することもありますが、周囲に誰もいないので確認できません。

このような働き方をする従業員に対して適用できる制度が、事業場外みなし労働時間制です。

【条件2】労働時間の算定が困難であること

もう一つの適用条件は、労働時間の算定が困難であることです。

事業場の外で働いている時であっても、管理者が同行していたり綿密にスケジュールが決まっていたりすると、事業場外みなし労働時間制は適用できません。

オフィス外で管理者と離れて働いていても、携帯電話などで逐一連絡をとり、細かく指示を受けながら働く場合は、適用できません。

昨今問題となるのは、携帯電話やスマートフォンなどを使用して、定期的な連絡を義務付けたり、クラウドやアプリを利用してスケジュール管理ができたりする場合。このような場合は、労働時間の算出が可能となるので、この制度は利用できません。

具体例

事業場外みなし労働時間制は、外回りの営業に適用されることが主流でした。他には、単独の地方出張や記者の取材なども、適用されてきました。

しかし昨今、電子機器の持ち出しなどでオフィス外にいても、労働時間管理がしやすくなっていることから、裁判になると営業職でも認められないケースが出てきています。その他、バスの運転手なども、事業場外みなし労働制を採用していた企業を訴えた従業員が勝訴した事例があります。

事業場外みなし労働時間制の「労働時間の算定が困難な際に適用する」という条件を満たすことは、年々厳しくなってきていることがわかります。

事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制の対象

事業場外みなし労働時間制の対象はどのような社員が対象なのでしょうか。

事業場外みなし労働時間制では、働いている環境により対象となるか決まるため、職種で対象が決まることはありません。

特定の職種が決まっているわけではない

事業場外みなし労働時間制の対象は、”事業場外の勤務であること“と、”労働時間の算定が困難であること“の条件を満たせば、どのような職種でも対象となります。

他のみなし労働時間制である裁量労働制と違って、業種が限定されていません。

しかし、事業場外で管理者のいない中で勤務する職種となるとある程度限られてくるので、外回りの営業や取材に向かう記者などが対象となるでしょう。

具体的に事業場外みなし労働時間制の対象は、労働基準局長の通知では以下のようになっています。

事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定が困難な業務であること。したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合は、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。1. 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合2. 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合3. 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場にもどる場合

この通知は30年以上前に出されたもので、特に2の項目は、全員が携帯電話を持っている現代においてはこの条件を満たすのは非常に困難です。

事業場外みなし労働時間制の労働時間

ここまでの解説で、そもそも事業場外みなし労働制とは何なのか?という基本はお分かりいただけたと思います。

ここからは、事業場外みなし労働時間制の労働時間の考え方について見ていきます。事業場外みなし労働時間制の労働時間はどのように決めれば良いのでしょうか。

みなし労働時間を決める際の注意事項などをご紹介します。

1日の労働時間を何時間とみなすか

最初に決めなければならないのが、1日の労働時間を何時間とみなすかです。

通常の正社員の場合、8時間とする場合が多いでしょう。1日の労働時間は何時間とみなすかは、他の対象にならない社員と同じ時間にする会社が多いです。

ただし、外回りの営業で事業場外みなし労働時間制を導入する場合、外回りの訪問件数が少ない日はみなし労働時間を少なくすることもできます。

例えば、午前中の3時間だけ外回りの営業をして、昼休みを挟んで帰社後は社内で他の業務をするような働き方も可能です。

所定労働時間と通常必要時間

通常必要時間とは、与えられた業務を遂行するのに、一般的に必要となる時間のこと。事業場外みなし労働時間制を導入する際は、通常必要時間を考慮して所定労働時間を決めます。

所定労働時間は、通常必要時間となるべく近づけなければなりません。

通常必要時間に対して所定労働時間が多すぎると、会社としては多めに人件費がかかってしまうことになります。

一方で通常必要時間に対して所定労働時間が少なすぎると、労働基準法による問題となります。その場合、通常必要時間に合わせて、所定労働時間を増やさなければなりません。

事業場外みなし労働時間制は、基本的には何時間働いても残業扱いになりません。しかし所定労働時間が、1日8時間・週40時間を超えると残業代が発生します。

社員と会社の双方のためにも、なるべく所定労働時間と通常必要時間を近づけるようにしましょう。

職種ごとや月ごとに定めることも可能

事業場外みなし労働時間制度は、職種や月ごとに定めることも可能です。

例えば外回りの営業の3時間だけ事業場外みなし労働時間制度を導入し、地方へ出張した場合は1日8時間とすることもできます。

また、会社によってはある月が繁忙期で、所定労働時間が増えてしまうこともあるでしょう。

そのような場合でも、繁忙期の月だけ所定労働時間を多めに設定して、事業場外みなし労働時間制度を導入することが可能です。

事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制の残業

事業場外みなし労働時間制は、あらかじめ決めておいた時間分働いたとみなす制度です。

そのため、みなし労働時間が8時間の場合、6時間働いても10時間働いても、会社が指定した業務内容をこなしていれば、8時間働いたとみなされます。

しかし、事業場外みなし労働時間制でも残業が発生する場合があります。

残業代が発生するケース

事業場外みなし労働時間制で残業が発生するケースは、2つあります。

1つは、外回りの営業など事業場外での仕事が終わった後に、事業所内で仕事をするケースです。

このケースの場合は、外回りのみなし労働時間と事業所内での労働時間を合わせて8時間を超えてしまうと残業代が発生します。

人件費を抑えるために残業代を発生させたくない会社は、外回りに使ったみなし労働時間と、会社内での勤務を合わせた時間が、1日8時間・週40時間を超えないように注意しましょう。

もう一つのケースは、通常10時間かかるようなことを事業場外みなし労働時間制とする場合です。

この場合、通常10時間かかるので、みなし労働時間を8時間にはできません。その結果10時間のみなし労働時間となり、2時間分は残業代が発生することになります。

ただし、みなし労働時間が10時間のところ、12時間かかったとしても4時間分の残業は発生せず2時間分だけの残業代となります。

休日労働や深夜労働の場合

事業場外みなし労働時間制でも、休日出勤や深夜労働の場合は手当が発生します。

事業場外みなし労働時間制では、所定労働時間が8時間以内だと残業代は発生しません。しかし、残業した結果、22時を超えてしまうと深夜労働となり深夜労働手当が発生します。

また、深夜労働となるのは午前5時までなので、朝早くから勤務した場合であっても深夜労働の割増賃金が発生する場合があります。

「事業場外みなし労働時間制で働いている人は、22時までに仕事を終わらせること」という内容を、就業規則に記載しておくと、慢性的な深夜労働を防げます。

事業場外みなし労働時間制の注意点

事業場外みなし労働時間制には、どのような注意点があるのでしょうか。

職種では事業場外みなし労働時間制の対象となっていても、社員によっては適用できない場合もあります。

未成年者や妊婦に関する規則

妊婦や未成年に対しては、事業場外みなし労働時間制度は利用できません。妊婦に限らず産後1年を経過していない従業員も同様です。

また、妊娠中や産後1年を経過していない従業員から請求があれば、深夜労働や時間外労働や休日出勤はさせることができません。

未成年者は事業場外みなし労働時間制のほか、深夜労働も禁止されています。未成年は、入社する際に、事業場外みなし労働時間制を適用しないように注意していると思います。

注意が必要なのは、これまで事業場外みなし労働時間制で勤務していた従業員が妊娠した場合です。もし普段から事業場外みなし労働時間制で働いている社員が妊娠してした場合、対象から外さなければならないので注意が必要です。

事業場外みなし労働時間制を導入する際は、妊娠が発覚したら会社へ報告する必要があることを、周知徹底しましょう。

就業規則への反映

事業場外みなし労働時間制度導入する場合は、就業規則で規定を設けておく必要があります。

勤務時間の算出が困難な日の労働時間を、所定労働時間とみなす行為は、労働条件に関する取り決めとなります。

つまり労働契約に関連するので、就業規則か労働契約書にその取り決めを記載する必要があります。

労使協定の締結

事業場外みなし労働を導入するにあたっては、法定労働時間を超えない範囲のみなし労働時間の場合は、労使協定の締結と届出の義務はありません。

ただし、所定労働時間が法定労働時間を超える場合は、労使協定を結び届出をしなければなりません。

所定労働時間と通常必要時間を加味し、1日8時間・週40時間を超える場合は、労使協定の締結を忘れずに行ないます。

ポイント

まとめ

今回は、事業場外みなし労働制度を紹介しました。事業場外みなし労働時間制は、昭和62年にできた制度なので、やや古い制度で時代にそぐわない部分もあります。

当時は電子機器やインターネットも発達しておらず、社員が事業所を離れている場合の労働時間の算出が困難でした。しかし現在ではITが発達し、オフィスの外にいても、勤怠管理システムなどを使用することで、従業員の労働時間を把握しやすくなっています。

システムを導入していない企業では、自己申告で勤務時間を報告している会社もあるでしょう。

自己申告では正確な労働時間が確認できないので、みなし労働時間で給料を支払った方が会社側の管理はラクになるかもしれません。

しかし、事業場外みなし労働時間制によって、違法な長時間労働を強いられたと従業員が訴えを起こす事例も発生しているため、安易な導入はリスクが伴います。

従業員の給料を事業場外みなし労働時間制にするか悩んでいる事業者の皆様は、今一度「本当に労働時間の把握が困難なのか?」を慎重に検討することをおすすめします。