残業には「法定内残業」と「法定外残業」の2種類があり、割増賃金の支払いに違いが出てきます。また、変形労働時間制やフレックスタイム制を採用している場合は、法定内残業と法定外残業の扱いが異なってきます。

この記事では、事業主や人事担当者の方向けに、法定内残業と法定外残業の違い、さまざまな勤務形態における取り扱いのポイントを、わかりやすく解説します。

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「法定内残業」「法定外残業」とは

両者の違いを理解するには、まず法定労働時間と所定労働時間の違いを押さえる必要があります。

「法定労働時間」「所定労働時間」とは

法定労働時間は、労働基準法に定められた「1日8時間・週40時間」という労働時間の原則的な上限です。基本的に法定労働時間を超えて労働させるためには、「時間外労働に関する労使協定(36協定)」の締結・届出が必要となります。

一方で所定労働時間は、会社が就業規則や個別の雇用契約書等で定める労働時間で、基本的には法定労働時間の範囲内で設定することになります。

法定内残業とは|割増賃金は不要

所定労働時間を超えているものの、法定労働時間の範囲内に収まる残業を指し、所定外残業とも呼ばれます。

たとえば、所定労働時間9:00~17:00(休憩12:00~13:00)の7時間の事業場において、19時まで残業が発生した場合、法定労働時間8時間を超えない17:00~18:00の1時間分が法定内残業として扱われます。

法定内残業の場合、時間外割増賃金(125%)を支払う必要はなく、1時間分の基本賃金(100]%)のみの支払いとなります。なお、「法定労働時間を超えない限り、残業代は支給しない」のような規定は違法であり、無効となります。

法定外残業とは|割増賃金が発生

1日8時間、週40時間を超えた部分の残業を指します。法定外残業に対しては、割増率25%を加算した割増賃金の支払いが必要となります。

先程の例の場合、法定労働時間8時間を超えた18:00~19:00の1時間分が法定外残業となり、1時間分の時間外割増賃金(125%)が発生します。

法定内残業と法定外残業は週単位でも使い分ける

所定労働時間7時間・週休2日(土日休み)の事業場の場合、週の所定労働時間は35時間です。この事業場において、土曜日も7時間の労働が発生したとします。

この場合、日単位でみると1日8時間を超える日は無く、法定労働時間内に収まっています。一方で週単位でみると合計労働時間は42時間に達し、週の法定労働時間40時間を超過しています。よって、5時間分を法定内残業、2時間分を法定外残業として計算することになります。

法定内残業に割増賃金を支払っていた場合は?

賃金の支払いに関する事項は、就業規則等に明記する必要があり、残業代の支払いについても当然規定しておく必要があります。

そして、就業規則において「法定内残業にも割増賃金を支払う」旨の規定がある場合は、規定どおり法定内残業に対しても割増賃金を支払わなくてはなりません。

「法で必要とされていないから」と、一方的に法定内残業の割増賃金を廃止することは、法に合わせて労働条件を引き下げる不利益変更に当たるため、認められません。どうしても廃止せざるを得ない場合は、合理性や労働者の合意が必要となってきます。

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勤務形態別の残業のポイント

変形労働時間制や裁量労働制においては、残業時間について通常の勤務形態とは違った取り扱いとなるため、注意が必要です。

変形労働時間制における残業代の計算

変形労働時間制のうち、「1ヶ月単位の変形労働時間制」「1年単位の変形労働時間制」においては、「1日」「1週」「期間通算」の3ステップで残業時間を計算する必要があります。

ステップ1:1日単位で残業時間をカウント

8時間を超える所定労働時間を定めた日は、「法定内残業」は発生せず、所定労働時間を超えた分が「法定外残業」となります。たとえば、所定労働時間9時間の日に10時間労働した場合は、1時間の法定外残業が発生します。

8時間以下の所定労働時間を定めた日は、原則どおり所定労働時間を超え8時間に達するまでの時間が「法定内残業」、8時間を超えた分が「法定外残業」となります。

ステップ2:1週間単位で残業時間をカウント

40時間(1ヶ月単位の場合は業種によって44時間、以下同様)を超える所定労働時間を定めた週は、「法定内残業」は発生せず、所定労働時間を超えた分が「法定外残業」となります。

たとえば、所定労働時間42時間の週に45時間労働した場合は、3時間の法定外残業が発生したことになります。ただし、ステップ1で日単位でカウントした時間は、重複してしまうため除外します。

40時間以下の所定労働時間を定めた週は、原則どおり所定労働時間を超え40時間に達するまでの時間が「法定内残業」、40時間を超えた分が「法定外残業」となります。

ステップ3:「期間通算」で残業時間をカウント

期間内の総枠の上限である労働時間(期間の暦日数によって変動)を超えた部分が「法定外残業」となります。ただし、ステップ1及びステップ2でカウントした時間は、重複してしまうため除外します。

フレックスタイム制における残業代の計算

フレックスタイム制においては、基本的に「清算期間」と呼ばれる、フレックスタイム制の対象期間トータルで労働時間を考えるため、「1日単位」「1週単位」では残業時間をカウントしません。

清算期間が1ヶ月以内の場合

期間内の総所定労働時間を超え、総枠の上限に達するまでの時間が「法定内残業」、総枠の上限を超えた時間が「法定外残業」となります。なお、「総枠の上限」となる時間数は、期間の暦日数によって変動し、たとえば31日の場合は177.1時間が総枠の上限となります。

清算期間が1ヶ月を超え3ヶ月以内の場合

まず、1ヶ月あたりで週平均50時間を超過した時間を「法定外残業」としてカウントします(これをAとします)。続いて「1ヶ月以内」の場合と同様に、総枠の上限を超えた時間をカウントし、そこから重複するAの時間を差し引いた時間が「法定外残業」となります。

裁量労働制における残業代計算

裁量労働制は実労働時間に関係なく、労働時間を一定とみなす制度であるため、設定したみなし労働時間が法定労働時間以内であれば、法定内・法定外ともに残業は生じません。

ただし、そもそも設定したみなし労働時間が法定労働時間8時間を超えている場合は、実労働時間に関係なく超えている部分が「法定外残業」となります。この場合も、法定内残業は生じません。

たとえば、みなし労働時間を7時間と設定した場合、実労働時間が9時間であっても、7時間の労働として扱われます。一方で、みなし労働時間を9時間と設定した場合は、実労働時間に関係なく常に1時間の法定外残業が生じることになります。

なお、あくまでも「労働時間」のみをみなす制度であるため、法定休日や深夜に労働が発生した場合は、それぞれ休日割増賃金、深夜割増賃金が必要となります。

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「法定内残業」「法定外残業」の管理は勤怠管理システムで楽に

法定内残業と法定外残業はあいまいになりがちです。法定内残業に割増賃金を支払ったケースはまだしも、法定外残業に割増賃金を支払っていないケースは、重大な違法状態で労使トラブルに発展します。

勤怠管理システムを導入することで、両者の違いによる計算は自動化され、また多様な勤務形態にもフレキシブルに対応できます。

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