失効年休積立休暇という制度が注目を集めていますが、どんな制度かご存知でしょうか。

普段忙しくてなかなか有給を消化しきれない労働者が多い中、療養など長期でお休みが必要になった際やボランティアや勉強などの目的で有給を消化できるようにと、消滅する有給休暇を積立てる制度を導入する企業が増えています。

この記事では、失効年休積立休暇の制度内容や上限日数などを、わかりやすく解説します。

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積立有給休暇とは

積立有給休暇とは、毎年権利が失効する年次有給休暇を積立てておく制度のことです。

年次有給休暇は、半年以上勤務した社員だと誰にでも与えられる休暇で、週休2日制の正社員であれば最初の半年で年間10日間の有給休暇の権利が与えられます。

その後1年ごとに1日ずつ有給休暇の日数が増えていき、最大で年間20日まで有給休暇の権利が与えられます。

しかし、年次有給休暇は付与から2年までしか繰り越すことができずに失効してしまいます。この失効して権利がなくなってしまうはずの有給休暇を、ストックしておき必要なときに使えるようにする制度です。

>>有給休暇は2年で時効消滅|繰越分の計算も解説

積立保存休暇・ストック休暇 

年次有給休暇は法律上、必ず付与される労働者の権利です。

しかしながら、法律で定められた有給休暇は、取得してから2年で消滅。使わなければ有給休暇はなくなってしまいます。この失効してしまうはずの有給休暇を、企業の独自の制度として積み立てるもの。

企業独自の制度なので、企業によって呼び方はさまざまです。

例えば、失効年休積立休暇、積立休暇(積休)、積立保存休暇、ストック休暇、ライフサポート休暇など、企業の目的に合わせてさまざまな呼び方があります。

積立有給休暇の導入状況

積立有給休暇の導入状況は、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると平成25年の時点で23.4%とされています。

まだそれほど多くの企業が導入している制度ではありませんが、魅力的な福利厚生として徐々に広がってきています。

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法定の有給休暇と積立有給休暇の違い

法律で定められている年次有給休暇と積立有給休暇には、どのような違いがあるのでしょうか。大きな違いは法律で決められているかどうかです。

有給は法律上の規制がある

法定休暇である年次有給休暇には法律上の規制があり、会社は従業員に有給休暇の取得を申し込まれると拒否することはできません。

しかし会社には時季変更権があり、有給休暇を取得しようとしている日が繁忙期であり、人手が足りない時期であれば、申請した従業員にお願いして有給休暇の日を変更してもらうこともできます。

法定有給休暇は時季を変更してもらうようにお願いはできますが、拒否はできず、どこかのタイミングで必ず与えなければなりません。

一方で、積立有給休暇の制度は、本来2年で失効してしまうはずの有給休暇を積み立てておく制度なので、取得条件などのルールは会社が独自に決めることができます。

積立有給休暇の用途は企業次第 

積立有給休暇をどのような用途に使うかは、企業が自由に決めることができます。

自身の怪我や病気のときのための私傷病休暇や、家族の看護や育児などに使われるケースもあります。

法律的に認められている法定休暇の中に看護休暇や育児休業がありますが、それぞれ子供の年齢に制限があります。

例えば小学校に上がった子供の病院の付き添いのために、法定休暇の看護休暇は使うことができません。

病院の送迎などは、一人で動けないほどの重症だと法定休暇の介護休暇を使うことができますが、軽い怪我による送迎では介護休暇は使えません。

そのようなシーンで積立有給休暇を使うのもいいでしょう。ほかにも、子供の学校の参観日やPTAの行事の参加などに使うことができる企業もあります。

また、最近では不妊治療の支援として積立休暇を使用できる企業もあります。

不妊治療の支援には2種類あり、治療代を支援するパターンと、通院の時間を有給休暇の時間単位の取得とするパターンがあります。

現在は健康保険の対象外であり、治療費は100万円近くになる場合があります。

治療費は、通院回数や治療内容によって差があり、治療代の支援は金額の設定が難しいため、通院する時間を確保しやすいように積立有給休暇で支援する方針の企業も出てきています。

積立有給休暇の給料

積立有給休暇を取得した日の賃金をいくらにするかは、会社が自由に決めることができます。

例えば、「積立有給休暇を取得した日は、日額5000円支給」などと、一律で金額を決めることも可能です。

積立有給休暇は法律による決まりのない法定外休暇(特別休暇)なので、賃金やルールをどうするかは会社次第です。

しかし無給扱いの休暇にしてしまうと、「有給休暇をストックして使える」という目的から外れてしまうので、全額でないにしろ給料を支払う企業が多いです。

積立有給休暇
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積立有給休暇のメリット・デメリット

取得してから2年経てば失効してしまう有給休暇を積み立てておく積立有給休暇。そのメリットとデメリットを整理しましょう。

メリット

まずメリットは、会社の福利厚生を充実させられる点です。

会社の福利厚生を充実させるためには、リフレッシュ休暇などの特別休暇や出産祝い金や皆勤手当などの各種手当を付与することが多いです。

夏季休暇などの比較的長期の休暇を有給扱いで取得できるといった福利厚生を導入する企業もあります。

ところが、そもそも年次有給休暇を取得した時に支給される手当は、会社が従業員に支払うべき給料であり、毎年計上する人件費の中に含まれているはずの予算です。

したがって、お金のかかる手当を新設したり、有給扱いの特別休暇を導入したりするよりも、会社にとっては元々考慮している予算内で、福利厚生を新しく提供できることになります。

福利厚生が充実すればホワイト企業としてイメージアップ、求人広告での見栄えが良くなる、従業員のワークライフバランスが促進できる、優秀な人材の定着や離職防止といった効果が期待できます。

デメリット

デメリットは、これまで年次有給休暇の消化率が低かった企業の人件費が増加します。

そのほか、従業員数が多い企業は、一人ひとりの従業員が積立有給休暇を何日持っているのか、その期限はいつなのか…などの管理が煩雑になります。

法定休暇の年次有給休暇の残数や積立有給休暇の残数を区別して管理しなければなりません。場合によっては、勤怠管理システムの導入をおすすめします。

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積立有給休暇の就業規則

法定外休暇(特別休暇)を導入する際は、就業規則へ取得条件などをあらかじめ記載する必要があります。積立有給休暇も法定外休暇なので、積立有給休暇を取得する際のルールを就業規則へ明記しましょう。

就業規則に記載する項目

就業規則に記載する項目は、積立有給休暇を取得した場合の給与額・積立て可能な最大日数・取得するための条件などを記載します。

注意点は、いつでも取得できるのかを考えることです。

通常の年次有給休暇であれば、会社側社員から有給休暇取得の申請があれば法律で取得させなければいけないことが義務付けられていました。

しかし積立有給休暇制度は、法定外休暇なので会社独自の取得の条件を決めることもできます。

例えば毎年12月が繁忙期の会社の場合は、12月の取得を禁止すること、週末が忙しい会社は金曜日と土曜日の取得を禁止することも可能です。

もしも、従業員数が少ない会社など、繁忙期にまとめて積立有給をとる人がいると、通常業務に支障がある場合は、条件にあらかじめ記載しておきましょう。

用途を限定する場合は明記

積立有給休暇を取得する用途を限定することも可能。用途を限定する場合は就業規則に明記しておかなければなりません。

例えば会社が認めるボランティア活動への参加や、資格取得のための講習会へ出席するための利用などです。

地域貢献の清掃活動や、発展途上国で植林など国際貢献をしている企業もあり、従業員の視野を広げることや企業のイメージアップにつながるケースもあります。

他にも、会社が認める自己啓発などの目的に限定して積立休暇を利用できる企業もあります。「勤続2年以上の社員を対象」などと、対象者を限定することも可能なので、目的に合わせてさまざまな活用方法があるでしょう。

このような人材育成や地域貢献などの利用に限定して、従業員の成長を促す企業もあれば、通常の有給休暇と同じように旅行や趣味など自由に休める制度として積立有給休暇を位置付ける企業もあります。

積立てることができる日数の上限

積立有給休暇は、積み立てることができる日数の上限を決めておくことができます。会社独自の福利厚生なので、少なめに設定することもできれば、無制限に積立てることもできます。

年間積立日数の上限

年間の積立日数に、上限を設ける場合の考え方を見ていきましょう。

例えば、年次有給休暇とは別に、余った有給休暇を10日間繰り越せるとします。この場合、年次有給休暇と合わせて、1年間で20日以上のお休みを取得できることになります。

年間積立日数に上限を設けておくことで、人件費の上限も予測することができ、溜め込まずに早めに使うように促すことも可能です。

無制限に積立可能とすると、何ヶ月も会社を有給休暇で休むことが可能になってしまいます。積立有給休暇をたくさんストックした社員が一斉に取得した場合、業務に支障が出てしまうリスクも。日数上限を設けない場合は、取得条件をしっかり精査することをおすすめします。

総積立日数の上限

期間を限定せずに、積み立てる総量に上限を設けることもできます。

例えば、上限30日とすると、従業員同士が協力しあって休暇を取得すれば、そこまで大きな負担は発生しにくいでしょう。療養などで使用したり退職時にまとめて取得したりする場合を想定しても、1ヶ月なら許容範囲と考える企業が多いようです。

総積立日数に加えて「連続して取得する場合は、最大何日まで利用可能」と、連続取得に制限を設けることも可能です。

事例をみる限りは、大体30日〜60日を上限としている企業が多いので、参考にしてください。

積立有給休暇を導入する際の注意

ここまでの解説で、積立有給休暇の基本はお分りいただけたと思います。それでは、実際に積立有給休暇を導入する際には、どのような注意点があるのでしょうか。

出勤扱い・欠勤扱いを事前に決める

通常、法定休暇である年次有給休暇では欠勤扱いにはできませんでした。

しかし積立有給休暇は法定外休暇なので、出勤扱いにしても欠勤扱いにしてもどちらでも法律的には問題ありません。

実際は、年次有給休暇を繰り越して使用できるという趣旨から、出勤扱いにする企業がほとんどです。しかし、事前にはっきり決めておかないと、労働問題に発展するリスクもあるので、確実に抑えておきましょう。

退職時に取得できるか決める

たまっていた有給休暇を退職時にまとめて使うことはよくあることです。

それと同時にストックしていた積立有給休暇を使えるのかは、会社が自由に決めることができます。

他にも、積立有給休暇を退職金の積立てとして活用する方法もあります。

「消滅する年次有給休暇を、従業員の退職時の功労金に充当する」と規定しておけば、有給休暇の買い取りとは別の扱いで、功労金を支給できます。

有給休暇を取得できなかった従業員や、扶養内で働いていたパートにとっては、失効する有給休暇を退職金に代えることができるため、喜ばれる福利厚生になるでしょう。

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まとめ

今回は、積立有給休暇について紹介しました。

積立有給休暇は、本来取得できた有給休暇をストックすることで、仕事が落ち着いたり必要が生じたりした際に、安心して休暇を取得できる制度です。

新しい福利厚生を設けるためには、予算や準備が必要。しかし、積立有給休暇は、もともとあった年次有給休暇をスライドするだけなので、導入の難易度は高くありません。

従業員に喜ばれる福利厚生をお考えの企業の皆様は、比較的負担の少ない積立有給休暇の導入を検討してみてはいかがでしょうか。