積立有休制度が注目を集めていますが、どんな制度かご存知でしょうか。普段忙しくてなかなか有給を消化しきれない労働者が多い中、療養など長期でお休みが必要になった際やボランティアや勉強などの目的で有給を消化できるようにと、消滅する年次有給休暇を積立てる制度を導入する企業が増えています。

この記事では、積立有休の制度内容や上限日数などを、わかりやすく解説します。

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積立有給休暇とは

積立有給休暇とは、毎年権利が失効する年次有給休暇を積立てておく制度のことです。

年次有給休暇は、雇用された日から6ヵ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤している労働者に対して、週の所定労働日数に応じた日数分付与されます。その後は継続勤務年数に応じて日数が加算され、フルタイム労働者の場合は最大で年間20日まで付与されます。

しかし、年次有給休暇は付与から2年で時効消滅してしまいます。この失効して権利がなくなってしまうはずの有給休暇を、ストックしておき必要なときに使えるようにする制度が積立有給休暇です。

年次有給休暇の積み立ては法律上は規定がないため、企業独自の特別休暇となります。そのため、失効年休積立休暇、積立休暇(積休)、積立有休、積立保存休暇、ストック休暇、ライフサポート休暇など、企業によって呼び方はさまざまです。

>>有給休暇は2年で時効消滅|繰越分の計算も解説

積立有給休暇の導入状況

積立有給休暇の導入状況は、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると平成25年の時点で23.4%とされています。まだそれほど多くの企業が導入している制度ではありませんが、魅力的な福利厚生として徐々に広がってきています。

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法定の有給休暇と積立有給休暇の違い

法定休暇である年次有給休暇と、特別休暇(法定外休暇)である積立有給休暇の違いを、具体的にみていきましょう。

年次有給休暇は法律上の規制がある

法定休暇である年次有給休暇には法律上の規制があり、会社は従業員から有給休暇取得の申請があった場合、拒否することはできません。

ただし、その日に有給休暇を取得されることで「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、会社は別に日に有給休暇を取得させることが出来ます。これを「時季変更権」と呼びます。

時季変更権の行使可否については、事業の規模・内容、その労働者の担当作業・職務の繁閑、代替要員確保の難易度などを客観的に判断することになります。単に「忙しいから」などという理由のみで、時季変更権の行使はできません。

また、取得目的を限定することも認められません。取得目的を聞くこと自体は違法ではありませんが、目的によって取得を拒否することは違法となります。

>>トラブルにならない年次有給休暇の時季変更権の使い方|強制力はどのくらい?

積立有給休暇の用途は企業次第 

一方で、積立有給休暇の制度は、本来2年で失効してしまうはずの有給休暇を積み立てておく制度であるため、取得条件などのルールは会社が独自に決めることができます。

積立有給休暇の取得目的を制限することも認められます。よくある目的としては、子どもの通院の付き添いや家族の介護などが挙げられます。

こうしたケースに対応する法定休暇としては、子の看護休暇や介護休暇がありますが、対象となる子どもの年齢や取得可能日数に制限があるため、これらの休暇でカバーできない部分を補完する用途として有効になります。

ほかにも、子どもの学校行事参加、不妊治療のための通院、ボランティア参加なども認めるケースが多いようです。

>>「子の看護休暇」時間単位取得の実務ポイントを分かりやすく解説

>>「介護休暇」時間単位取得の義務化で押さえておくべきポイント

積立有給休暇の給料

積立有給休暇を取得した日の賃金をいくらにするかは、会社が自由に決めることができます。

例えば、「積立有給休暇を取得した日は、日額5000円支給」などと、一律で金額を決めることも可能です。積立有給休暇は法律による決まりのない特別休暇であるため、無給としても差し支えありません。

ただし、無給扱いの休暇にしてしまうと、「有給休暇をストックして使える」という制度趣旨が失われてしまうため、全額でないにしろ給料を支払う企業が多いようです。

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積立有給休暇のメリット

大きなメリットとして挙げられるのは、会社の福利厚生を充実させられる点です。会社の福利厚生を充実させるためには、リフレッシュ休暇などの特別休暇や出産祝い金や皆勤手当などの各種手当を付与することが考えられます。

そもそも年次有給休暇を取得した時に支給される賃金は、会社が従業員に支払うべき賃金として、毎年計上する人件費の中に含まれているはずの予算です。

したがって、お金のかかる手当を新設したり、有給扱いの特別休暇を導入したりするよりも、会社にとっては元々考慮している予算内で、福利厚生を新しく提供できることになります。

そして、福利厚生を充実させることで、ホワイト企業としてイメージアップ、求人面での訴求力アップ、従業員のワークライフバランス向上、優秀な人材の定着率アップといった、さまざまな効果が期待できます。

積立有給休暇のデメリット

デメリットとしては、年次有給休暇に加えて有休の休暇が増えることで、人件費が増加することが挙げられます。また、一斉取得や長期取得による周囲の負担増のリスクもあります。

そのほか、一人ひとりの従業員が積立有給休暇を何日持っているのか、その期限はいつなのか…などの管理が煩雑になります。

法定休暇の年次有給休暇の残数や積立有給休暇の残数を区別して管理しなければならないため、勤怠管理システムの導入は不可欠となるでしょう。

積立有給休暇の就業規則

法定外休暇(特別休暇)を導入する際は、就業規則へ取得条件などをあらかじめ記載する必要があります。積立有給休暇も法定外休暇なので、積立有給休暇を取得する際のルールを就業規則へ明記しましょう。

就業規則に記載する項目

就業規則に記載する項目は、積立有給休暇を取得した場合の給与額・積立て可能な最大日数・取得するための条件などを記載します。

注意点は、いつでも取得できるのかを考えることです。通常の年次有給休暇であれば、従業員から有給休暇取得の申請があれば、基本的には希望どおりに取得させなければならないことが義務付けられています。

しかし積立有給休暇制度は、会社独自の取得条件を決めることもできます。例えば毎年12月が繁忙期の会社の場合は、12月の取得を禁止すること、週末が忙しい会社は金曜日と土曜日の取得を禁止することも可能です。

従業員数が少ない会社など、繁忙期にまとめて積立有給を取得されると通常業務に支障がある場合は、条件にあらかじめ記載しておきましょう。

用途を限定する場合は明記

積立有給休暇を取得する用途を限定することも可能で、その場合も就業規則に明記しておかなければなりません。

例えば会社が認めるボランティア活動への参加や、資格取得のための講習会へ出席するための利用などです。

地域貢献の清掃活動や、発展途上国で植林など国際貢献をしている企業もあり、従業員の視野を広げることや企業のイメージアップにつながるケースもあります。

他にも、会社が認める自己啓発などの目的に限定して積立休暇を利用できる企業もあります。「勤続2年以上の社員を対象」などと、対象者を限定することも可能なので、目的に合わせてさまざまな活用方法があるでしょう。

このような人材育成や地域貢献などの利用に限定して、従業員の成長を促す企業もあれば、通常の有給休暇と同じように旅行や趣味など自由に休める制度として積立有給休暇を位置付ける企業もあります。

積立てることができる日数の上限

積立有給休暇は、積み立てることができる日数の上限を決めておくことができます。会社独自の福利厚生なので、少なめに設定することもできれば、無制限に積立てることもできます。

年間積立日数の上限

年間の積立日数に、上限を設ける場合の考え方を見ていきましょう。

例えば、年次有給休暇とは別に、余った有給休暇を10日間繰り越せるとします。この場合、年次有給休暇と合わせて、1年間で20日以上の休暇を取得できることになります。

年間積立日数に上限を設けておくことで、人件費の上限も予測することができ、溜め込まずに早めに使うように促すことも可能です。

無制限に積立可能とすると、何ヶ月も会社を有給休暇で休むことが可能になってしまいます。積立有給休暇をたくさんストックした社員が一斉に取得した場合、業務に支障が出てしまうリスクも。日数上限を設けない場合は、取得条件をしっかり精査することをおすすめします。

総積立日数の上限

期間を限定せずに、積み立てる総量に上限を設けることもできます。

例えば、上限30日とすると、従業員同士が協力しあって休暇を取得すれば、そこまで大きな負担は発生しにくいでしょう。療養などで使用したり退職時にまとめて取得したりする場合を想定しても、1ヶ月なら許容範囲と考える企業が多いようです。

総積立日数に加えて「連続して取得する場合は、最大何日まで利用可能」と、連続取得に制限を設けることも可能です。事例をみる限りは、大体30日〜60日を上限としている企業が多いので、参考にしてください。

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積立有給休暇を導入する際の注意

ここまでの解説で、積立有給休暇の基本はお分りいただけたと思います。それでは、実際に積立有給休暇を導入する際には、どのような注意点があるのでしょうか。

出勤扱い・欠勤扱いを事前に決める

法定休暇である年次有給休暇は当然欠勤扱いにはできませんが、積立有給休暇は、出勤扱いにしても欠勤扱いにしてもどちらでも法律的には問題ありません。

実際は、年次有給休暇を繰り越して使用できるという趣旨から、出勤扱いにする企業がほとんどです。しかし、事前にはっきり決めておかないと、労働問題に発展するリスクもあるので、確実に抑えておきましょう。

退職時に取得できるか決める

たまっていた有給休暇を退職時にまとめて使うことはよくあることです。それと同時にストックしていた積立有給休暇を使えるのかは、会社が自由に決めることができます。

他にも、積立有給休暇を退職金の積立てとして活用する方法もあります。

「消滅する年次有給休暇を、従業員の退職時の功労金に充当する」と規定しておけば、有給休暇の買い取りとは別の扱いで、功労金を支給できます。

有給休暇を取得できなかった従業員や、扶養内で働いていたパートにとっては、失効する有給休暇を退職金に代えることができるため、喜ばれる福利厚生になるでしょう。

まとめ

今回は、積立有給休暇について紹介しました。積立有給休暇は、本来取得できた有給休暇をストックすることで、仕事が落ち着いたり必要が生じたりした際に、安心して休暇を取得できる制度です。

新しい福利厚生を設けるためには、予算や準備が必要。しかし、積立有給休暇は、もともとあった年次有給休暇をスライドするだけなので、導入の難易度は高くありません。従業員に喜ばれる福利厚生をお考えの企業の皆様は、比較的負担の少ない積立有給休暇の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

また、制度新設と並行して勤怠管理システムを導入することで、従業員一人ひとりの付与日数や取得状況がリアルタイムで把握でき、年次有給休暇と併用しても休暇管理の負担を最小限に抑えることが出来ます。

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