新型コロナの感染拡大の対策として、スペースを確保するために時差出勤が注目されてきました。

時差出勤はどのように導入して、どのような点に注意が必要なのでしょうか。

この記事では時差出勤のメリットとデメリットと、どのような事に注意するべきなのかを紹介します。

時差出勤(時差勤務)とは

時差出勤とは通常、時間が会社として時間が決まっている出勤時間と退勤時間をグループに分けてずらす事です。

社員が一斉に出勤する事を避ける事で、大きな複合オフィスビルだとエレベーターでの移動もスムーズになります。

どんな目的? 

時差出勤はサービス業やコールセンターでは今までも普通によく行われていたことです。

例えば、営業時間が午前9時から午後9時の場合、時差出勤を導入しないと休憩をいれても全員が11時間働くという事になってしまいます。

このように、営業時間が長いため、全員がフルで出勤するのは無理という時に使われるのが最も多いです。

それ以外にも、少し時間をずらして、通勤ラッシュを避けるという事も使われます。

また、休憩時間や出勤時間をずらすことで、オフィス内にあるデスクも必ずしも全社員の分を用意する必要が無くなります。

感染症防止の意味もあり、同じオフィス内にいる社員の数を少しでも減らすためにも使う事が出来ます。感染症防止という事だけに限らず、オフィスが狭い中小企業の場合は、時差出勤する事で狭いオフィスを有効活用する事も出来ます。

時差出勤制度

就業規則ではどうなる? 

時差出勤を導入するには就業規則に、時差出勤可能だという旨を書けば導入出来ます。

コールセンターなどのサービス業で、そもそも時差出勤でないと成り立たないような職場であれば、時差出勤であることを就業規則に書いておきます。

常に同じ時間帯で働くのか、いつも時間が変わるのかは会社側が自由に決める事が出来ますが、事前にどちらにするかを決めたうえで契約を結びます。

サービス業以外の通常のオフィスワークであれば、まずは標準となる勤務形態を書いておきます。

例えば以下のような感じです。

当社の始業時刻、終業時刻、休憩時刻は以下のとおりとする。

始業時刻午前9時00分

終業時刻午後6時00分

休憩時刻正午から午後1時

この就業時間を基本として、時差出勤も可能である事も書きます。

例えば以下のような感じです。

<時差出勤制度について>

1.従業員が、会社所定の書面により申出を行い、会社が認めた場合、時差出勤をする

ことができる。

2.時差出勤は、1日単位で利用できるものとし、原則として3日前までに所属長に申

出なければならない。

3.時差出勤時の始業時刻、終業時刻は次のシフトから選択することができる。

シフトA始業時刻 午前7時00分 終業時刻 午後4時00分 休憩時刻午前11時から正午

シフトB始業時刻 午前9時00分 終業時刻 午後6時00分 休憩時刻正午から午後1時

シフトC始業時刻 午前11時00分 終業時刻 午後9時00分 休憩時刻午後1時から午後2時

このように時差出勤は個人で分けるのではなく、グループを分けて集団で導入する事が一般的です。

ちなみに、上記の例のように時差出勤を2時間で分けると、社員全員が揃うのが午後2時から午後4時の2時間のみとなります。

休憩時間を1時間半にするか、終業時刻を少し早めれば、その日出社している社員全員同じオフィスにいる事はなくなります。

その日出社している社員の全員が同じオフィスにいる時間が無いという事は、それだけスペースを有効活用する事が出来ます。

また冬場だと、感染症予防のための対策として有効に活用する事も出来ます。

業務上、社員が全員揃っておく時間帯が必要である場合は、時差出勤の時間の間隔を短くする必要があります。

業務を始める前にする朝礼は全員揃っている時にやった方が良い事ですが、朝礼の時間に社員全員を集めようと思えば始業時間を同時にしなければならず、時差出勤とはなりません。

したがって、時差出勤の場合は朝礼をどうするかを考えておく必要があります。

朝礼の内容を直属の上司が伝えるか、ノートか社員専用のWebサイトに記載しておくというのが一般的です。

フレックスタイム制と時差出勤(勤務)

フレックスタイム制は広い意味では、時差出勤の制度の1種という事になりますが、全く異なる制度です。フレックスタイム制は自由に出勤出来る時間を選べるので、結果的に見た目は時差出勤とはなりますが、導入の目的や出勤の仕方など全く異なります。

フレックスタイム制との違い

フレックスタイム制と時差出勤の最大の違いとして、制度上のルールが全く異なります。

フレックスタイム制は、労働者が自分が出勤する時間を自由に決めるという制度です。

ただし、24時間いつでも働いて良いというわけではなく、企業側はフレキシブルタイムという働ける時間を設定し、コアタイムという必ず出勤しなければならない時間を決める事が出来ます。

もちろん、24時間常にオフィスを開放して、いつでも働いて良いという様にする事も制度上は可能ですが、あまり会社にメリットは無いので導入しているところは無いでしょう。

さらに、フレックスタイム制の最大の特徴は、社員が自分の意思で働く時間を選べれるという点です。

パートタイムの働き方でも働ける時間を自由に決める事が出来ますが、パートタイムとも異なります。 フレックスタイム制では、事前に申告する必要がなく、当日の自分の都合で選ぶ事が出来るので、パートタイムとはこの点で大きく異なります。

つまり、フレックスタイム制だと結果的に時差出勤になり、タイムカードを見ただけだと時差出勤と同じように見えます。

しかし時差出勤の場合は、グループで出勤する時間と退勤する時間が決められています。フレックスタイム制と時差出勤の違いは、会社が決めるか、自分自身で決めるかです。

二つの制度の注意点

時差出勤は出勤時間と退勤時間が決まっているので、1日出勤したら残業をするなど特段の事情が無い限りは毎回同じ1日分の給料となります。

しかし、フレックスタイム制の場合は、毎回異なるので出勤時間と退勤時間をしっかり記録しておかなければなりません。

会社にとってはフレックスタイム制では無く、時差出勤としていくつかの働く時間帯を提示して社員に選んでもらう方が給料の計算はしやすくなります。

フレックスタイム制では基本的には社員に任せておけばいいのですが、自己管理があまり出来ない社員だと働かなければならない時間が溜まってしまう事もあります。

逆に働きすぎて、残業が発生してしまえば、会社の人件費にも影響してしまうので、勤務時間が長すぎたり短すぎたりする社員には注意をする必要も出てきます。

また、フレックスタイム制だと社員が自分のタイミングで休憩に行けるので良いのですが、時差出勤の場合は少し管理する側が大変になります。

オフィス内のデスクが同じ時間に出勤したグループごとにまとまっていれば分かりやすいのですが、そうではない場合は誰が休憩で誰が何時に上がるのかを頭にいれておかなければなりません。

時差出勤のグループごとに担当する管理者がいれば分かりやすいのですが、人材不足で少数の管理者が複数のグループを管理する場合は、少し管理が大変になります。

また、時差出勤もフレックスタイム制も、休憩時間は全社員が一斉に取るという労働基準法の原則と異なるため。労使協定を結ばなければなりません。

時差出勤(勤務)のメリット、デメリット

時差出勤のメリットとデメリットはどのような事があるのでしょうか。時差出勤によるメリットとデメリットは職種によっては全くデメリットにならなかったり、メリットにならない事もあります。

時差出勤が相性の良い職場と相性の悪い職場があるので、導入する際はよくシミュレーションをしておきましょう。

メリット

時差出勤のメリットとしてまず考えられるのはオフィスのスペースの有効活用です。うまく出勤時間や休憩時間をずらす事でオフィスを少人数で常にフル稼働させる事が出来ます。

工場などで何かを製造している時は、製造をストップさせる事なく作り続ける事が可能となります。

サービス業などの場合は、時差出勤をする事で営業時間を伸ばす事が出来ます。

機械によっては始動させたり中断するのに時間がかかる場合もあるでしょう。

勤務時間中にフル稼働する事で、限られた時間で効率的に作業をする事が出来ます。

また、他の会社と出勤時間をずらす事で、通勤ラッシュを避ける事が出来るという事もあります。

通勤ラッシュもそうなのですが、都心にあるような巨大オフィスビルでは通勤の時間はエレベーターの前に大行列が出来ます。

このような大行列を避けるためにも時差出勤は有効です。

デメリット

一方でデメリットとしては、社員が全員揃って朝礼をする事が出来なくなります。

企業によっては全員に何かを伝えないといけない時は、その日出勤している人全員が集まっているわずかな時間に朝礼のような事をするところもあります。

あるいは社員専用のWebサイトを作り、そこに共有事項を記載しておいて、朝礼の代わりにしているという事をしている企業もあります。

また、その日出勤している人全員が集まっている時間がわずかであるため、何かのプロジェクトのための会議や意見交換もやりにくくなります。

とはいえ、何かのプロジェクトのメンバーで一緒に仕事をする事の多い社員同士だと同じ時差出勤のグループに入れておく事は可能です。

しかし、急遽違う部署のある人に意見を伺う必要が出てきたりなどした場合は、スケジュールの都合がつかないというケースもあります。

時間帯が被らないのが社内だけであればまだ調整次第ではなんとかなりますが、問題は取引先との関係です。

こちらが時差出勤で、取引先が一般的な時間だと、勤務時間が被っている時間帯が少なく、面会時間の調整が少し大変になってくる可能性があります。

あとは時差出勤をする事で、オフィスを解放している時間が長くなります。

普段から残業する事が多い職場であれば、大した問題ではありませんが、定時制だときっちり誰も残業する事なくオフィスを閉めていたような会社だと光熱費が少し増える事になるでしょう。

時差出勤(勤務)の導入企業事例

それでは実際に時差出勤を導入したのはどのような企業なのでしょうか。

営業時間が長いサービス業や、24時間電話対応出来る事が売りのコールセンターなどでは昔から導入されていました。

しかし、就業時間を伸ばす必要のない普通のオフィスワークでも時差出勤が導入されるケースも増えてきています。

豊島区

豊島区は2017年10月に特別な理由が無くても出勤時間を選ぶ事が出来るという時差出勤を導入し、自治体では初のことです。

区役所はサービス業のような一面があるので、時差出勤のとの相性は良いと言えるでしょう。

従来の職員の勤務時間は8時30分から17時15分で、窓口が空いてある時間もそれに合わせたものでした。

時差出勤をする事で、将来的には窓口の受付時間を伸ばす事も可能となりますが、今のところ受付時間を伸ばすという事には繋がっていません。

区役所の場合は、住民への各種手続きの対応の他に色々とする仕事があるので、そこの仕事のために時差出勤を導入したという事になります。

この事は銀行などの金融機関でも同じ事が言えるでしょう。

損害保険ジャパン日本興亜

損害保険ジャパン日本興亜に限らず、保険会社は基本的にコールセンターを持っており、コールセンターの質が企業の価値に大きな影響を与えることからコールセンターの営業時間を長めに取ってあります。

営業時間を長めにしておくと、必然的に時差出勤の導入の必要があるので、コールセンターでは以前から時差出勤は導入されていました。

他の部署では導入されていませんでしたが、2015年から「ワークスタイルイノベーション」として働き方改革を進めてきて、時差出勤の導入もその一部です。

2015年のワークスタイルイノベーションの本格的な改革の際に、全社員が時差出勤を選べるように度を変更しました。

その時間帯は7時から15時、13時から21時の間で9つのパターンを用意しており、かなり幅が広いものとなっています。

7時から21時の間になっている理由は、22時以降だと深夜勤務手当が発生するためであり、深夜勤務手当が発生するまでは自由に勤務時間を選んでもらおうというわけです。

時差出勤制度

時差出勤(勤務)のトラブルと対処法

時差出勤のトラブルにはどのような事が考えられるのでしょうか。

多くの場合は、社員同士が会いづらくなる事による不都合から出てくるものです。

コミュニケーションが取りづらい

時差出勤にはオフィスにいる人数を最小限にする事で、スペースを有効活用出来るという一方で、社員同士のコミュニケーションが取りづらくなります。

例えば何かのプロジェクトの担当の人と話がしたいという時に、従来の定時制による働き方だと、出勤時間も休憩時間も同じなので、勤務時間であればいつでも会う事は可能でした。

しかし時差出勤だと、ある時はまだ出勤しておらず、ある時は休憩中で、またある時はすでに退勤済みという事になってしまいます。

このような事にならないように、なるべく同じプロジェクト等でチームで行動するのが多い社員同士は、なるべく同じ時間帯に働いてもらえるように調整するようにしましょう。

また、ある程度上の立場の人だと、用事があって会う必要のある人も多いので分かりやすい箇所にその日のスケジュールを掲示しておくと他の社員が困る事が少なくなるでしょう。

深夜手当

深夜手当は残業手当と違い、22時以降であれば1時間目から出さなければなりません。

時差出勤の時間の差を広げすぎて、22時を超えてしまう事があれば深夜手当が発生する事になります。

さらに、予定していた退勤時間が22時にはならなくても、残業した事で22時を超えた場合は、残業手当と深夜勤務手当が同時に発生する事になります。

残業手当と深夜手当が同時だと、その時間に働いた分の給料は1.5倍となります。

時差出勤であっても残業手当や深夜手当はもらえるので、社員の場合はしっかりと給与明細を確認しましょう。

会社からすれば、残業する事が見込まれている社員に遅い時間に出勤されてしまうと、残業手当と深夜勤務手当を同時に支払わなくてはならなくなるので、早い時間に出勤してもらうなどの調整が必要となってきます。

まとめ

時差出勤について紹介しましたが、時差出勤はサービス業においては昔から普通に行われている働き方で新しい制度というわけではありません。

通常のオフィスワークでの時差出勤のポイントは朝礼をどうするかという事と、社員同士の円滑なコミュニケーションを取るためにはどうするかという事です。

時差出勤する事により、会社の利益を損失してしまうことのないように、なるべく同じ仕事をする人は同じグループにするなどの調整が重要です。

社員が自由に選べる場合であっても、パソコン上などに何かメッセージを残す事を出来るようにするなどの工夫が必要となってきます。

うまく調整して、活用できれば時差出勤は通勤の負担軽減にもなるのでしっかり準備をした上で時差勤の導入を検討しましょう。