不就労控除とは、本来労働義務がある日や時間に、労働者の都合によりで労働ができなかった場合に、賃金からその不就労部分を控除する処理のことです。賃金に直接影響があるため、トラブルになりやすく慎重に取り扱う必要があります。

この記事では、不就労控除の基本的な考え方をお伝えしたうえで、労使トラブルに発展しないためのポイントについて解説します。

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不就労控除とは

不就労控除とは、本来労働義務のある日に欠勤や遅刻、早退といった理由により労務提供がなかった場合に、その分の賃金を控除することをいいます。似た言葉に「欠勤控除」がありますが、欠勤だけに限らず遅刻や早退に対する控除をまとめて不就労控除と呼ぶことが多いです。

不就労控除が可能な場合とは

賃金支払いの原則に、「ノーワーク・ノーペイの原則」があります。これは、使用者は労働が無かった分の賃金について支払う必要がないという考え方で、法律で明文化されていないものの、一般的に認められています。

この原則に基づき、労務の提供がなかった場合にその分の賃金を控除することは、法律上問題ありません。ただし、労働基準法には不就労控除に関する規定がないため、その対象や計算方法については就業規則等で定め、労働者に周知しておく必要があります。

また、会社が任意に定めることができるとはいえ、当然に最低賃金や「賃金全額払の原則」などの適用は受けることになるため、これらに抵触しないよう注意が必要です。

基本的に、欠勤にともなう不就労控除の対象は年俸制や月給制(完全月給制を除く)です。また、遅刻・早退の場合は時間単位の控除となるため、日給制の労働者も対象となります。

なお、時給制の労働者の場合は、そもそも働いていない日・時間については労働時間としてカウントされないだけであるため、不就労控除が発生しません。

不就労控除の計算方法

不就労控除の金額の計算方法については、大きく分けて「年平均の月所定労働日数を用いる方法」と「該当月の所定労働日数を用いる方法」の2つがあります。

年平均の月所定労働日数を用いる方法

一般的に用いられる方法で、以下の計算式で算出します。

月給額 ÷ 年平均の月所定労働日数(年間の所定労働日数 ÷ 12) × 欠勤日数

年間を通じて一日あたりの不就労控除額が一定額になるため計算しやすいというメリットがあります。一方で、実際の所定労働日数によっては「一日も出勤してないのに給与が発生する」「一日出勤したのに給与が0」といった矛盾が発生する可能性があります。

該当月の所定労働日数を用いる方法

以下の計算式で算出します。

月給額 ÷ 該当月(賃金計算期)の所定労働日数 × 欠勤日数

実際の就労・不就労の実態を正しく反映できるというメリットがあります。一方で、月ごとに控除額を計算しなおす必要があるため、人事担当者の負担が大きくなる点がデメリットです。

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不就労控除をおこなう際の注意点

不就労控除は、従業員にとっては賃金額が減ることになり直接のマイナス要素であるため、正しく運用しないと思わぬ労使トラブルを招きかねません。ここでは、不就労控除をおこなう際の注意点について解説します。

不就労控除の対象となる手当

基本給に加算されて支給される各種手当について、どこまでを不就労控除の対象とするかは、会社が就業規則等によって規定することができます。ただし、一定の基準のようなものは存在します。

控除対象に含める控除対象に含めない
通勤手当
営業手当
昼食手当
資格手当
家族・扶養手当
住宅手当
役員報酬

上記のように、出勤と直接関連のあるような手当に関しては不就労控除の対象とし、出勤とは関係なく属性や職域によって支払われる手当に関しては、不就労控除の対象外とするのが一般的です。

こうした基準を元に、控除対象となる手当は、労働者の理解を得られる範囲にとどめるのが無難です。

不就労控除と割増賃金

割増賃金を計算する際に、計算処理を簡易にするために労働者の不利益にならない範囲で、月ごとの所定労働時間を固定して計算している場合があります。

この方法は、割増賃金の計算においては労働者に有利に働きますが、そのまま不就労控除の計算にも適用してしまうと、逆に労働者に不利な計算となってしまいます。よって、所定労働時間を固定で割増賃金を計算している場合は、同じ計算処理をしないよう注意が必要です。

また、欠勤や遅刻など不就労が生じた月に時間外労働が発生した場合、控除分と時間外割増賃金や休日割増賃金を相殺することはできません。時間外労働や休日出勤の事実は、不就労で消えるわけではないため、控除できるのは基本賃金の部分のみで、割増分の賃金については支払う必要があります。

不就労控除の端数処理

不就労控除の計算をした結果、その額に端数が生じた場合は控除額を切り捨てて計算する必要があります。なぜなら、賃金支払においては「賃金全額払の原則」があるからです。

控除額を切り上げて算出してしまうと、結果として控除額を差し引いた支給額が、実際に勤務した日数・時間に応じた賃金額よりも少なくなってしまい、賃金全額払いの原則に反することとなります。

また、同様の理由で遅刻や早退による不就労控除の計算においては、その時間を1分単位で計算する必要があります。計算を簡易にする目的で、5分の遅刻を30分などに切り上げて計算をしてしまうと労働者に不利になるため、注意が必要です。

フレックスタイム制における不就労控除

フレックスタイム制は、清算期間と呼ばれる期間内に設定された総労働時間の枠内で、始業および終業時間を労働者の裁量にゆだねる制度です。よって、総労働時間を満たしている限りは不就労控除が発生しません。

また、総労働時間に満たなかった場合には不就労控除をすることは可能ですが、実際には不足分を翌月の総労働時間に繰り越して、上乗せする運用とするのが一般的です。

なお、フレックスタイム制において、必ず出勤していなくてはならないコアタイムを設定している場合、コアタイムの遅刻・早退に対する時間単位の不就労控除は発生します。

就業規則への記載・周知

就業規則には必要記載事項が決まっており、そのなかのひとつが労働時間や賃金に関する事項です。不就労控除は直接賃金額に影響するため、就業規則において規定し、それを労働者に対して周知する必要があります。

具体的な規定内容としては、「どのような場合に不就労控除をおこなうか」「不就労控除の対象となる手当」「具体的な不就労控除額の計算方法」などがあります。思わぬトラブルを防ぐためにも、就業規則にしっかりと記載し周知を徹底しましょう。

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勤怠管理システム導入で、不就労控除の処理も簡単に

不就労控除は労働者にとってはマイナスであり、法令の趣旨やその他の規定に反しないように注意して具体的な運用を定め、就業規則等で周知する必要があります。規定や実際の運用を誤ると、思わぬ労使トラブルに発展する可能性があります。

控除額の計算やフレックス制における運用、割増賃金との兼ね合いなど、手作業による管理では煩雑でミスも起きやすくなります。

勤怠管理システムを導入することで、月ごとに控除額を計算する場合でもシステム側で自動計算できるため、手間をかけずに適切に処理が可能で、トラブル防止にもつながります。

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