勤務中であり、休憩中ではないにもかかわらず特にすることがない手待ち時間(待機時間)は、労働基準法ではどのように扱われるのでしょうか。

また、手待ち時間(待機時間)を休憩時間として扱うことは可能なのでしょうか。

この記事では手待ち時間について紹介し、労働時間と休憩時間との関係や、手待ち時間の対応策をわかりやすく解説します。

手待ち時間とは

手待ち時間とは、勤務中に特にすることがないものの、使用者の指示があればただちに動けるような状況の時間のことで、待機時間という言い方をする場合もあります。

休憩時間と違い、完全に労働から解放されているわけではないので、手待ち時間の間でも仕事中と同じように給料は発生するのが基本です。

一般的には手待ち時間とは待機時間として、業務上で何らかの動きがあるまで待っている時間のことを指す場合が多いです。

手待ち時間は労働時間の一部

手待ち時間はすることが特にないとはいえ、通常の労働時間の一部として扱われます。

そのため手待ち時間ですることがない時間だからといって、時給を下げたり休憩時間に当てたりすることはできません。

しかしながら、手待ち時間となることを予測した上で、その時間帯を休憩時間として事前に指示をして休憩を与えることは可能です。

また、手待ち時間の給料を下げることはできないものの、忙しい時間にインセンティブとして特別な報酬を与えることで、ある程度の調整は可能です。

手待ち時間が発生することがあらかじめ分かっている場合は、その時間を休憩時間とすることで、会社側にとっては人件費を効率よく使うことができます。

ただし、休憩時間とした場合は、完全に労働から解放させなければならないので、突然忙しくなったり、やることが増えたりした場合でも休憩時間が終わるまでは指示を与えて勤務をさせることはできません。

会社としては手待ち時間が発生する時間帯の予測と、休憩時間の配分が人件費を考える上で重要になるでしょう。

使用者の指揮命令下かどうか

手待ち時間と休憩時間の違いとしては、給料が発生するかどうかのほかに使用者の指揮命令下かどうかも重要な違いといえます。

休憩時間の場合は完全に労働から解放されなければならず、会社側は使用者として業務上の命令を下すことができず、社員も従う必要はありません。

しかし、手待ち時間であれば使用者からの命令があれば直ちに動かなければなりません。

そのため、いつ仕事が入るか分からない状態で構えておかなければならない時間は、手待ち時間となります。

このような状況は、主に接客業や受付などのサービス業に多く該当します。

例えば、店がオープンしてから、いつ来店があってもしっかり対応できるように構えておいたものの、結局全く来店がなかったという状態であっても通常通りの給料は支払わなければなりません。

この場合の店側の対策として、来店が少ない時間を予測して、人員の配置や休憩時間の設置をする必要があります。

来店が多い時に人材を多く配置して、来店が少ない時に人材を少なめに配置するというコントロールが上手くできるかどうかが、管理者としては非常に重要となり、経営状況を大きく左右することになるでしょう。

手待ち時間の給料

手待ち時間の給料は特にすることがないからといっても、通常の労働時間と同じように扱われるので普段より時給を安くすることはできません。

そのため通常の給料と同じ額の給料を支払う必要があります。

会社としては手待ち時間であっても、忙しい時間と同じだけの給料は発生するので、手待ち時間に出来るような作業を見つけてなるべく何もすることのない時間が発生しないように注意しなければなりません。 別の対策方法として、インセンティブを支払うというやり方もあります。

来店が少ない時に、給料を減らすことはできませんが、来店が多くて多忙だった場合に、追加でインセンティブとして特別報酬を支払うということは可能です。

つまり、最低賃金ギリギリの時給を基本として、忙しさに応じて追加で特別報酬を支払うという形にしておくと、ある程度手待ち時間の給料についての対策とすることはできるでしょう。

飲食店などの接客業の場合だと、店の売上に応じて、インセンティブを支払うということも考えられ、従業員の働く意欲も刺激されます。

手待ち時間の具体例

手待ち時間の具体例としては、タクシー運転手の客待ちの時間や、サービス業や会社の受付などで来店する人を待っている時間なども挙げられます。

その他にも運送業のドライバーなどで、荷物の積み下ろしを待っている時間なども手待ち時間となる場合が多いです。

このように手待ち時間となる場合は、大きく分けて2つのパターンが考えられます。

ひとつは仕事が開始されるのが顧客の反応次第という仕事のパターンで、もうひとつが休憩時間にするほどでもない長さの時間の待機時間というパターンです。

前者の顧客の反応次第の場合は、会社としてはなるべく正確に予測を立てて行動するしかありません。

後者の場合は、手待ち時間となってしまう時間はあらかじめ分かっているので、その時間を休憩時間とするという対策をとることができます。

つまり、運送業の例でいうと荷物を送り届けて事業所に戻ってきて、次の荷物の積み込みと給油をしている間、本来なら20分で作業が済み、業務を再開するはずのところを1時間の休憩とするということです。

このようにすると、20分の待機時間を休憩時間の中に組み込むことができます。

手待ち時間

手待ち時間と休憩時間の違い

手待ち時間は、仕事中でありながら特に作業することがないという点においては休憩時間と似ています。

結果的には同じような過ごし方であったものの、待機時間と休憩時間には明確な違いがあります。

手待ち時間は給料が発生していて、休憩時間には給料が発生してないという違いがあるのはもちろんですが、それ以外にも休憩時間と手待ち時間の違いはあるので紹介します。

休憩時間とは

休憩時間というのは、使用者である管理監督者の下を外れて完全に労働から解放される時間です。

少しでも仕事をするようなことがあれば休憩時間とは言えません。

例えば、昼休みに食事をとりながら電話がかかってきたら応対をする電話番をしていると、休憩時間とはなりません。

最近では会社の電話だけではなく、営業職などでは個人の携帯電話にも顧客や取引先から電話がかかってきます。

大事な顧客から電話がかかってくるとすぐにでも取って対応したくなるものですが、休憩時間中に仕事の電話を取ると、休憩をしていないことになってしまいます。

その場合は、休憩が終わってからかけ直すか、他の人に代わりに応対してもらわなければなりません。

最近では、かなり会社員の働き方について理解をしている人も増えてきており、休憩中だったから対応できなかったことに対してある程度理解を示されることが多いです。

待機時間ではなく休憩時間とする場合には、完全に労働から解放されなければならず、電話がかかってきても応対しないようにすると休憩時間と扱うことができます。

手待ち時間と休憩時間のボーダーライン

手待ち時間と休憩時間のボーダーラインは、会社の上司の指示があればすぐ業務を開始できるかどうかです。

例えば、受付や接客業などで来客がなくてしばらく待機していて結局1時間以上何もすることがなかったという場合であっても、すぐに指示があれば動かなければならないという状況であれば休憩時間ではありません。

また、昼休みに上司と食事に出かけて、その場で仕事に対しての話をしている時は、仕事の話はしているものの、労働からは解放されているので手待ち時間ではなく休憩時間と考えられます。

食事をしながら話しているときに、電話やメールをしなければならなかったり具体的に何か指示があったりした場合は、休憩時間ではなく手待ち時間となる場合もありますが、同僚と食事をして話しているだけだと休憩時間と扱われます。 上司との食事や取引先との接待は、基本的には労働時間とは認められません。 労働時間の定義は「事業運営上緊急なものと認められ、かつ事業主の積極的特命がある」場合であり、取引先との接待は労働時間にはならず、上司と食事をして色々と気を遣っている時でも労働時間にはならず、休憩時間となります。

接待が労働時間にあたる場合として、会社が主催するパーティーや歓送迎会の準備や関係者の送迎などもする場合は労働時間となり、休憩時間とはなりません。

手待ち時間

手待ち時間の過ごし方

手待ち時間はすることがなく人手を持て余している状況なので、会社としてはなるべく手待ち時間を少なくしなければなりません。

接客業などは仕事があるかどうかはお客さんの来店次第なので、手待ち時間が出てしまうのはある程度仕方のない部分もあります。

業務上どうしても発生してしまう手待ち時間の過ごし方には、どのような過ごし方があるのでしょうか。

すぐ対応できる状態で待機

店舗や会社の受付や飲食店などの接客業は、開店していればいつ来客があってもいいように待機しておかなければなりません。

その待っている間、本来の接客業務とは違う何か作業をしてもらうように指示することは可能です。

違う仕事を指示することはできるものの、持ち場を離れてしまえば本来の役割を果たすことができなくなってしまうこともあるのであまり大きく動くことはできません。

しかし、受付や接客業で来店があるまで待機しておかなければならないという手待ち時間はアイデア次第で回避することも可能です。

例えば、オフィスビルのあるフロアにある企業の受付の業務では会社を訪れた人にオフィス前の呼び鈴を鳴らしてもらい、手の空いている社員が対応するというやり方を取っている企業もあります。

頻繁に受付の業務をする必要がなければ、常に入口に待機しておく必要はありません。

受付や接客業のほかに、何かあったときにすぐ対応できるように待機しておくことが多い職業として警備員などが考えられます。

警備員はほとんどの時間を待機時間で過ごすことになるでしょう。

見回りや監視カメラのチェックなど常に注意をしておかなければなりませんが、センサーなどである程度自動で異常があれば分かるようにしておくと、実際に行動するのは何か異常があってからとなります。

過ごし方を指示することも可能 ※業務に関係あるeラーニングなど

手待ち時間の過ごし方を指示することも可能です。

例えば受付業などで目の前にパソコンがある場合は、手待ち時間にeラーニング等を指示してやってもらうことも可能です。

eラーニングだけではなく、通常のデスクワークなどもしながら、来客があった時は対応するというやり方をとることもできます。

また、そのほかに手待ち時間が多くなる時間帯に社員の一部を集めて、研修を実施することもあり、手待ち時間の過ごし方には各企業が様々な工夫をしています。

手待ち時間

手待ち時間の注意点

手待ち時間についてどのようなことに注意すれば良いのでしょうか。

手待ち時間の注意点について紹介します。

法定労働時間を超えると残業代が発生

手待ち時間は休憩時間ではないので法定労働時間を超えると残業代が発生します。

手待ち時間はすることがないとはいえ、通常の労働時間と同じ扱いをしなければなりません。

そのため、あらかじめ手待ち時間が多くなる時間だということが分かっている場合は、その時間に休憩を与えると手待ち時間を少しでも少なくすることが可能です。

また、特にすることがなかったとはいえ、後からその時間を休憩時間に割り当てるというようなことはできません。

まとめ

手待ち時間について紹介しました。

手待ち時間と休憩時間は給料が発生するかしないか、労働から完全に解放されているか、使用者の管理下にあるかなどの違いがあります。

あらかじめ手待ち時間が多い時間帯だと分かっている場合は、その時間に休憩時間を当てるなどしてなるべく手待ち時間が少なくなるように調整しましょう。

手待ち時間となる時間が多いのは、業種によっては仕方のないこともありますが、手待ち時間が発生すると会社の人件費の効率が悪くなってしまいます。

なるべく手待ち時間を少なくして効率の良い会社の経営を目指しましょう。