働き方改革により、2021年4月から中小企業にも罰則付きで時間外労働の上限が適用されています。

一度は是正の流れに向かうかと思われた長時間労働問題ですが、テレワークの急増により新たな問題も出てきました。この記事では、長時間労働問題是正のための原因を探り、企業としてどういった対策が有効なのかについて、わかりやすく解説します。

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長時間労働とは?

そもそも、どこからを長時間労働・過重労働と呼ぶかという明確な定義はありません。ただし、法定労働時間や36協定の時間外労働の上限、過労死ラインなどに照らし合わせることで、一定の判断基準が浮かび上がってきます。

長時間労働は従業員の健康状態悪化・業務効率悪化・成果物の品質低下など、様々な悪影響をもたらすため、早急な改善が必要です。

法定労働時間とは?

労働基準法に定められた「1日8時間・週40時間」の労働時間で、原則的にこの時間を超えて労働者を働かせることは違法となります。

法定労働時間を超えて労働させるためには、「時間外労働に関する労使協定」いわゆる「36協定」を締結・届出したうえで、就業規則への記載が必要です。さらに、法定労働時間を超過した労働に対しては、割増率25%以上の時間外割増賃金の支払いが必要となります。

なお、時間外労働に関しては、特定事業場や変形労働時間制、フレックスタイム制など、さまざまな例外規定があります。

36協定の上限は何時間?

36協定を締結した場合の時間外労働の上限は「月45時間・年360時間」となります。原則的に上記の時間を厳守しなければなりません。時間外労働と休日労働は別々に扱う必要があるため、休日労働による時間は「月45時間・年360時間」のカウントには含めません。

なお、臨時的な特別な事情がある場合は、労使の合意による特別条項を付記することで、原則を超える時間外労働が可能となります。ただし、その場合も以下の上限が設けられています。

  1. 時間外労働の合計が年720時間以内(休日労働は含めず)
  2. 時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
  3. 時間外労働と休⽇労働の合計が「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」のいずれも80時間以内
  4. 時間外労働が⽉45時間を超えることができるのは、年6回まで

特別条項は大規模なクレーム対応、商品ニーズの急激な増加、システムトラブルなど、認められる要件は限定的であり、単に「業務の都合上必要に応じて」や「繁忙期である場合」などという理由では認められません。

過労死ラインはどこから?

医学的見地から、厚生労働省が発表している時間外労働の過労死ラインは、以下のとおりです。

  1. 1ヶ月で100時間を超える時間外・休日労働
  2. 2~6ヶ月平均で80時間を超える時間外・休日労働

2021年6月には、上記に加えて「ラインに近しい時間外・休日労働時間数、勤務間インターバルの短さ、心理的負荷などを評価基準に加える」という提示がなされました。

時間外労働の増加によって、ストレスによるメンタルヘルスの不調・脳疾患・心臓疾患のリスクを招く可能性が高まるため、36協定の締結有無に関わらず時間外労働と休日出勤を最小限に留めてください。

さらに、医師の面談指導・深夜労働の回数制限・連続休暇付与など、従業員の健康を保護する体制の確立が求められています。

病気や過労死につながる前に周囲が気付き、心身を休める時間を確保することが重要です。また、事態を重く受け止めた政府は過労死防止に向け、新たな方針を打ち出しました。

2021年7月に「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が発表され、2025年までに週60時間以上働く労働者を5%以下、勤務間インターバル制度の企業導入比率15%以上を目指すとの指針が発表されました。

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長時間労働の原因は?

長時間労働は、以下に挙げるような複数の要因が重なって引き起こされていることが多くなっています。

  • 業務量が多い
  • 管理者・経営層の意識が低い
  • 職場の雰囲気的に帰りづらい
  • 残業代がないと生活が成り立たない

業務量が多い

業務量が増える原因は、人手不足・デジタル技術の未活用・クライアントとの関係などが考えられます。

まず、慢性的な人手不足に陥ると、一人ひとりがこなすべき業務量が多くなります。労働力人口の減少や採用コスト増大、働き方の多様化によって、人材獲得のハードルは以前よりも上がっています。特にIT・建設業・介護業界は長年人手不足に悩まされており、改善の目処も立っていません。

また、対面形式での顧客商談や帰社後のデスクワークなど、アナログ文化への極端な傾斜が原因で、業務効率低下や残業時間の増加を招いているケースもあります。本来不必要にも関わらず、習慣化・形式化している会議への参加を余儀なくされ、無駄な時間を浪費させられているケースも多々あります。

そして、クライアントと強固な信頼関係が築かれていない場合、業務リソースを無視した短納期かつ高品質での納品を要求されます。一般的に特注品や高性能製品は通常品より手間も多く掛かるため、納期とコストが掛かるのが普通です。

ですが、発注先の都合も考えずに過剰な要求を行うクライアントも少なからずいます。売上や利益損失を恐れて仕方なく受注するパターンも考えられますが、長期的な視点で見るとマイナスです。

管理者・経営層の意識が低い

管理者のマネジメント不足によって、一人ひとりの業務量や進捗状況を正確に把握できていないと、長時間労働は改善されません。優れたスキルや豊富な実務経験を持ち、仕事をスムーズにこなせる従業員に仕事が集中するからです。

管理者は特定の従業員へ仕事が偏っている現状に気付かないため、優秀な従業員へ仕事が多く振り分けられます。従業員の仕事への責任感が強いほど「周囲に迷惑を掛けられない」、「多くの仕事をこなさなければいけない」との思いに駆られ、一人で背負い込みます。

無理して身体を壊す前に、周囲が気付きサポートする体制が必要です。一方、管理者が長時間労働の実態に気付いていながら、何も手を打たない場合があります。

コミュニケーションや情報共有の機会不足で部下との関係が悪化しており、業務体制を改善する意欲が低下しているからです。一度壊れた信頼関係を築き直すのはなかなか難しく、時間も掛かります。新たなツール導入や新規人材獲得など、労働力不足解消を図るための対策が必要です。

また、部下の長時間労働を減らすため、管理者がキャパオーバーとなる仕事を抱え込むケースもあります。管理者の健康状態悪化に加え、従業員にスキルやノウハウが身に付かず、引き継ぎもままならないという悪循環に陥ります。

職場の雰囲気的に帰りづらい

残業を肯定的に評価する社内風土が根付いている場合、定時前に仕事が片付いていても帰りづらくなります。「やる気に欠けると思われたくない」「残業する従業員が評価されやすい」「周囲が残業している中で自分だけが帰るのは申し訳ない」など、ネガティブな心理が生まれがちです。

残業代がないと生活が成り立たない

残業代を確保するために、意図的に業務効率を落としている場合や仕事のスケジュールを組んでいるケース場合もあります。終身雇用制の崩壊・変化に乏しいビジネスモデル・製品単価の下落などによって、給与は据え置きの状態が続いていることも要因となっています。

生活費・教育費・住宅ローンなどに充てる資金を確保するため、従業員が自ら残業を志望しているため、一概に管理者だけの責任とも言い切れない面もあります。

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長時間労働を改善するための5つの対策

ここまで挙げた原因を踏まえた上で、無駄な残業削減や業務効率改善へ導く5つの対策を紹介します。

  1. 勤怠管理システムを導入する
  2. 抜本的に業務を見直す
  3. 労使の意識改革のための場を設ける
  4. 評価制度を見直す
  5. 新しい制度を導入する

勤怠管理システムを導入する

最も効果的であり、優先的に実行すべき対策です。

まず、従業員の勤怠状況がリアルタイムで把握できるため、個別の注意喚起や時間超過しそうな場合の自動アラート送信などで、未然に長時間労働を検知・防止することが可能になります。

また、1分単位で正確な労働時間が記録でき、働く場所や働き方に応じたさまざまな打刻方法を利用することで、労働時間の過剰申告・過少申告・不正打刻などを防止できます。

一方、従業員側にとってもシステム上で残業の申請・承認が完結するため、申請手続きの手間を削減できます。

抜本的に業務を見直す

営業・経理・生産管理など、各部門の業務プロセスを見直すと、業務効率改善を図れます。無駄な業務や業務フロー上の改善点を可視化できるからです。例えば、営業マンが顧客先から帰社後に事務処理を行っていた場合、無駄な残業につながる確率が高くなります。

社外からアクセスできる環境を整え、商談の合間にメールチェック・資料作成・上司への報告業務を済ませられれば、わざわざ帰社して作業を行う必要はありません。

従業員ごとの業務をタスク単位で洗い出し、「無駄であるもの」「効率化できるもの」「絶対必要なもの」といったレベルで切り分けることで、優先すべき業務が明確になります。

また、形骸化している朝礼・夕礼・会議を撤廃すると、他の業務に充てられる時間を確保できます。

労使の意識改革のための場を設ける

管理者と従業員の意識改革のため、両者が一堂に会した研修や説明会などを設けることも一つの選択肢です。

管理者には「労働時間の法規制」「長時間労働が企業に及ぼす悪影響」「従業員の健康管理義務」などについて説明し、仕事の振り分け方や人事評価の再考を求めます。

一方、従業員に対しては「長時間労働はプラス評価とならない」「プライベートな時間の増加」など、生産性向上やワークライフバランス改善に向け、仕事への取り組み方を考えるよう促します。

残業=人事評価に直結しないとの意識共有が重要です。また、産業医にも同席してもらい、長時間労働に伴う身体への影響や過労死ラインについて説明を行ってもらうのが望ましいでしょう。

評価制度を見直す

残業代については、発生した時間分を支払わなくてはならないため、これを直接削減することはできません。

代わりに、「生産性」を評価する項目を人事評価で新たに設け、社員の意識改革を図ります。同じ成果を残したとしても残業時間が少ない従業員を査定時にプラス評価し、インセンティブとして特別金を支給します。

企業として生産性を評価する姿勢を明確に打ち出していくことで、従業員の業務に対する意識にも変化をもたらします。

新しい制度を導入する

新しい勤務形態や休暇制度の導入で、残業時間削減を図ります。例えば、従業員が出退勤や労働時間を自由に調整できるフレックスタイム制を導入すると、ワークライフバランス改善・業務効率向上・従業員のエンゲージメント向上を実現できます。

また、週に1日「ノー残業デー」を設け、残業しない意識を高める取り組みも重要です。さらに、リフレッシュ休暇やバースデー休暇といった特別休暇、「勤務間インターバル制度」の導入によってリフレッシュする時間を確保し、仕事へのモチベーションアップを図るのも有効でしょう。

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長時間労働に対するよくある質問

労務管理の場面でよく聞かれる内容をQ&A形式にまとめました。

Q
なぜ労働時間は8時間なのか?
Q
連勤は何日までなら可能?
Q
「過労死等ゼロ」緊急対策で企業名が公表される基準は?

長時間労働改善には勤怠管理システムが必須

5つの対策で示したシステム導入の効果に加えて、ほかの対策にも勤怠管理システムが有効に作用します。業務を見直すためにはタスクの可視化が必要で、システムを使ったタスクの抽出が効率的です。

また、さまざまな勤務形態や休暇制度の導入に対しても、勤怠管理システムを導入あれば設定一つで柔軟に対応できます。

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