労働時間は1分単位で計算するのが原則です。15分単位や30分単位で丸めて切り捨てる運用になっている場合は、違法状態と言えます。 また、労働時間とは別に、賃金の計算においても端数処理のルールが存在します。

この記事では、事業主や管理者の方向けに、労働時間及び賃金の適切な端数処理について、わかりやすく解説します。

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労働時間計算の原則は1分単位|残業時間の切り捨てはNG

労働時間の計算を簡略化するために、時間外労働・深夜労働・休日出勤などの時間を切り捨てることは、「賃金全額払の原則」に反して認められません。

就業規則などに「15分未満の時間は切り捨てる」のような規定があっても、労働基準法の規定が優先されるため、無効な定めとなります。また、規定が無効になるばかりでなく、労働基準法違反として労働基準監督の是正勧告対象となり、悪質と判断された場合は罰則も科されます。

賃金全額払の原則とは

労働基準法第24条の条文に基づく、「賃金は所定支払日において、確定している全額を支払わなければならない」という原則です。

(賃金の支払)
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

労働基準法第24条第1項|法令検索 e-Gov

なお、同条の但し書きにある「控除できる賃金」とは、「法令に基づく源泉徴収や社会保険料」及び「労使協定に基づく社宅や組合費用など」に限られ、端数の切り捨てを認めているわけではないため、注意が必要です。

1ヶ月単位の集計ではまるめの例外が認められる

行政通達(昭和63年3月14日付通達 基発第150号)により、「1ヶ月における時間外労働・休日労働・深夜労働の時間」については、事務簡略化のために以下の処理が認められています。

30分以上1時間未満の時間を1時間に切り上げ、30分未満の時間を切り捨てること

この例外処理が認められるのは、あくまでも割増賃金の対象となる「時間外労働・休日労働・深夜労働」の時間についてのみであることに注意が必要です。時給制のパート・アルバイトなどの通常の労働時間は、1ヶ月通算であっても1分単位で計算しなければなりません。

なお、変形労働時間制やフレックスタイム制を採用している場合においても、1日単位、月単位のまるめ処理については、同様に処理することになります。

切り上げ単位を15分刻みに集計できる?

上記の例外処理に関して、たとえば7時間35分の労働時間を7時間45分に切り上げるなど、切り上げ処理を15分単位とすることは、可能なのかという疑問が出てきます。

時間を切り上げ処理している限りは、少なくとも労働者の不利にならないため、可能にも思えますが、このことに関する行政の公式な見解はありません。また、労働基準監督によって見解が分かれるのが実情であるため、個別に管轄労働基準監督署に問い合わせるのが無難です。

遅刻・早退の切り上げは厳禁

10分の遅刻を30分の遅刻と扱うなど、遅刻・早退した時間を切り上げ処理することも、同じく「賃金全額払の原則」に反して認められません。

遅刻・早退や欠勤に対する賃金控除は、労働の提供が無かった部分に限られ、遅刻や無断欠勤が常習化している従業員に対しては、別途「減給処分」などの罰則規定に基づいて行う必要があります。

1分単位の計算は残業だけじゃない

通常の残業(時間外労働)以外にも、休日労働・深夜労働の時間も1分単位で計算する必要があります。

休日割増賃金は、週1日もしくは4週に4日の法定休日の労働に対して、35%増の割増賃金を加算した額を支払う必要があります。なお、休日労働には時間外労働という概念がないため、法定休日の労働時間が8時間を超えても、時間外割増賃金が重複して発生することはありません。

深夜割増賃金は、22時から翌5時の労働に対して、25%の割増賃金が発生します。休日労働と異なり、時間外労働と併存するため、法定労働時間を超えた残業が深夜に及んだ場合は、25%の時間外割増賃金と合わせて50%の割増賃金を支払う必要があります。

違法な端数処理をするとどうなる?

違法な労働時間や賃金の切り捨ては、労働基準法120条により、30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

もちろん、いきなり罰金が科せられる可能性は低く、まずは労働基準監督署から是正勧告を受けることになります。そのうえで、調査への協力を拒んだり、是正勧告に従わず違法状態を放置していた場合には、改めて処分が下ることになります。

また、労使トラブルから訴訟に発展すれば、未払い賃金の差額の支払いにとどまらず、従業員の大量離職や企業イメージの低下は避けられず、会社にとって甚大なダメージを受けることになります。

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賃金の端数処理の計算方法

端数処理のルールは、労働時間だけでなく賃金計算の際にも存在します。以下で、個別に見ていきましょう。

1時間あたりの賃金は1円単位で四捨五入

割増賃金を計算するときに用いる「1時間あたりの賃金」に、1円未満の端数が出た場合は、以下のように処理します。

50銭以上1円未満は1円に切り上げ、50銭未満は切り捨てる

1ヶ月の割増賃金は1円単位で四捨五入

1ヶ月あたりの割増賃金の総額(時間外+休日+深夜)算出を行う際に円未満の端数が出た場合も、1時間あたりの割増賃金を算出する時と同様に、以下のように処理します。

50銭以上1円未満は1円に切り上げ、50銭未満は切り捨てる

1ヶ月の賃金支払額は100円単位で四捨五入

1ヶ月の賃金支払額(基本給+割増賃金-各種控除)に100円未満の端数が出た場合は、以下のような処理が認められます。

50円以上100円未満は100円に切り上げ、50円未満は切り捨てる

ただし、この処理を行うためには就業規則への規定が必要で、就業規則の記載がない場合は1円単位で支払わなくてはなりません。

1ヶ月の賃金支払額に生じた1000円未満の端数は繰り越せる

1ヶ月の賃金支払額に1000円未満の端数が出た場合は、その端数を翌月の賃金支払期に繰り越すことが可能です。ただし、あくまでも翌月分に繰り越せるだけで、切り捨て可能なわけではありません。

また、この処理についても、採用するには就業規則への記載が必要となります。

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正確な労働時間の計算は勤怠管理システムで

タイムカードによる勤怠管理は、必ずしも正確な労働時間を反映しているとは言えないため、労働者の自己申告による労働時間との二重管理になりがちで計算が煩雑になります。また、手集計による計算では端数処理に誤りがあっても気づきにくく、給与が正しく計算されないおそれがあります。

勤怠管理システムであれば、システム側が適法な端数処理や自動集計を行ってくれるため、労務管理の負担が軽減され、賃金未払いなどの労務トラブルにも繋がります。

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